14 / 20
ゲーム開始時編
未成年の賭博場オーナー2
しおりを挟む
ネームドを作成してからしばらく経つが経営には一切の問題は起こらなかった。プレイヤーの僕にはゲームを出来る時間に制限がある。だけど、ゲームの中の人にはそれが無いのだ。
あれから何度か挑戦者が来たがネームド達は全て追い払っている。そして、彼らは今日もカジノを盛り上げる。
「お客様、今日もキラのショーをお楽しみください」
キラは舞台の上でマジックショーをしていた。
単純にゲームだけに特化させても良かったのだがそれでは面白くないと考えて、日替わりでゲーム以外のことが出来るようにしたのだ。キラとオーウェンはマジックショーを、ベラルザとルウェインは劇の役者をしている。交代制にすることで空きが来ないようにしたのだ。
これが見事に当たり彼らを見るためだけに客が入るようになったのだ。でも、せっかくのカジノで遊ばないと面白くない。だけどもお金が無い。そうした人たちのためにレート制限を設けることにしたのだ。
レート制限をすると掛け金が10分の1になる、それ専用のコインも用意している。これぐらいまで下げれば数回は気軽にゲームを出来るし勝てばそこそこのお金になる。
実はレート制限をしていなければ入手不可能なアイテムも用意しようと考えているのだ。カジノにはコインと引き換えに入手不可能なアイテムが無数にある。そうなると店を拡張しないといけないし品物を安定して入手するルートを押さえておかないといけないが。
そう考えているとミカさんからチャットが届いた、何でも狩りにいくらしい。ここのところカジノの経営ばかり見てたから気分転換に行くことにした。
「なぁなぁ」
「何ですか」
「2番目の町にオープンしたカジノのことは知ってるか」
そりゃあオーナーですから。
「最初老人のオーナーが登場して『勝つのは容易い』って考えが大多数だったんだけどすぐさま変わっちまった。ルールは一般的なブラックジャックだがえらい強いんだ。あまりの隙の無さに『チートジジィ』とか『狂える老骨』だとか。悪評ばかりが先に行くようになったんだけど」
そんな話はすぐさま上がってたけど最近は中身が変わっちまったんだと。
「オーナーに勝負せずに単純に楽しむためならあそこ以上の場所はありえないってすぐに考えが改められた。ショーに料理にゲームだって見てるだけで面白いし」
そうなるように変えたからね。
「徐々にそうした考えが主流になりかけた時に四勇士だぜ。ありゃあ反則だよ」
どのように。
「NPCは所詮NPC、機械的な行動しか出来ないって考えが多いけど。日替わりでショーやゲームに出る4人の噂を聞いて行ってみたけど、たとえ機械的なものでも人を喜ばせるのにそんなに差は無いんだって思うように感じたよ」
「へぇ」
「キラは無邪気な子供、オーウェンは完成された紳士、ベラルザはお姫様、ルウェインは王子様、役作りがしっかり出来ていて見ていて飽きないよな」
ふむふむ。
「現実ではあそこまでされると無機質に感じるけどゲームの中なら醜い部分を見なくていいし。夢を見れるよな」
「そうですね」
「NPCだから出来ることは限られるけどよく作りこまれてるよ」
実際僕もあそこまでうまくいくとは思ってなかった。
「今はギルドの設立と3番目の町への攻略を進めてるけど、向こうにもあるのかなぁ。カジノ」
設定ではあるのだと思う。オーナーが誰かは分からないが。
「おっと、今は狩りに集中しないとな」
そうしてミカさんとの時間が終わると思ったのだがこの後に大問題が発生する。
「「カオル、カジノに行きますよ」」
強引に引っ張っていくライナさん、なんだか押しがいつもより強い。そしてミカさんもそれに同調する。
「どうしたんですか」
「カジノの換金できる品が大幅に入れ替わっているのです。品数限定の物もあるから急いで確保しないと」
「そうだな。カジノの品の中身が大幅に入れ替わってることは他の攻略組や情報屋に嗅ぎつけられるとまずい」
ちょっと前に品物を多数入れたのをもう聞きつけたようだ。
「低レートでも高レートでも有用なアイテムが数多いのです。カオルの能力で勝つのです」
