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第1章

177話 山賊団討伐戦 Ⅱ

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『ギャァアアア~!』

甲高い絶叫が砦内に次々と木霊していく、僕は容赦なく山賊どもを殺していく。こいいつらの罪状など明白であり極刑確実だからだ。

見逃すとどこかでまた集まり山賊となるだろう。それならばここで死んでもおかしくはないのだ。

武装して構える山賊どもに対して『着弾する火種』を腰だめに構える。

シュウウ パシュン ゴバア~

一発撃つごとに目の前が火の海となり何も分からないまま巻き込まれる山賊ども、そして悲鳴と絶叫が上がる。ここで山賊は相手が異常極まる相手だと認識し隊列を組んで襲い始めるようになるが僕とでは技量が違いすぎた。無数に遅いかかってくるが連携が拙い。

片手で扱える剣を取り出し相手との距離の隙間を確認しつつ守られていない関節部分を切りつける。

『ぎゃぁあああ!?』

思いのほか力が入ったのか。何人もの手足が切断されて転がる。なるべく捕虜に取るつもりだったけど戦場の空気に馴染んでしまったようだ、いかんいかん。

「で、どうする?」

ここで僕は山賊らに問いかけてしまった。現時点の状況を考えると選択肢が限られてしまうのだけど。

『クッ!引け、引けぇ!後方の建物に逃げるんだ!!』

仲間を見捨てて撤退した。ん~、とりあえず赤点は回避かな。この人数ではどうしようもない敵なのだから籠城戦に移行する方が生き残る確率は高いだろうな。

ここで回りを確認したところ死体とかろうじて生きているような存在しか見当たらない。

「ユウキ様、ご無事ですか!」

ミーティアさんらが兵隊を引き連れてやってきた。

「砦の前面部分の制圧は完了いたしました。負傷者死傷者はおりません」

「ん。了解」

僕が前に出て倒しまくったのが功を奏したのだろう、意外と無事なようだ。

「相手は人数差では勝てないと判断して後方に籠城する選択をした。奥に進むよ」

全員が意気盛んに返事をする。味方を引き連れて中面まで進むと。

「あ~あ~、亀のように甲羅の中で丸まっちゃって」

進んだ先には丸太やら何やらでバリケードを築いた山賊どもが待ち構えていた。彼らにとってここは最後の砦でありここを突破されたら生き残れない、逃げようにも退路は無いも同然なので徹底抗戦の構えをするしかないのだ。

『着弾する火種』を連発してもいいが火が落ち着くまでに時間がかかる、そう考えて別の魔術武器を取り出す。

「”感電する雷光”」

それは先端に黄色い宝石が付いた長杖だった、先端に力を込めて撃ち放つ!黄色い光の塊が放物線を描きながら飛んでいき『バチバチバチバチ』という音と光を生み出す。

『あがががががががががががが~~~~~~~!?!?』

強烈な雷が落ちてきて着弾地点の山賊どもがビリビリと震えだす。しばらくすると意識を失ったのか次々と倒れていく。

「バリケードを取り除け」

『ははっ』

敵が戦闘不能になったので邪魔なバリケードを取り除くように命じる。味方は大急ぎで進路上にある物体を取り除く作業を始める。

「そろそろ出てきそうな予感がするなぁ」

「何が出てくるというのですか?」

僕が漏らした言葉に疑問を持つミーティアさん。これぐらいの規模だと出てくるものは数多い。

「いや、これだけの人数が巣食ってたんだよ。ならさ」

近くから攫ってきた女とか、いそうじゃないかな。

「あ……、そうですね。いないとは限りませんよね」

「そういうこと」

これだけの男らが居れば欲望の捌け口となる存在もまた必然というものだ。つーか、いない方がおかしいだろうし。その言葉を聞いて同じ女としてミーティアさんや仲間のリフィーアらも嫌悪感をあらわにした。

「どうするおつもりですか?」

「当然」

ちゃんと保護して帰すべき場所に帰すと明言する。しかし、ここに連れて来られた時点で女としての幸せなど今後望めるものではないのは明らかだ。事前に色々と考えてきたがどれぐらいの人数がいるのか分からないので「なるようになるか」という算段でしかなかった。

教会や修道院送りが普通なのだが、女性陣がどう思うか。

バリケードを取り除く作業を見ながらそんなことを考えるしかなった。

『撤去作業、終了しました!』

進路を塞いでいたバリケードを撤去し終えたことを伝えられる。先頭に立ち進軍を開始する。

『………』

そこには無言で、しかも殺気立った男らが多数待っていた。予想通りなのだかいくつかのグループがあった。

逃走しようとする者、それを止めようとする者、命乞いの機会を求める者、あくまで抵抗しようとする者、そんな顔ぶれだ。そんなグループで真っ先に動いたのは、

「待ってくれ!我らはアノガス家の家臣だ!ここには内偵で来ていたのだ!」

自分らは味方だと、一部が騒ぎ出す。

まぁ、世襲貴族共の家臣らが紛れ込んでいるのは予想の範疇である。それにどう対応するかもすでに決めているのだが、一応周囲の事情に詳しいミーティアさんに小声で確かめる。

「(助命する意味、ある?)」

「(伯爵夫人から可能な限り捕虜にしろと命じられていますが、ハッキリ言って彼らは最低最悪です)」

山賊どもに懐柔や内偵という名目で物資を援助していた戦犯であり山賊がここまで大きくなってしまった元凶を生んでいたのだ。

「(何も知らなかった見なかった聞かなかったことにして、始末する?)」

「(都合よく彼ら自分らの主君の家紋が入った装備を身に着けておりませんから)」

ミーティアさんは「敵だ」と断言した。

ミーティアさんは交渉を得意とする文官である。僕は彼女に命じて周囲の貴族家からこの砦の内部調査を正しく行われているかの実情を調査させてたのだ。貴族家の当主らの回答はこうである。

『なぜ我々が敵である山賊と内通していると思われるのか!そのような根拠のない話はされないで欲しい!』

即座に否定した

その言質を聞いた彼女は主君に嘘偽りなく報告をした。

『あいつらは目先の利益しか頭に無いアホやな。こっちは本気で山賊を討伐しようとしてることがまるで理解できへんらしい。もういいわ。言質も取ったんやし徹底して無関係を装うんなら好都合や。ユウキ、何も知らされてなかったことにするから火事は早めに消してきてや』

スフィア伯爵夫人から交渉の余地がないと判断され、ここいる連中は全員”山賊”という決定が出された。彼らは不当な金を取る賊であり最優先で排除する対象となる。

この砦内にいる時点で弁明の余地がないことになった。

「ここにいる連中は我らの味方だ!ちゃんとした約束事を交わしてる。だから」

進路を開けて逃亡させろ、と。

その返答を聞いて味方全員が武器を構える。

「な、何だその目と武器は?我らは貴族家の正式な家臣だ、身元が保証されているんだぞ!さっさと道を開けろ!!」

今この状況でそんな言葉など意味がない。味方からすれば敵であり格好の手柄なのだ。参加しているのが仕官して間もなく年若い連中が大多数。職業貴族の子息子女だったり低収入な農家の子であったり商人の妾の子であったり様々だがここに来た目的はただ一つだ。

『山賊討伐という手柄を立てて大金を得る』

相手が欲が動くのならばこちらも利益で動く人間で構成した方が組みやすい。

味方は相手の言い分を一切聞くことなく、

『皆、かかれ!相手は民衆の敵である山賊どもだ!正義は我らにあり!』

先を競って山賊らに襲い掛かった。
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