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審査の結果は

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やってきた族長らからの手紙の内容に激怒した仲間達はそれを無視し、審査を受ける。具体的な内容は秘密だが大体性格精神面で問題がないかなど、人格評価のみだったそうだ。

まぁ、今の仲間だったらそんなものなど軽々と突破できるだろう。冒険者ギルドが順番通りに仲間達の審査を進めていく。

で、最後が僕になる。審査室という特別な部屋に案内される。本来であれば武器を所持したまま入れないはずなのに僕だけ武器を装備したまま入れさせた。

「背中に背負う武器をこちらにおいてはいただけませんか」

「いや、これは」

「安心してください。これをどうにかする気はありません。ただ、確認したいことがあるだけです」

ここまで来て逆らう気もなく指定された場所にイヴラフグラ《富と咎を成すもの》を置く。それを複数で確認する審査役達。

「貴方はこれを一体どのような手段で手にいれましたか?」

「僕を育成し続けた機関というか組織、その組織が解体され世界から消される時に渡された、これが僕が何者か証明出来るからって」

その確認を取られる。

「貴方はこの剣を抜けるんですね。そして、それでもなお正気を保ち、呪いに打ち勝てる、と」

「はい」

抜けば正気を失い欲望の限りを尽くした後関係者は滅亡の運命に追いやられる、正と負を両立しなくては鞘に収まらない剣、どうやらこの剣の正体について何かを感じているようだ。絶対に触ろうとせずあくまで外見だけを念入りに調べている。

「審査は以上です。お疲れさまでした」

あれ?もうこれでおしまいなの。仲間たち全員が結構時間がかかってたはずだが、なぜか僕だけがたったこれだけだった。人格審査はどうなったの。

「お話をしたりとかは」

「貴方に関しては確認するべきことを終えれば無条件にしろと命じられてます。確認はもう終わりましたので」

そうして、イヴラフグラを再び背負う。どうも上の方からの指示らしい。

その後全員が銅級に昇級した。

その後、族長らの命令を無視して勝手に昇級したことで各部族の代表者たちが怒りの表情で接触していた。

「なぜだ!なぜ族長らの命令を無視して銅級になってしまったんだ。これでは一族部族氏族内の順位が変わってしまうではないか。どうしてくれるのだ」

相手は声高に威圧的だが仲間達の反応は冷ややかだった。

「なんでって、その資格を得たからに決まってるでしょ」

「それは部族氏族間で決めることだろうが」

「はて、そんな決まりはありましたっけ。ただの慣習でしょう」

「古来より続く伝統を軽んじるのか」

「いや、もうそれは完全に時代錯誤だ。故郷の同族よりも在野の方が輝いているぞ」

「貴様、我々が頭が悪いと言いたいのか」

「もう時代がそのように進んでいることが分からないんですねー」

「セシル。名門の出であるお前まで同調するのか」

「いい加減現実を見てください。自分の家族がどれだけ悲惨な目に合ったと思ってるんですか」

「あんなのは偶々だ。今後も送り続ければ」

両者の意見は真っ向から対立していた。

『籠の中の鳥が可愛いのは分かるが自力で飛べなくなるほど肥大化させるのはやめろ。そんなことをしているからお前らは悪いんだ』

仲間達は本気だった。

『家族が可愛いのは当たり前じゃないか』

「だからといって鳥の要求で過剰に餌を与えて肥大化させて飛べなくなるまで太らせるのはちょっと」

「そうですわね。太って飛べなくなった鳥など地面を転がっているだけですわ。即座に食われますわよ」

「我らが努力していることが馬鹿げているとでも言いたいのか」

「その証拠はもう出ていると思うのだが。モンスターの腹に入ってしまい栄養となっているはず」

「そうですねー。まぁ、自然淘汰というやつですねきっと。ちゃんと真面目に育てないから」

「もう自分らはそれにつき合いきれません。今後は真面目に飼育してください。そうしないと親鳥も食われますよ」

『貴様ら、好き勝手言いやがって』

じゃ、今のお前達の立場は何だというのだ。我らの後押しがあればこそだろうが。

「そこが誤解なんだよね。確かにそれを要求したのはこちらだけどあれは間違いだった」

「そうですわね。そんな馬鹿な要求をしたせいで今この事態になっているのですから」

「我は灰色級から始める予定だったがそれを強引に変更したのはそちらだろうが」

「私もそれは悪手だと思ってますよ。恵まれた出発では危険な橋を渡らされ続けます」

「僕も同じ気持ちです。過去の武勲詩の最初から見直した方がいいと思いますよ」

『全員灰色級から始めろと。それでは後押しが出来ないではないか』

『後押しという見返りに都合の良い操り人形にする気ならそうした方が問題が起こりません』

もう両者には埋められない溝が出来ていた。

『じゃ、何でお前達は生き残ってるんだ?』

『リーダーが常識を軽く飛び越えるほどに優秀だったからに決まっている』

仲間全員が僕に称賛の声を上げる。

「リーダーがいなかったらとっくに死んでたと思うよ」

「そうですわね。その点だけは他より恵まれましたわ」

「おかげで数多くの戦いに恵まれましたからな」

「師としてはこれ以上は望めないと思います」

「こんな指導者が国々に一人でもいれば」

『我ら同族の経験よりもそいつの方が遥か上にいるという事、だと。確認したが出自も年齢も不確かな存在ではないか。そのような雑魚に我らが負けているというのか』

『それでしたら、そちらの冒険者プレート、見せていただきますか』

ミーアらはここで代表者たちの冒険者プレートを確認することにした。

『な、何を言っているのだ?』

そんなものなどなぜ確認する必要がある。彼らは慌てる。

彼ら全員冒険者プレートの不正改造に手を出してないか確認するためだ。ちゃんと実績を積み上げていればそのままだが不正改造処置をしていると等級が最下位まで下がるのだ。

仲間全員にそれを教えているのでその実績が本物であるのか、確認を取る。

警告を無視し続けると永遠に灰色級になるだけではなく不正改造の証拠が公開されるため言い逃れが出来ない。銅級以上になると下位の等級への管理権限が一部了承されるのでそれを使い確認が取れる。