「カオルのスキルなら敵なしだろ。四勇士やオーナーは別だがな」
自分のカジノで遊んでも利益は増えないんだけど。付き合いだから仕方が無いか。でも、嫌だなぁ。
「所持金はどれぐらいありますか」
二人揃ってざっと数字を出される。それから欲しいものを聞く。購入できるのは6割ぐらいだ。この際交流を増やしたいと考えていたのでそちらの生産者らとある程度の交流を条件につけて勝つことにした。
そうしてカジノに行く。
「よし、品物はまだありますね」
二人は入場料を払うといち早く必要な分だけコインに交換してアイテムを多数購入していく。ドロップ品などが多いがモンスターの力で化工した品も同じくらいある。それだけ品不足なのだろう。
そして最低限のコインを残してから、
「「さぁ!勝って来てください!」」
二人揃ってお願いされる。
おかしな話だがここで断ると関係にヒビが入ると考えて仕方なくカジノで遊ぶことになった。
2時間ほどで予定していた品物は全て購入し終え、
「はー、メチャクチャ勝ったな。これで資金に余裕が出来たよ♪」
「フンフーン♪これだけ在庫を確保していればしばらくはやりくりに困りません」
二人はとてもご機嫌だった。あれだけ荒稼ぎしたのだから当然だろう。「勝負を継続しろ」と横から言われたが反論して切り上げた。交流関係継続のためとはいえ自分の店を自分の手で潰しては意味が無い。
二人はカジノが無制限に金を持っているシステムが運営していると思っているようだが実際にはプレイヤーの手に委ねられていることは知らないだろう。
このままでは僕の能力を使って楽をするという考えが生まれてしまう、そう考えて以前会ったGMの女親分に相談に行くことにした。
「にいさん、また来てくれはったんやね」
さしたる苦労もなく再会する。彼女はこの方面のクエストを進める上で必ず会うよう設定されているが中身は人間である。しかもゲームを運営している側の立場だ。そうした部分で相談するのには最適の人物だった。
ただ、この言葉遣いは素なのか演技なのかは分からないが。
「経営しているカジノの評判はもう耳にはいっとるよ、えろう手を入れて評判はすごくいいわ」
会ったことは無いが裏の親分達も以前とは違うまともな経営をして周囲に金を流してるので手を下す必要は無いと判断し大人しくしているそうだ。この手の人は出てくると騒動になるという問題もあるのだろうが。
「ゲーム運営側もこれだけ客を楽しませる模範的な施設は無いと判断して好意的に受け止めとるわ、ゲーム製作に関わっとる身としては喜ばしいことやわ」
「実は、そのことで相談したいことがあって」
「? なんや、八方丸く収まった立派な経営なのに不満あるんか?」
苦労を重ねて実力でもぎ取ったカジノの経営権をどうにかしたいのかと。
本音を隠さずに話すことにした。
30分後。
「なるほどなぁ。有力な攻略組と親しくつきおうてるがどうも最近にいさんに頼りがちになっている、頼られるのは嬉しいんやがおんぶに抱っこになりかねないからどうにかしたいと」
「そうなんです」
「にいさんは若い上に経験も不足してるんなぁ、嫌なら嫌と断ればええのに。なまじ真面目なプレイヤーやからこその悩みやな」
「はぁ」
「二人は女やろ、男ならな『俺に不満を言わせようものなら別れろ』って言えるぐらいの気構えで生きなあかんで。それが男の生き様であり誇りだと、うちは思うんよ」
「年上の女性にそんなことは」
言うのはとても難しい。
「とはいえ、せっかく評判の良いカジノを潰すのは惜しいし、オーナーが女の言動に左右されてはゲームの中とはいえ問題やな。よっしゃ」
うちが手を打ったると。
「どうするのですか?」
「プレイヤーの名前はタケミカヅチにライナ、これで間違いないなぁ」
はいと答える。
「あの2番目の町に出入りしているプレイヤーは全て把握してるんよ、ちっと熱を冷ましてやらんとな」
後のことは任せとけと。
それからしばらく後。
「姉御、やっぱ盗賊系のスキルはそう簡単には上がりませんぜ」
「やっぱりなぁ、使用回数が多いんで5人に無理して覚えさせたんだが」
