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その23 結婚式
しおりを挟む孝介、陽介の兄弟は、もう人目も憚らず外でもデートを重ねていた。
両親と4人で暮らしていた地元からは少し離れた街で暮らし、誰もふたりの関係は知らないだろう。傍目には美男美女のカップルに見えるはずだ。
孝介は弟との秘密を知る友人、知人との人間関係を絶ってきた。
陽介は高校時代までは内向的で友人と呼べる存在はあまりなかったのでそんな必要はない。
(こんな世の中になっても、偏見と差別は厄介で残酷なものだ...)
今日も兄と弟は仲良く手をつなぎながら街を颯爽と歩いていた。
弟のミニスカートから伸びる美脚、ヒップラインにチラッと視線を送る男どもは多い。孝介はそれを横目に誇らしげでもある。こんなイイ女と俺は歩いているんだぜ!と、自慢したい程だ。
夕暮れの公園のベンチ。
兄は弟の肩を抱き寄せるとそっと唇を重ねた。前を通り過ぎる人々が、この美男美女のカップルを羨ましそうに目を送る。ふたりはそれを意識しているのか見せびらかしているようだ。このふたりが、実は男同士でしかも実の兄と弟だと知ったらどんなに驚くだろうか? 信じられないに決まっている。
その夜、ふたりはバーに寄った。
カウンター席でいちゃつくふたりを誰も男同士の兄弟とは思わないだろう?
新たなカップル客が店に入ってきた。
陽介はチラッと目をやった。女性の方の姿にハッとする。
(池下智恵子さんだ...)
あのアパレルショップで再会?した、陽介の初(片思い)恋相手である。
彼女は陽介が、まさか小中学生時代に一緒だった小林陽介という大人しい男の子だとは夢にも思わないだろう。
池下智恵子と一緒にいるのは真面目そうな普通の男性だった。
陽介は “勝った!” と思った。
彼女と一緒の男は、兄孝介とは比ぶべくもなく冴えない感じ?
陽介は兄をイケメンだと思っているしスポーツマンで身体も逞しい。
陽介にとっても兄は自慢なのだ。
(小中学生時代、アイドル的存在で常に陽のあたる場所にいた彼女と、内気で目立たず存在感のなかった僕。それが8年の時を経て、同じ女?として対すると僕の方がカッコいい男を連れている。なんていう因縁だろう?)
池下智恵子がこちらに目を向けた。
彼女は陽介を見て「ああ~」と声を上げた。しかし、陽介と一緒の兄を見るとニッコリと微笑んだ。
ハートがドクン!と高鳴った。
(こ、この気持ちは何なの?)
兄が不思議そうな顔で弟を見た。
それはともかく、孝介と陽介の関係はいつまでも一生続くと思っていた。
どんなに愛し合う、それが純粋な男女であっても別れ、否、終わりはある。
その愛が激しく強ければ強いほど脆いということはよくあるのものだ。
時の流れはあまりにも残酷だ。
否、それは必然なのかもしれない。
それから4年が経った。
孝介32才、陽介も27才になった。
孝介は一才半になった娘を抱き、妻と共に結婚式会場に向かった。
小林陽介の結婚式には父栄治、母静江も出席する。
陽介の妻になる池下智恵子のお腹には既に新しい命が宿っていた。
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