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いきなりヘッドハンター 素材確保

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リューハイン君は早速与えられた品物をどれぐらいの値段で換金し必要物資がどれほど購入できるのか見積もりを出す。余りが出た場合は転売用や換金用の品々の購入も視野に入れて書類を作成し始める。

「先に言っておくけど君の生活費は当分の間その中から捻出すること。生活物資の大半はここにあるから心配しないでいいよ」

「わかっています。これだけの資本金があれば繋がりを使って十分利益が出せますよ。購入した物資の運搬も《収納》のおかげで何も問題ありませんから」

「それを理解してるのならよろしいけど、くれぐれも資金の出所と内部情報については冒険者ギルドはともかく偉い方々には全部公開しないようね」

「わかりました。下手に公開すると欲深な連中が押しかけてくるからですね。その点は上手く誤魔化します」

彼はこの時点で僕が闇商人らと密接な繋がりがあることに気が付いていた。このコテージを始めとした数多くの品々は正規のルートでは入手不可能だからだ。

それがどうした、脅威の排除をしてくれるならどうだっていいだろ。冒険者ギルドはそれを咎める気など一切ないが権力者は始めとして中にはそういう連中を毛嫌いしているのも含まれている。それに上手く対応しなくてはならない。その点でこの子は理解が早かった。

リューハイン君は相当なやり手のようで不都合の出ない書類作成や交易ルートの誤魔化し方なども心得ているようだ、冒険者ギルドが選抜した人材なだけは確定だ。そちらからすればこちらを不用意に行動を制限しては対応が追い付かずモンスターに対して後手に回ることを理解していた。国々の対応はまだそこまで追いついてないようだ。

物資はあればあるだけ助かるのであとは彼の才覚と腕前次第という事になる。彼はやる気に満ちていた。

「その才覚は周りに認めさせてましたけどこのご時世、中々大仕事にありつく機会がありませんでした。せっかく与えられたチャンスです。必ず満足いくように努力します」

彼はすぐさま経済に支障が出ないかつ効率的に物資の大量購入に動き始める。

「あと、あんまり仲間達の内部事情については詮索しないでね。各自色々背後の連中のことで悩んでるから」

「一族部族氏族の血縁や繋がりしがらみのことですね。その点は冒険者ギルドも国々のお偉方も手を焼いてましたから。もっとも、その後実績が嘘偽りであることが発覚し悲惨な目に合いましたけどね」

僕が冒険者プレートの不正改造を不可能にしたためことごとく灰色級まで落ちてしまい利用価値がないと判断され軒並み追い出されてしまったそうだ。さすがにそれは言えない。

「実に痛快でしたよ。散々偉ぶるしかなかった連中が落ちぶれていく姿は、もう先祖らの功績に胡坐をかけなくなり自力でどうにかせざるを得ない状況にまで追い払われました。実家で飼い殺しはまだ良い方で悪い方だと血統図から消された連中まで現れましたから」

生き残れたのは実績通りにしていた極々一部だけらしい。

もちろんその後生き残ろうとしたが灰色級で実家などの後ろ盾も無し、罪状も有してるとなればまともに仕事など出来るはずもない。案の定淘汰駆逐されていった。

ごく一部は表面的だけ冒険者ギルドに従順なるから温情をかけて欲しいと頼み込むが「お前らは死ぬまで灰色級だ」宣言され絶望の表情を浮かべたそうだ。

せっかく相手の方からドブに落ちたのでこれを棒で叩き潰さない理由はない。一切容赦なく再試験などで落とされていった。

まー、あれだ。自分らの罪状の清算という事なのだろうね。無自覚に使い続けた特権がいかに悪いことだったか今になって自分に帰ってきただけだ。

とはいえ、まだごく一部では以前と同じように不正改造が出来ないか密かに研究している連中が生き残っていた。ばーか、僕のプロテクト処理を甘く見るなよ。お前ら全員一刻も早く一掃してやるからな。

さて、《アーゲンハウル》の中の様子を確認したがさすが防衛の要というだけのことはあり出入りして人々は数知れずだ。ここなら色々なことが考えられる。各自にユクール通貨を出して買い物などを楽しみながらここを長めに滞在することを決めた

さて、もう自由時間はお終いだ

依頼を受けに冒険者ギルドの建物に入る。

『おい、彼女って確か闘技場で負け知らずの王者だろ。彼女に目を付けていた連中は数知れずいたが軒並み返り討ちに会ったんだぞ。それが完全に敗北し冒険者パーティに入ったって噂は本当だったのかよ。凄い奴らが来たもんだ』

シュリーナはここでは知らない方がおかしいほどに有名人のようだ。自分自身を勝利品として賭けながら負け知らずだったので畏敬の念が強い。強いものが正義を唱える資格があるこの場所の代表者なのだろう。その彼女を手中に収めた僕のことも多くの観客が目にしていた。

「外見は幼い子女の子にしか見えないけど」

「あれは皮を被っているだけだ。中身は相当にヤバい奴だ」

「偽装ってやつか。本性はどうなんだろうな」

「闘技場の王者が敗北したんだからまず間違いなく本物だ」

「どんな輝きを見せてくれるか大変興味深い」

「とはいえ、まだここでは新参者だ。真価を発揮するのはこれからだ」

「ここの連中は容赦ないぞ。生き残れるかお手並み拝見だ」

「上の連中は下からの突き上げをどう見るんだろうな」

「そこ止まりか、対等な存在か、自分らの上を行くのか」

「依頼はいくらでも転がってる。わざわざ上が連れてきたそうだからな」

明らかに注目を集めていた。並ぶのは難易度の高い依頼を受注できる資格者のカウンター、とはいえ。まだ先があるので最上位は受けられない。ここでその実力を証明する必要がある。