タケミカヅチはまったく成果が上がらないスキルの愚痴を言う。カオルと別れてから盗賊スキルを覚えるメンバーを選出しスキル上げをさせているのだが結果は損失ばかり。ひたすら回数を重ねるだけではなく成功回数のあるので時間がかるのだ。町のNPCにするという方法もあるのだがバレると好感度が下がり品物を売ってもらえなくなるデメリットが大きい。
様々な方法を試しているのだが上手くいかない。
「ミカ、そちらのほうはどうですか」
ライナがやってきた。
「ライナか。こっちにきたってことはそっちも同じか」
「ええ、結果は芳しくありません」
向こうも同じ状態のようだった。
「初期クエストを受ける条件にすら手が届いてない、というか、ここまで難しいクエストが初期にあるのはおかしいと思い始めたところさ」
「こちらもです。専属的にやる連中もいますが」
二人揃って悩む。
「アイテムの名前に関係するのは今のところあのカジノだけだ。ってことはこのアイテムはそうした方面の繋がりを持つための物だとは分かる。分かるが」
「条件がまだ開始してわずかでは」
「だよな」
「するとカジノをプレイヤーが所持できると考えるのがスジなのですが」
そうなると越えられない壁が見えてくる。これまでの歴史でゲームに登場してきたカジノはデフォルメされていて万人向きであり低年齢でも受け入れやすい。しかし、このゲームに存在しているカジノは外国の大規模カジノのような絢爛豪華かつショービジネスの要素を全面的に取り入れている。
実際に行ってみたがとても仮想ゲームの中とは思えない作りでありNPCなどもそれ相応の服装をしている。冒険者の設定であるプレイヤーは「田舎者」と思うしかないほどだ。
二人は方向こそ違うが名前が挙がる攻略組である、でも賭博に関してはさしたる知識も経験も無い。
モンスターを倒したり素材集めなどは出来るがギャンブルなど素人なのだ。
それもそこらで気軽にやるようなものではなく金のかかった施設と道具をふんだんに使ったような場所で平常心など保てるはずが無い。
どうかんがえても勝負になるはずが無かった。
「オーナーや四勇士の勝負の風景は短いながら動画にありますが付け入る隙が見つけられません」
「こっちもそっち方面の人材なんてどこにもいないよ」
オンラインゲームにもカジノとかはあるが普通そんな遊びなどしない。
頭を悩ませていると、
「タケミカヅチとライナ、やな」
仲間らに相談しようとするととんでもない美女が近づいてきていた。
「「あなた、誰」」
「少しばかり余人を交えずに話をしたいんよ。受けてくれるかや」
これはそこらにいるNPCではないと判断し仲間は全て遠くまで行くよう指示を出す二人。
「あなたは、普通のNPCではありませんね」
こちらから話すのではなく向こうから話しかけてきた、外見も完全に違う。
「素性を明かせば裏世界の顔役、そう思ってかまへんよ」
「それが何の用件でしょうか」
「ゲーム運営側から忠告を与えにきたとでも言おうかの」
「「っ!」」
これはNPCではなくPC、それもゲーム運営側からの人物だと判断した。
「お二人は攻略組として活躍してなはる、それはそれで嬉しいんやけど。ちっとばかりゲーム規則を見直すべきやとおもうての」
「「ゲーム規則?」」
確かに、開始する時に目を通したが飛ばした部分もある。
「『ゲーム内において自由意志を尊重するために他者を拘束束縛することを禁ずる』って一文があるやろ。お二人は少しばかり他者を所有物と見なしている行動が見受けられるでの、そのことがゲームをする上での楽しみを減らしておるように思うての」
「「それって」」
言葉にこそ出さないが間違いないだろう。
「頭の中に真っ先に浮かぶ人物がおるやろ、その方は誰よりも早くお二人を悩ませているクエストをクリアした、その結果をもって新しい要素をゲームの中に開放したんや」
もうおわかりやろ?と。
「お二人やそれ以外のプレイヤーにはクエストを突破すればそれ相応の報酬を用意させてるんやがあくまで二番目や、時間はかかるやろうけど諦めずがんばってや」
