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その6 初キッス

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朝起きると、制服姿の美少女が孝介の胸にもたれて眠っていた。
一瞬、(だ、誰だ!)と慌てて立ち上がりそうになったがすぐに思い出した。
前夜、、孝介はしこたま飲んで最後は呂律も回らなくなるほど醉いそのまま眠ってしまったようだ。

目の前に現れた少女はドキッとするほど美しかった。これが陽介だとは、自分の弟だとはにわかに信じ難い。
見た目は美少女であっても、こいつは男でしかも弟なのだ。孝介はどう陽介に対応、接していいのか分からなかった。何を話して良いものか?酒でも飲まないと間が持てなかった。

陽介は孝介の逞しい胸に顔を埋めてスヤスヤ眠っている。その左手は孝介のシャツのなか腹筋に添えられている。
孝介の腕は無意識に陽介の肩にまわって抱き寄せている状態だ。

(体を寄せ合って眠っていたのか?まるで恋人同士みたいだ...)

陽介のミニスカートから伸びる美しい脚が目に入った。
孝介の股間にあるモノが反応した。

(オレは弟の肩を抱きながら男性器を膨らませ硬くさせているのか?)

陽介が目を覚ましそれに気付いたらどう思うだろうか? 孝介はそっと陽介の身体から離れ洗面所に向った。


陽介も実は目が覚めていた。
兄の身体がビクッと動いたからだ。
それでも陽介は眠っているフリをしていた。兄は陽介の身体を支えたまま戸惑っているように感じた。
兄は自分の股間を気にしながら陽介の身体からそっと離れた。明らかにエレクトしていたのだと思う。
(朝勃ち? 違う、、兄は僕の肌のぬくもりを感じ身体が反応したんだ...)

前夜、お酒が飲めないはずの陽介が、兄に釣られて飲んでしまった。あんなに酔ったのは初めてかもしれない。
こんな恥ずかしい格好(女装)を兄の前で晒した。その視線がコワく恥ずかしく飲んでしまった。それでも何かを期待してドキドキしていたのだ。(僕は何を期待していたんだろう?)

前夜の孝介も陽介もお互いにどう接していいのか? その緊張感と照れくささから舞い上がっていたのだろう。


兄が洗面所から戻ってきた。

「明けましておめでとう♪」

照れくさそうに弟の顔も見ずに新年の挨拶をする。

「おめでとう♪ 今年もよろしく!」

それからふたりとも不自然に黙っていた。お互い言葉がみつからないのだ。

「あ、こんな格好で、、着替えてくるね。今朝はパンでも食べよう」

陽介はそう言うと階段を上がり自分の部屋に向かう。その後ろ姿のヒップラインに孝介は欲情しそうになる。

男に、それも弟のミニスカートに拘束されたヒップラインに欲情するなんて自分はなんて変態なんだ?
潔癖症の孝介は自己嫌悪に陥りそうになりながらも抑えられないほど陽介の虜になりかけている。

ふたりとも二日酔い状態。
その日は各々自分の部屋でずっと休んでいた。飲みすぎたのだ。



夕方になり下に降りると、キッチンで陽介が料理を作っている。

「お母さんが作り置きしてあった煮物をお皿に盛ってるだけだよ。元旦の夜はさっぱりと、お酒も控えめにね」

陽介は黒いタイトのミニスカート。
レディースの白シャツにクリーム色の毛糸のカーディガン。

(今夜も陽介は女装なのか?)

タイトミニはお尻のラインが強調されぴっちりしている。それを見た孝介の股間がまたまた反応しそうだ。

その晩の食事は前夜よりふたりとも落ち着いていた。お酒も陽介は飲まず、孝介も軽くビールだけ。それでも孝介はほろ酔いになってきた。

「お兄ちゃん、昨夜、僕になんて言ったか覚えてる?」

「???」


「ようこ~  今からお前は陽子だ!って言ったんだよ。だから、僕のこと陽子って呼んでくれないかな?」

記憶が蘇った。
酔っていたとはいえ、なんて恥ずかしいことを口走ってしまったのだろう。

黙っている兄に向けて、陽介は悪戯っぽい笑顔を浮かべた。
陽介は開き直っていた。いつまでも男同士だとか兄弟の関係だとか、そんなことに拘っていたら何も進展しない。

兄はどうしても陽介を『陽子』と呼べない。何か葛藤しているような表情なのだ。そう呼んでしまうと一線を越えてしまうと考えているのだろう。

孝介は陽介との食事中も、ずっとそのスカート姿にムラムラしているのを自覚しながらも、その気持ちを押し隠し他愛のない話をした。前夜のしどろもどろさとは比べるべくもなく会話はスムーズだ。しかし、ふたりとも内心はドキドキなのだ。


一時間ほど経った。
孝介と対面でソファに座っていた陽介が立ち上がり孝介の隣に移った。

「どうした? 陽介...」

陽介は兄の腕に自分の腕をまわすと、ニコッと笑った。そして上目遣いで兄をしばらく見つめる。
その表情があまりにも悩ましくセクシーなのでゾクッとした。

「ねえ、お兄ちゃん...」

「な、な、なんなんだ??」

「お兄ちゃん、島村久子さんとのことは残念だったね。でも、少しは立ち直ってきたみたいだね?」

「あ、ああ、、ま、まぁな...」


「僕、お兄ちゃんの彼女になったっていいよ。僕のこと好き?」


「バカ! 彼女って、お前男だろ。 それに兄弟じゃないか、何言ってるんだ」

「そんなこと分かるよ。でも僕はこうして女の子にもなれるし、兄弟だから気持ちも分かる。妊娠する心配もないんだから面倒くさくないよ」

「陽介、これはいけないことなんだ。
同性愛は世間で認知されてきたけど、兄と弟が、、近親相姦なんだぞ」

「そんな世間的な道徳なんて、、他人に迷惑かけるわけじゃないし、男同士の兄弟だから浮気だの妊娠だのっていうトラブルの心配もないよ。お兄ちゃんだって、僕に興味あるんでしょ?」

陽介はそう言うと意味ありげな悪戯っぽい笑顔を浮かべ孝介の股間に手を伸ばしてきた。そして、孝介の硬くなった男性器をズボンの上からそっと触れると嬉しそうに微笑んだ。

「ほら、お兄ちゃん、こんなに大きくなってる。知ってたんだからね...」


(こ、こいつは魔性の女だ、、、)

孝介は何か内なるブレーキが外れたような気がした。

「よ、ようこ!」

兄は弟の首に腕をまわすと引き寄せ、その唇を奪った。そして、スカートの中に手を侵入させた。

兄は弟のスカートの中に手を入れながら夢中になってその唇を吸った。
弟は兄の激しいキスにうっとりした表情で目を瞑っている。

(僕は女の子になれたんだね、初キスの相手がお兄ちゃんで嬉しい...)


その時、孝介は我に返った。
陽介の身体から離れると頭を抱えた。

「オ、オレはなんてことしたんだ!男相手に、弟にこんなことして赦されるのか? ごめん、陽介」

「ごめんって、お兄ちゃん。僕の方から誘惑したんだよ。お兄ちゃんだって嬉しいはずなのに、そんなに難しく考えることないよ...」

「うむ! でも、冷静になって自分の気持ちを整理したい。今夜はお開きにしよう。部屋に戻るからね」


孝介は漠然と “もう後戻りは出来ない”
と自己嫌悪のまま部屋に戻った。
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