「いらっしゃませ。本日はどのようなご用件でしょうか」

「依頼の発行をお願いします」

「実績確認ではヘッドハンターの討伐実績有りだそうですね」

「はい」

「いきなり高い壁ですがヘッドハンターの存在を確認済みの依頼が取扱いに苦労してるんです。そちらに異存が無ければ受けて欲しいのですが」

いきなりヘッドハンターの討伐依頼とは、さすが混沌の脅威が濃い場所なだけはある。それの上位個体や特殊個体など過去には無数に出現した記録が残っているためここまで防備が厚いのか。さすが前線なだけはある。

このぐらいの依頼が頻繁に入ってくるほどだ。ここで生き延びれるのは本物だけだという事だろう。シュリーナのようなわざわざいくつもの地域を通ってまでやって来る連中が現れるほどだ。力の証明が出来ない連中に慈悲はかけないという事だろう。

もちろん、それは僕らにとって望んでいた環境だ。すぐさま依頼を受ける。

しょっぱなからヘッドハンターの依頼を斡旋されるほどには評価されてると見ていいね。早速コテージで仲間と作戦会議を行う。

「通常であれば新参者なんかにこんな依頼を出すなんておかしいけど、逆に言えばそれだけの評価を受けているともいえるね。今後しばらくはここを本拠地として依頼を受けて今後のために力を蓄えよう」

「そうだねぇ。普通ヘッドハンターを相手に出来る冒険者なんて一握りだしね」

「冒険者ギルド側もそれ相応の待遇を用意することは明白ですわね。腕が鳴りますわ」

「あの闘技場の中身を見る限り力自慢の無頼漢が大勢集まっていることはそれが必要なのでしょうな」

「ふぅ、いきなりそれを相手にするの緊張しますがもうそれぐらいの立場になってるんですね」

「混沌の脅威はますます苛烈になってくるでしょう」

「にししっ、こちらにとっては荒稼ぎしても許される場所は都合がいいよね」

「新たに覚えた光剣技や聖剣技の実戦確認としては申し分ない相手ですね」

「新参者ですから連携を乱さないように配慮しますわ」

さて、リューハイン君は物資の調達に奔走してるので仲間ら全員で現場に向かう、そこは洞窟の中だった。

「ウジャウジャいるねぇ」

『まったくです。さすがに苦戦は免れないかと』

数は両手の指を折るほどに越えていた。こうなると手加減などしていられない。砂鉄の入った袋を取り出し雷魔術を加えて当たり一面に振りまくと奴らはビリビリ感電し行動が鈍重となる。

「半分は僕が引き付けて倒す。残りの対処をお願い」

『了解』

とはいえ、僕以外は最低でも2体を倒さなくてはならない、然るべき支援が必要だろう。

「《全能力向上》《戦意高揚》《防御貫通付与》《自己再生》《怪力》各自戦闘開始」

『はいっ』

各自にありっあけ強化魔術を付与する。だがさすがヘッドハンターだ。容易には倒されてはしない

「くそっ、なかなか刃が通らない」「弓矢もものともせず動きますわね」

ミーアとエメリアはチームを組んで対応するが頑強な防御に手を焼いていた。

「我がハルバードでも貫けぬとはいささか面倒ですな」「まったくもって面倒ですね《火炎の矢》」

バーゼルとシェリルは頑強な防御力で攻撃を平然と耐え続ける相手に四苦八苦している。

「《悪霊の怨念》これでどうにか」「《腐酸の呪い》いやぁー、手ごわいねぇ」

ラグリンネとエトナは召喚生物を出しても無駄だと判断しデバフを相手にかけ続ける。

「これが混沌の先触れというやつですか」

セシルもまた相手の防御力の高さに苦戦していた。

混沌が生み出した高純度の金属は物理でも魔術でも容易な突破を許さなかった。

だが、シュリーナだけは違った。

「はぁっ!我が剣の前ではお前たちとて問題はない。存分に我が糧となれ」

彼女のために作成した武器はヘッドハンターを容易に切り裂き胴体を輪切りにしてしまう。よし、彼女がいれば他の対処は大丈夫であろう。

その後仲間達はシュリーナのサポートに回ることにした。

僕はその間にイヴラフグラ《富と咎を成すもの》で次々とヘッドハンターらを倒していく。数時間後ヘッドハンターは殲滅された。

仲間らはもちろんシュリーナの活躍を褒めたたえる。彼女がいなければ苦戦間違いなしだったからだ。そんな仲間らの喜びの声はまんざらでもないらしく正直に喜んでいた。

もっとも、シュリーナは自分以上にヘッドハンターを倒している僕にチラチラ視線を向けるが。うーん、そろそろ仲間の装備を上等なものに変える頃合いが来ている段階なのを実感する戦いだった。

ヘッドハンターの遺骸は僕が今後のために有効活用させてもらうからね。そうして、最初依頼は上出来で終わることになった。
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