「「・・・」」
「そんで本題に入るんやけど。かの方は裏世界での評判も良くての、色々と便宜を図っておるんや。その本人が軽く愚痴を漏らしての。たわいない話なのじゃが効率ばかり追求しておるプレイヤーには悪いんやが、ちっとばかり緩んだネジを締める必要が出てきたんよ」
「「私達もですか?」」
「現時点での判断としては接触しておるのかあやふやになるが今後の行動次第ではそれに見合う対応となるな。文句は受け付けぬぞ。なにしろプレイヤーは今後も無数に来る予定でおるのじゃからな」
一人二人アカウントを強制凍結させて消しても問題にはならないと。
「運営側のサポートや監視は人知れずじゃが確実に行われておる。証拠を握られてるのに勝てる道理もなかろうよ」
つまり、どう勝負しようが勝てないと言っているのだ。
「こちらが言いたいことはゲームの中でも現実でも人付き合いには礼儀があり節度をもってやれということだけじゃ、後はそちらで判断されると良かろう。要件はそれだけじゃ」
「「・・・また、会うことは出来ますか」」
「うちはこの方面のクエストをこなす関係上絶対に避けて通れないよう設定されておる。あとはお前さんら次第じゃ」
そうして美女は去っていった。
「あれ、間違いなくカオルのことですよね」
「って、ことはカオルは」
それ以上は口に出せない。出そうものなら即座に来るべき人が来る。
「ここ最近は便利すぎて連れ回しすぎたからなぁ」
「そうですね」
都合の良いNPCと勘違いしている部分は反論できない。
「カジノから出る時嫌そうな顔もしてたしな。そりゃあそんな立場にいたらそうなるよな」
「そうですね。もう少しカオルの言い分も聞くべきでした」
大人しく気弱な性格だから引っ張っていたのだがこんな忠告が来るということは運営側も重要なプレイヤーに位置づけているのだろう。
「どうすっか。カオルがいないとアイテムドロップが格段に難しくなるぞ」
「頻度は減らすべき所は減らし言い分も出来るだけ聞きましょう」
カオルにばかり負担をさせていたので猛反省する。あと、カジノには出来るだけ誘わないと誓う。そうして二人はまた攻略に頭を悩ませることになる。
あれから何度か挑戦者が来たがネームド達は全て追い払っている。そして、彼らは今日もカジノを盛り上げる。
「お客様、今日もキラのショーをお楽しみください」
キラは舞台の上でマジックショーをしていた。
単純にゲームだけに特化させても良かったのだがそれでは面白くないと考えて、日替わりでゲーム以外のことが出来るようにしたのだ。キラとオーウェンはマジックショーを、ベラルザとルウェインは劇の役者をしている。交代制にすることで空きが来ないようにしたのだ。
これが見事に当たり彼らを見るためだけに客が入るようになったのだ。でも、せっかくのカジノで遊ばないと面白くない。だけどもお金が無い。そうした人たちのためにレート制限を設けることにしたのだ。
レート制限をすると掛け金が10分の1になる、それ専用のコインも用意している。これぐらいまで下げれば数回は気軽にゲームを出来るし勝てばそこそこのお金になる。
実はレート制限をしていなければ入手不可能なアイテムも用意しようと考えているのだ。カジノにはコインと引き換えに入手不可能なアイテムが無数にある。そうなると店を拡張しないといけないし品物を安定して入手するルートを押さえておかないといけないが。
そう考えているとミカさんからチャットが届いた、何でも狩りにいくらしい。ここのところカジノの経営ばかり見てたから気分転換に行くことにした。
「なぁなぁ」
「何ですか」
「2番目の町にオープンしたカジノのことは知ってるか」
そりゃあオーナーですから。
「最初老人のオーナーが登場して『勝つのは容易い』って考えが大多数だったんだけどすぐさま変わっちまった。ルールは一般的なブラックジャックだがえらい強いんだ。あまりの隙の無さに『チートジジィ』とか『狂える老骨』だとか。悪評ばかりが先に行くようになったんだけど」
そんな話はすぐさま上がってたけど最近は中身が変わっちまったんだと。