『そんなものなど知っているはずだ。見せる必要はない』

『おかしいですね。銅級以上になると冒険者ギルドから定期的な状況確認の義務が発生するはずですが』

銅級以上だと危険依頼への優先的な参加義務が発生するので厳重な審査が取られる。彼らは銅級、本来であればそろそろ確認の義務の時間が来るはずだ。そこでもし、問題が起こってしまったら、自分達の立場が崩れてしまう。もし不正改造に手を出してそれが嘘だと発覚したらただでは済まなくなる。

この様子では不正改造手を出して灰色級まで落ちてしまったのだと、仲間達は予測していた。何とか元に戻そうとしてるが僕のプロテクト処理は甘くない。念入りにしているので迂闊に手は出せないはずだ。

仲間らは確認を取るが彼らはひたすら拒む。

『埒があきませんね。こちらはただ冒険者プレートを見せろと言ってるだけですよ』

『そ、そんな物などがなくとも不都合はないではないか』

『一般人として生きる分にはいらない物ですがそれが無ければ冒険者は従わないと理解してるはずです』

家族一族部族氏族の決めた順位の中で生きるならそんなものは不要だ、だけども、それが無ければ冒険者ギルドに依頼を通すしか派遣してもらえなくなる。自分らに都合の良い立場や駒を確保するには高い等級が必要不可欠、それが無くなれば何の権限もない。

『こちらのいう事を無視し自分らの都合を押し付ける態度は感心しません』

『……冒険者ギルドがなんだというのだ。そんなものがなくとも我らは繁栄する』

『そういう事でしたら私達は在野のままで構いません。部族氏族の都合のいい駒など拒否します』

交渉は決裂し互いの溝は広く深いことだけを確認することになる。これを機に在野と所属の認識の差がますます広がっていくことになった。

時代はそういう方向に進んでいた。

ちょうど良い頃合いでリューハイン君が必要な物資の買い出しを終えて帰還していた。

「ふむ、大分予想通りだね。それ以外だと換金用でかさばらず安定して取引できるものを買ったんだね」

「はい」

「最初の仕事を十二分に満たしてくれた。活動資金を増加し褒美も与えよう」

結果から見るとても優秀だった。この分なら今後も問題ないと判断し《収納》持ち同士が使える受け渡し方法でこちらに物資を引き取る。さらに《収納》持ちだけが使える《拡張》の巻物を渡す。

早速彼はそれを使う。

「わわっ、容量が倍ぐらいに増えたんですけど」

「ま、今回の仕事ぶりは上出来だったからね。そのご褒美として」

「ありがとうございます。今後とも励みます」

さて、ちょっとばかり愚痴というかそんな悩みに付き合って欲しいと頼む。

「君は冒険者は在野と所属、どちらを選んだ方がいいと思う」

「うーん、僕は事務方ですから詳しくは分かりませんが、判断が難しいところで。現在の制度ではもう歪みが出てますけどどこをどう変えてよいものやら」

「僕としては脅威に立ち向かうのに在野も所属もさして関係ないと考えてるけど結局最後の命綱を自分らで持つか国が持つかだけなんだよね。その保証をどう取るかでズレが出ているんだと考えている」

最後の命綱を自分達で持てば細く国が持てば太くなる、だけども他人に命綱を渡したらいつの間にか切られてしまう危険性がある。そのズレが大きすぎて溝が埋められないと考えていた。

現に国々に所属していた連中の大半が欲深に不正改造に手を出してしまい等級が最下位になると容赦なく命綱を切られる結果になってしまった。彼らの方が悪いとはいえそれを黙認していた国側にも問題がある。

「僕は冒険者ギルドの等級はその人物への正当な評価という面ではいいと考えてるけど無理に国々に仕える必要はないと思ってるんだ。状況場所により雇用条件は大きく変わるからね。危機に対して戦うという点で一致すれば等級がどうだろうとかまわないと考えてる」

「たとえ銀級や金級であろうとも在野でいようと所属していようとどちらでも構わないと」

リューハイン君は大変驚いていた。そもそも高等級の連中は軒並み所属国を選べと言う制度がここまで事態の悪化を引き起こしているためだ。それならいっそ条件が折り合わないなら最上位の在野がいてもいいし最下位の所属がいてもいいんではないだろうか。

それなら冒険者ギルドは優秀な人材を放出する必要もないし国も必要な人材の選別を行える、僕はそう考えていた。

「それはもう、既存制度の革命ですよ。それが実現した時諸国はどう見るか想像できません」

「まぁ、これはあくまで僕個人の考え方だからね。仲間らについてこいとは言う気はないから」

仲間達が自力で自由に飛べるようになったら僕はそれを見守るだけだ。最後に決断するのは仲間達に任せる。僕は普通に平和に生きたいから。
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