「オーナーに勝負せずに単純に楽しむためならあそこ以上の場所はありえないってすぐに考えが改められた。ショーに料理にゲームだって見てるだけで面白いし」
そうなるように変えたからね。
「徐々にそうした考えが主流になりかけた時に四勇士だぜ。ありゃあ反則だよ」
どのように。
「NPCは所詮NPC、機械的な行動しか出来ないって考えが多いけど。日替わりでショーやゲームに出る4人の噂を聞いて行ってみたけど、たとえ機械的なものでも人を喜ばせるのにそんなに差は無いんだって思うように感じたよ」
「へぇ」
「キラは無邪気な子供、オーウェンは完成された紳士、ベラルザはお姫様、ルウェインは王子様、役作りがしっかり出来ていて見ていて飽きないよな」
ふむふむ。
「現実ではあそこまでされると無機質に感じるけどゲームの中なら醜い部分を見なくていいし。夢を見れるよな」
「そうですね」
「NPCだから出来ることは限られるけどよく作りこまれてるよ」
実際僕もあそこまでうまくいくとは思ってなかった。
「今はギルドの設立と3番目の町への攻略を進めてるけど、向こうにもあるのかなぁ。カジノ」
設定ではあるのだと思う。オーナーが誰かは分からないが。
「おっと、今は狩りに集中しないとな」
そうしてミカさんとの時間が終わると思ったのだがこの後に大問題が発生する。
「「カオル、カジノに行きますよ」」
強引に引っ張っていくライナさん、なんだか押しがいつもより強い。そしてミカさんもそれに同調する。
「どうしたんですか」
「カジノの換金できる品が大幅に入れ替わっているのです。品数限定の物もあるから急いで確保しないと」
「そうだな。カジノの品の中身が大幅に入れ替わってることは他の攻略組や情報屋に嗅ぎつけられるとまずい」
ちょっと前に品物を多数入れたのをもう聞きつけたようだ。
「低レートでも高レートでも有用なアイテムが数多いのです。カオルの能力で勝つのです」
「カオルのスキルなら敵なしだろ。四勇士やオーナーは別だがな」
自分のカジノで遊んでも利益は増えないんだけど。付き合いだから仕方が無いか。でも、嫌だなぁ。
「所持金はどれぐらいありますか」
二人揃ってざっと数字を出される。それから欲しいものを聞く。購入できるのは6割ぐらいだ。この際交流を増やしたいと考えていたのでそちらの生産者らとある程度の交流を条件につけて勝つことにした。
そうしてカジノに行く。
「よし、品物はまだありますね」
二人は入場料を払うといち早く必要な分だけコインに交換してアイテムを多数購入していく。ドロップ品などが多いがモンスターの力で化工した品も同じくらいある。それだけ品不足なのだろう。
そして最低限のコインを残してから、
「「さぁ!勝って来てください!」」
二人揃ってお願いされる。
おかしな話だがここで断ると関係にヒビが入ると考えて仕方なくカジノで遊ぶことになった。
2時間ほどで予定していた品物は全て購入し終え、
「はー、メチャクチャ勝ったな。これで資金に余裕が出来たよ♪」
「フンフーン♪これだけ在庫を確保していればしばらくはやりくりに困りません」
二人はとてもご機嫌だった。あれだけ荒稼ぎしたのだから当然だろう。「勝負を継続しろ」と横から言われたが反論して切り上げた。交流関係継続のためとはいえ自分の店を自分の手で潰しては意味が無い。
二人はカジノが無制限に金を持っているシステムが運営していると思っているようだが実際にはプレイヤーの手に委ねられていることは知らないだろう。
このままでは僕の能力を使って楽をするという考えが生まれてしまう、そう考えて以前会ったGMの女親分に相談に行くことにした。
「にいさん、また来てくれはったんやね」
さしたる苦労もなく再会する。彼女はこの方面のクエストを進める上で必ず会うよう設定されているが中身は人間である。しかもゲームを運営している側の立場だ。そうした部分で相談するのには最適の人物だった。
ただ、この言葉遣いは素なのか演技なのかは分からないが。
「経営しているカジノの評判はもう耳にはいっとるよ、えろう手を入れて評判はすごくいいわ」
会ったことは無いが裏の親分達も以前とは違うまともな経営をして周囲に金を流してるので手を下す必要は無いと判断し大人しくしているそうだ。この手の人は出てくると騒動になるという問題もあるのだろうが。
「ゲーム運営側もこれだけ客を楽しませる模範的な施設は無いと判断して好意的に受け止めとるわ、ゲーム製作に関わっとる身としては喜ばしいことやわ」
「実は、そのことで相談したいことがあって」
「? なんや、八方丸く収まった立派な経営なのに不満あるんか?」
苦労を重ねて実力でもぎ取ったカジノの経営権をどうにかしたいのかと。
本音を隠さずに話すことにした。
30分後。
「なるほどなぁ。有力な攻略組と親しくつきおうてるがどうも最近にいさんに頼りがちになっている、頼られるのは嬉しいんやがおんぶに抱っこになりかねないからどうにかしたいと」
「そうなんです」
「にいさんは若い上に経験も不足してるんなぁ、嫌なら嫌と断ればええのに。なまじ真面目なプレイヤーやからこその悩みやな」
「はぁ」
「二人は女やろ、男ならな『俺に不満を言わせようものなら別れろ』って言えるぐらいの気構えで生きなあかんで。それが男の生き様であり誇りだと、うちは思うんよ」
「年上の女性にそんなことは」
言うのはとても難しい。
「とはいえ、せっかく評判の良いカジノを潰すのは惜しいし、オーナーが女の言動に左右されてはゲームの中とはいえ問題やな。よっしゃ」
うちが手を打ったると。
「どうするのですか?」
「プレイヤーの名前はタケミカヅチにライナ、これで間違いないなぁ」
はいと答える。
「あの2番目の町に出入りしているプレイヤーは全て把握してるんよ、ちっと熱を冷ましてやらんとな」
後のことは任せとけと。
それからしばらく後。
「姉御、やっぱ盗賊系のスキルはそう簡単には上がりませんぜ」
「やっぱりなぁ、使用回数が多いんで5人に無理して覚えさせたんだが」
タケミカヅチはまったく成果が上がらないスキルの愚痴を言う。カオルと別れてから盗賊スキルを覚えるメンバーを選出しスキル上げをさせているのだが結果は損失ばかり。ひたすら回数を重ねるだけではなく成功回数のあるので時間がかるのだ。町のNPCにするという方法もあるのだがバレると好感度が下がり品物を売ってもらえなくなるデメリットが大きい。
様々な方法を試しているのだが上手くいかない。
「ミカ、そちらのほうはどうですか」
ライナがやってきた。
「ライナか。こっちにきたってことはそっちも同じか」
「ええ、結果は芳しくありません」
向こうも同じ状態のようだった。
「初期クエストを受ける条件にすら手が届いてない、というか、ここまで難しいクエストが初期にあるのはおかしいと思い始めたところさ」
「こちらもです。専属的にやる連中もいますが」
二人揃って悩む。
「アイテムの名前に関係するのは今のところあのカジノだけだ。ってことはこのアイテムはそうした方面の繋がりを持つための物だとは分かる。分かるが」
「条件がまだ開始してわずかでは」
「だよな」
「するとカジノをプレイヤーが所持できると考えるのがスジなのですが」
そうなると越えられない壁が見えてくる。これまでの歴史でゲームに登場してきたカジノはデフォルメされていて万人向きであり低年齢でも受け入れやすい。しかし、このゲームに存在しているカジノは外国の大規模カジノのような絢爛豪華かつショービジネスの要素を全面的に取り入れている。
実際に行ってみたがとても仮想ゲームの中とは思えない作りでありNPCなどもそれ相応の服装をしている。冒険者の設定であるプレイヤーは「田舎者」と思うしかないほどだ。
二人は方向こそ違うが名前が挙がる攻略組である、でも賭博に関してはさしたる知識も経験も無い。
モンスターを倒したり素材集めなどは出来るがギャンブルなど素人なのだ。
それもそこらで気軽にやるようなものではなく金のかかった施設と道具をふんだんに使ったような場所で平常心など保てるはずが無い。
どうかんがえても勝負になるはずが無かった。
「オーナーや四勇士の勝負の風景は短いながら動画にありますが付け入る隙が見つけられません」
「こっちもそっち方面の人材なんてどこにもいないよ」
オンラインゲームにもカジノとかはあるが普通そんな遊びなどしない。
頭を悩ませていると、
「タケミカヅチとライナ、やな」
仲間らに相談しようとするととんでもない美女が近づいてきていた。
「「あなた、誰」」
「少しばかり余人を交えずに話をしたいんよ。受けてくれるかや」
これはそこらにいるNPCではないと判断し仲間は全て遠くまで行くよう指示を出す二人。
「あなたは、普通のNPCではありませんね」
こちらから話すのではなく向こうから話しかけてきた、外見も完全に違う。
「素性を明かせば裏世界の顔役、そう思ってかまへんよ」
「それが何の用件でしょうか」
「ゲーム運営側から忠告を与えにきたとでも言おうかの」
「「っ!」」
これはNPCではなくPC、それもゲーム運営側からの人物だと判断した。
「お二人は攻略組として活躍してなはる、それはそれで嬉しいんやけど。ちっとばかりゲーム規則を見直すべきやとおもうての」
「「ゲーム規則?」」
確かに、開始する時に目を通したが飛ばした部分もある。
「『ゲーム内において自由意志を尊重するために他者を拘束束縛することを禁ずる』って一文があるやろ。お二人は少しばかり他者を所有物と見なしている行動が見受けられるでの、そのことがゲームをする上での楽しみを減らしておるように思うての」
「「それって」」
言葉にこそ出さないが間違いないだろう。
「頭の中に真っ先に浮かぶ人物がおるやろ、その方は誰よりも早くお二人を悩ませているクエストをクリアした、その結果をもって新しい要素をゲームの中に開放したんや」
もうおわかりやろ?と。
「お二人やそれ以外のプレイヤーにはクエストを突破すればそれ相応の報酬を用意させてるんやがあくまで二番目や、時間はかかるやろうけど諦めずがんばってや」
「「・・・」」
「そんで本題に入るんやけど。かの方は裏世界での評判も良くての、色々と便宜を図っておるんや。その本人が軽く愚痴を漏らしての。たわいない話なのじゃが効率ばかり追求しておるプレイヤーには悪いんやが、ちっとばかり緩んだネジを締める必要が出てきたんよ」
「「私達もですか?」」
「現時点での判断としては接触しておるのかあやふやになるが今後の行動次第ではそれに見合う対応となるな。文句は受け付けぬぞ。なにしろプレイヤーは今後も無数に来る予定でおるのじゃからな」
一人二人アカウントを強制凍結させて消しても問題にはならないと。
「運営側のサポートや監視は人知れずじゃが確実に行われておる。証拠を握られてるのに勝てる道理もなかろうよ」
つまり、どう勝負しようが勝てないと言っているのだ。
「こちらが言いたいことはゲームの中でも現実でも人付き合いには礼儀があり節度をもってやれということだけじゃ、後はそちらで判断されると良かろう。要件はそれだけじゃ」
「「・・・また、会うことは出来ますか」」
「うちはこの方面のクエストをこなす関係上絶対に避けて通れないよう設定されておる。あとはお前さんら次第じゃ」
そうして美女は去っていった。
「あれ、間違いなくカオルのことですよね」
「って、ことはカオルは」
それ以上は口に出せない。出そうものなら即座に来るべき人が来る。
「ここ最近は便利すぎて連れ回しすぎたからなぁ」
「そうですね」
都合の良いNPCと勘違いしている部分は反論できない。
「カジノから出る時嫌そうな顔もしてたしな。そりゃあそんな立場にいたらそうなるよな」
「そうですね。もう少しカオルの言い分も聞くべきでした」
大人しく気弱な性格だから引っ張っていたのだがこんな忠告が来るということは運営側も重要なプレイヤーに位置づけているのだろう。
「どうすっか。カオルがいないとアイテムドロップが格段に難しくなるぞ」
「頻度は減らすべき所は減らし言い分も出来るだけ聞きましょう」
カオルにばかり負担をさせていたので猛反省する。あと、カジノには出来るだけ誘わないと誓う。そうして二人はまた攻略に頭を悩ませることになる。
31
お気に入りに追加
1,354
あなたにおすすめの小説
ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~
雪月 夜狐
ファンタジー
異世界の冒険がしたい、だけど激しい戦闘や壮大な戦いはちょっと…。
そんな人にぴったりの、のんびりVRMMOファンタジーがここに誕生!
主人公アキは、仕事の合間に癒しを求めて「エターナル・ラプソディ」の世界にフルダイブ。
ネコマタというレアな種族でキャラクリし、素材集めや生産活動を楽しむことに。
仲間や街の住人たちとゆるやかに交流し、未知の素材や魔物と出会いながら、
自分らしい冒険の道を見つけていく。
ゆるふわな異世界で心のままに過ごすアキの姿は、日常の疲れを忘れさせてくれるはず。
癒しと発見が詰まった旅路、どうぞお楽しみに!
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/270920526】
4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~
TOYA
ファンタジー
~完結済み~
「この世界のルールはとても残酷だ。10歳の洗礼の試練は避ける事が出来ないんだ」
この世界で大人になるには、10歳で必ず発生する洗礼の試練で生き残らなければならない。
その試練はこの世界の最下層、魔物の巣窟にたった一人で放り出される残酷な内容だった。
生存率は1%未満。大勢の子供たちは成す術も無く魔物に食い殺されて行く中、
生き延び、帰還する為の魔法を覚えなければならない。
だが……魔法には帰還する為の魔法の更に先が存在した。
それに気がついた主人公、ロフルはその先の魔法を習得すべく
帰還せず魔物の巣窟に残り、奮闘する。
いずれ同じこの地獄へと落ちてくる、妹弟を救うために。
※あらすじは第一章の内容です。
―――
本作品は小説家になろう様 カクヨム様でも連載しております。
ゼロテイマーのワケありモンスター牧場スローライフ!
草乃葉オウル
ファンタジー
強大なモンスターを強制的に従わせる術を持つ最強の職業『モンスターテイマー』になるべく日々学校に通っていた少年ルイは、まるで結果が出ず田舎に帰って爺ちゃんの遺したモンスター牧場を継ぐことになる。
しかし、さびれた牧場はすでに覚えのない借金を取り立てる悪徳テイマーによって差し押さえられていた。
そんな中でルイは隠れていた牧場最後のモンスターと出会い、自分に中に眠る『テイマーとモンスターの契約を無《ゼロ》に戻す能力』を開花させる。
これはテイムできないテイマーが不当な扱いを受けるモンスターを解き放ち、頼れる仲間として共に牧場を発展させ、のんびり気ままな生活を送る物語。
異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職
鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』
倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。
……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。
しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。
意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載
成長チートと全能神
ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。
戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!!
____________________________
質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる