76 / 82
闘技場の王者との戦い
しおりを挟む
この地でやるべきことを終えて新天地へ旅立つことになる。仲間らは準備を終えており後は案内役の特使様達の護衛らと合流するために外で待つ。
「意外と少人数なのですね」
「ハハハっ。特使とはいっても所詮国の使いっぱしりだからね。無駄な予算が出ないんだよ」
人数は予想より少ないので僕のコテージに入れよう。野戦病院的なベッドだが安全だし環境もいいはずだ。
その後出発する。
途中放浪中のモンスターを倒したりしながら目的地まで進む。暗闇が訪れる前にコテージを建てる。
「簡素な場所ですが。ゆっくりしてください」
「いやぁー、実に快適な旅を提供してもらい感謝するよ。安全だし料理も美味いし環境もいいし」
皆、そうだろう。連れの護衛達も同意する。
料理は共同のモノだが明らかに美味しいし湯浴びだって出来る環境だ。
「君らはいつもこの環境が使えるんだよね。羨ましくて仕方がないよ」
「まぁ、恵まれた環境を用意するのがリーダーの責任なので」
「これぐらい用意するのが当然と思っている時点で普通じゃないと思うのだがね」
そうなのか。仲間達も普通じゃないですよ、常々口にするけど。僕にとっては別にさして変わらないと思うんだけど。
その後も森の自然や風景を楽しみつつ目的地《アーゲンハウル》の外壁が見える近さまで近づく。
『大きいですねぇ。明らかに防備が充実しているのが分かります。中も相当なのでしょう』
「ここは色々なものが充実してるが何といっても『闘技場』があることが理由だよ。力が正義だと主張する野蛮人の集まる土地だ。そうした催しがあるのが最大の娯楽になっているのさ」
「それぐらいモンスターの脅威が激しいわけですね」
「そういうことさ。ここを本拠地とするためにはそれ相応の実力がないと生き残れない。だから君達を連れてきたんだよ」
銅級以上の冒険者が数組いるし色光玉級も質量共に揃っているそうだ。なるほど、ここで生き延びれるかどうかが最初の試練なわけだ。
「さて、こちらはまず有力者に挨拶に向かうが君達はどうするかね」
「闘技場とやらに行ってみようと思います。思わぬ掘り出し物があるかもしれないので」
「強者は強者に惹かれる、という言葉通りだね」
挨拶など後回しにするあたりはさすが実戦経験豊富だと判断したようだ。特使様と別れて闘技場の場所を聞いて仲間とともに向かう。
外からでも喧騒が聞こえてくる。中に入ると観客の熱気に圧倒される。
「うへぇ。どいつもこいつも命知らずばかりですよ」
「本当ですわね。暴力を使わなければどうしようもありませんわ」
「我が同族らも多数参加しておりますな。力を信奉する者らにとっては楽園ですぞ」
「力こそが正義という主張がここでは当然なんですね」
「野蛮極まりますが混沌に対してはそれしか通りませんから」
「いやぁー、実に見ごたえがあるよね。にししっ、実に単純明快だよ」
「参加者は騎士から魔術師までいます。方法手段など問わないという事なのでしょう」
仲間たちはこんな野蛮な催しなど初めて見た。そこでは己の力のみで勝つことが条件なだけ、その手段や方法など問われないことに。相手を倒せば喝采、負ければ罵声が飛んでくる。中にはどちらが勝つのか予想屋や食事を売る売り子などがせわしなく動き回っていた。
しばらく試合を観察すると。
「おっ、いつものヤツが現れるぜ」
いつもの?近くの観客に聞くとここで負け知らずの王者が出てくるそうだ。遥か東からやってきたそうで独特の剣技を使い格好も異文化丸出しだそうだ。もう相手がいないそうで半ば見世物になっているそうだ。
その人物の登場を待つ。
現れたのは女性だった。かなり若いな。あれ、東国に伝わる『キモノ』というやつだろう。袴を履き武器はカタナという細身で切れ味鋭い武器だが容易に扱える曲刀とは大きく違う。雰囲気からして異質だった。
「この私を倒そうとする者はおらぬか!」
どうやら、もう自分の相手がいないことが不満なようだ。まるで周囲を臆病者扱いと見ている。まぁ、ここで負け知らずならその自信も納得だ。中にいる審判はどうにもならないようだ。参加者は誰でもいいらしい。
なら、僕が参加しても問題ないよね。観衆を飛び越えて中に入る。
「! こんな、幼い子供、だと…」
相手は僕の外見を見て一瞬だが驚いていた。まさか観客席を飛び越えて参加してくるなんて。
審判が聞いてくる
「さ、参加料を、払えるのか」
僕は審判の前に金や銀の塊を数個吐き出す。それで審判は所定の位置まで下がった。試合が了承される。
「君は勇気と無謀を勘違いしてはおらぬのか?私が求めるのは強者のみだ」
そうか、外見だけならそうとしか見えないだろう。なら、久しぶりに獰猛な本性を見せることにしようか。僕は深淵の殺意を彼女に向けて解き放つ。
「っ!そういうことなら、不足はない。私の秘術の剣技、存分に見せようぞ!」
彼女はすぐ様こちらに反応する。加減は出来ない、そんなことをしたら自分が殺されてしまうと。敵の首を討ち取る覚悟で挑まねば戦いが終わらないことを瞬時に理解したようだ。
僕を剣を抜き片身で構える。それを開始の合図と見なし相手は瞬時に距離を詰め抜刀する。俊足の踏み込みと居合抜きだ。僕はそれを軽く弾く、キィンと金属音が鳴り響く。
「やはり奇襲は効かないか」
「そっちも」
彼女は不意打ちは失敗したと判断しカタナを構える。盾の使用を前提としたモノではなく東国に伝わる独特の構え方だ。
真正面からの打ち込みを逸らし横薙ぎを受け止め切り返しを受け流し突きを身を捻る。息も付かせぬ連続攻撃は見事としか言いようがなく華麗な舞を見ているかのようだ。だが、それすらも僕には届かない。
「ここまで私の剣に軽々対処するとはお見事だ」
「それはどうも。さ、様子見はもういいよね」
まだこれは相手の出方を探るための牽制、その時彼女はポツリと「……この人なら私の願いを成就させてくれるかもしれない」小さな声で呟いた。一体それは何なのかは僕には分からなかった。
その後、彼女は本気となる。
一撃一撃が急所狙いかつ必殺の威力を込め緩急をつけて苛烈な攻めを敢行する。もはやそれは人に確認できるものではなかった。確認できるのは自分が死んだことだけだろう。
だが、僕はそれすらも容易く対処してしまう。
彼女の瞳には驚きと同時に喜びだけがあった。ここまで本気になったのにもかかわらずそれすらも容易くいなしてしまう相手に対して。このままでは決着がつけられないと判断したのか彼女はここで初めて特徴のある構えを取った。
「我が一族の秘宝にして絶対必殺の剣技《流星》を耐えられるか!」
そのスキルは複数回同時連続攻撃、しかも5発も!しかもすべての攻撃が必殺の威力を持っていた。さすがにこんなものを出されてしまっては誰であろうと生き延びれるはずがなかった、そう生き延びれるはずがない。僕を除いて。
(まだ地上世界にこんなものが残ってたなんで。それを継承し体得した彼女の天分はとんでもないものだ)
さすがにこれを初見で出されては僕もその気にならざるをえなかった。まったく同じ攻撃をしてすべて叩き潰す。
「ぐうっ!そ、そんな。これを、ま正面から、打ち破られるなんて?!」
さすがの彼女もこれには動揺を隠せないようだ。
「貴方も、これの継承者なのか?」
今のを分かるだけでも驚嘆に値すると。なるほど、同じ祖先から学んだのでは、そう思えるのも無理はないか。
「違うよ」
「えっ?でも」
「君が使ったスキルなんて使ってない」
単純に肉体の力だけで同じことを再現しただけだと。それで相手には意味が伝わったようだ。
「そ、そんな…信じられない」
彼女は少しばかり現実が受け入れられないようだ。
「そこまで体得できたのは素晴らしいの一言。でも、君はまだ先があることは知らないようだね」
「さ、先!ですって!」
この時点で極めたはずだ。僕はそれを否定した。その先なんてあるはずがない。なら、見せてあげよう。先ほどの彼女と同じ構えをあえて取る。それが自分の必殺技であるように。
「まぁ、即死はしないように手加減するよ。ちゃーんと、治療してあげるから。君ほどの存在は殺せない」
さすがにただ事ならぬと判断した彼女は絶対防御の構えを取る。その後彼女は一時的に冥府へと行かされることになった。
私は暗闇の中をしばらく彷徨い続けていた。延々と終わりの見えない道、その先には川があった。そこには小舟があり船頭がそれに乗るよう促す。それに乗ろうとした瞬間。
「うっ、く、はぁ」
「お目覚めご苦労様。気分はどう?」
「わ、わたしは、どうなって」
傍にいたのは先ほど乱入してきた対戦相手だった。あ、あれ、ここはどこだ?見知らぬ天井に部屋に違和感を持つ。
「ここは闘技場の治療室だよ。緊急事態だから個室だけどね」
「ど、どうなって…」
「君は倒された、それだけ」
え、それだけ。私が倒された?たしか、奥義を繰り出してそれを相手に止められて、それからの記憶がスッポリ抜けていた。負かされた、こんな幼い子供に。
負けたという事実より、確認したいことがある。
「私の奥義と同じ継承者…では、ないのだな。さらに先を行っていると君は言った」
なら、それがどんなものであるのか、教えてもらいたい。
「それはいいけど」
その格好で外を歩き回れないでしょ、私はここで自分は裸であることに気づいた。
「!?」
さすがに私は羞恥心に勝てず体を隠す。
「緊急治療が必要だったからね」
「……」
「安心してよ。不埒なことは何もしてないから」
私は隣に用意された服に着替えてついてくるように言われ彼は出て行った。それは私が来ていた服と全く同じ東国風の着物だった。それを確認しつつ着替える。外ではその子が待っていた。
その子についていく。
都市の外に出るとコテージに案内される。
『おかえりなさーい』
様々な種族の男女が出迎える。冒険者のパーティだと説明される。中の階段を上がり訓練場に案内された。とんでもない品物だなと思う。
「さて、まずは君自身《流星》についてどこまで知っているの」
「5回の多方向からの複数回同時連続攻撃、としか」
「それで大体のことは説明できるよね。でも、少しばかり解釈の誤解がある」
「誤解?」
「この時点で必殺剣技なんだけどこれはまだ下位互換もしくは下地固めに過ぎない。まだ本物には至ってない」
これでもまだ本物ではないことに驚愕するしかない。では、本物とはどれほどのモノなんだ。私の関心はそれだけだった。
「意外と少人数なのですね」
「ハハハっ。特使とはいっても所詮国の使いっぱしりだからね。無駄な予算が出ないんだよ」
人数は予想より少ないので僕のコテージに入れよう。野戦病院的なベッドだが安全だし環境もいいはずだ。
その後出発する。
途中放浪中のモンスターを倒したりしながら目的地まで進む。暗闇が訪れる前にコテージを建てる。
「簡素な場所ですが。ゆっくりしてください」
「いやぁー、実に快適な旅を提供してもらい感謝するよ。安全だし料理も美味いし環境もいいし」
皆、そうだろう。連れの護衛達も同意する。
料理は共同のモノだが明らかに美味しいし湯浴びだって出来る環境だ。
「君らはいつもこの環境が使えるんだよね。羨ましくて仕方がないよ」
「まぁ、恵まれた環境を用意するのがリーダーの責任なので」
「これぐらい用意するのが当然と思っている時点で普通じゃないと思うのだがね」
そうなのか。仲間達も普通じゃないですよ、常々口にするけど。僕にとっては別にさして変わらないと思うんだけど。
その後も森の自然や風景を楽しみつつ目的地《アーゲンハウル》の外壁が見える近さまで近づく。
『大きいですねぇ。明らかに防備が充実しているのが分かります。中も相当なのでしょう』
「ここは色々なものが充実してるが何といっても『闘技場』があることが理由だよ。力が正義だと主張する野蛮人の集まる土地だ。そうした催しがあるのが最大の娯楽になっているのさ」
「それぐらいモンスターの脅威が激しいわけですね」
「そういうことさ。ここを本拠地とするためにはそれ相応の実力がないと生き残れない。だから君達を連れてきたんだよ」
銅級以上の冒険者が数組いるし色光玉級も質量共に揃っているそうだ。なるほど、ここで生き延びれるかどうかが最初の試練なわけだ。
「さて、こちらはまず有力者に挨拶に向かうが君達はどうするかね」
「闘技場とやらに行ってみようと思います。思わぬ掘り出し物があるかもしれないので」
「強者は強者に惹かれる、という言葉通りだね」
挨拶など後回しにするあたりはさすが実戦経験豊富だと判断したようだ。特使様と別れて闘技場の場所を聞いて仲間とともに向かう。
外からでも喧騒が聞こえてくる。中に入ると観客の熱気に圧倒される。
「うへぇ。どいつもこいつも命知らずばかりですよ」
「本当ですわね。暴力を使わなければどうしようもありませんわ」
「我が同族らも多数参加しておりますな。力を信奉する者らにとっては楽園ですぞ」
「力こそが正義という主張がここでは当然なんですね」
「野蛮極まりますが混沌に対してはそれしか通りませんから」
「いやぁー、実に見ごたえがあるよね。にししっ、実に単純明快だよ」
「参加者は騎士から魔術師までいます。方法手段など問わないという事なのでしょう」
仲間たちはこんな野蛮な催しなど初めて見た。そこでは己の力のみで勝つことが条件なだけ、その手段や方法など問われないことに。相手を倒せば喝采、負ければ罵声が飛んでくる。中にはどちらが勝つのか予想屋や食事を売る売り子などがせわしなく動き回っていた。
しばらく試合を観察すると。
「おっ、いつものヤツが現れるぜ」
いつもの?近くの観客に聞くとここで負け知らずの王者が出てくるそうだ。遥か東からやってきたそうで独特の剣技を使い格好も異文化丸出しだそうだ。もう相手がいないそうで半ば見世物になっているそうだ。
その人物の登場を待つ。
現れたのは女性だった。かなり若いな。あれ、東国に伝わる『キモノ』というやつだろう。袴を履き武器はカタナという細身で切れ味鋭い武器だが容易に扱える曲刀とは大きく違う。雰囲気からして異質だった。
「この私を倒そうとする者はおらぬか!」
どうやら、もう自分の相手がいないことが不満なようだ。まるで周囲を臆病者扱いと見ている。まぁ、ここで負け知らずならその自信も納得だ。中にいる審判はどうにもならないようだ。参加者は誰でもいいらしい。
なら、僕が参加しても問題ないよね。観衆を飛び越えて中に入る。
「! こんな、幼い子供、だと…」
相手は僕の外見を見て一瞬だが驚いていた。まさか観客席を飛び越えて参加してくるなんて。
審判が聞いてくる
「さ、参加料を、払えるのか」
僕は審判の前に金や銀の塊を数個吐き出す。それで審判は所定の位置まで下がった。試合が了承される。
「君は勇気と無謀を勘違いしてはおらぬのか?私が求めるのは強者のみだ」
そうか、外見だけならそうとしか見えないだろう。なら、久しぶりに獰猛な本性を見せることにしようか。僕は深淵の殺意を彼女に向けて解き放つ。
「っ!そういうことなら、不足はない。私の秘術の剣技、存分に見せようぞ!」
彼女はすぐ様こちらに反応する。加減は出来ない、そんなことをしたら自分が殺されてしまうと。敵の首を討ち取る覚悟で挑まねば戦いが終わらないことを瞬時に理解したようだ。
僕を剣を抜き片身で構える。それを開始の合図と見なし相手は瞬時に距離を詰め抜刀する。俊足の踏み込みと居合抜きだ。僕はそれを軽く弾く、キィンと金属音が鳴り響く。
「やはり奇襲は効かないか」
「そっちも」
彼女は不意打ちは失敗したと判断しカタナを構える。盾の使用を前提としたモノではなく東国に伝わる独特の構え方だ。
真正面からの打ち込みを逸らし横薙ぎを受け止め切り返しを受け流し突きを身を捻る。息も付かせぬ連続攻撃は見事としか言いようがなく華麗な舞を見ているかのようだ。だが、それすらも僕には届かない。
「ここまで私の剣に軽々対処するとはお見事だ」
「それはどうも。さ、様子見はもういいよね」
まだこれは相手の出方を探るための牽制、その時彼女はポツリと「……この人なら私の願いを成就させてくれるかもしれない」小さな声で呟いた。一体それは何なのかは僕には分からなかった。
その後、彼女は本気となる。
一撃一撃が急所狙いかつ必殺の威力を込め緩急をつけて苛烈な攻めを敢行する。もはやそれは人に確認できるものではなかった。確認できるのは自分が死んだことだけだろう。
だが、僕はそれすらも容易く対処してしまう。
彼女の瞳には驚きと同時に喜びだけがあった。ここまで本気になったのにもかかわらずそれすらも容易くいなしてしまう相手に対して。このままでは決着がつけられないと判断したのか彼女はここで初めて特徴のある構えを取った。
「我が一族の秘宝にして絶対必殺の剣技《流星》を耐えられるか!」
そのスキルは複数回同時連続攻撃、しかも5発も!しかもすべての攻撃が必殺の威力を持っていた。さすがにこんなものを出されてしまっては誰であろうと生き延びれるはずがなかった、そう生き延びれるはずがない。僕を除いて。
(まだ地上世界にこんなものが残ってたなんで。それを継承し体得した彼女の天分はとんでもないものだ)
さすがにこれを初見で出されては僕もその気にならざるをえなかった。まったく同じ攻撃をしてすべて叩き潰す。
「ぐうっ!そ、そんな。これを、ま正面から、打ち破られるなんて?!」
さすがの彼女もこれには動揺を隠せないようだ。
「貴方も、これの継承者なのか?」
今のを分かるだけでも驚嘆に値すると。なるほど、同じ祖先から学んだのでは、そう思えるのも無理はないか。
「違うよ」
「えっ?でも」
「君が使ったスキルなんて使ってない」
単純に肉体の力だけで同じことを再現しただけだと。それで相手には意味が伝わったようだ。
「そ、そんな…信じられない」
彼女は少しばかり現実が受け入れられないようだ。
「そこまで体得できたのは素晴らしいの一言。でも、君はまだ先があることは知らないようだね」
「さ、先!ですって!」
この時点で極めたはずだ。僕はそれを否定した。その先なんてあるはずがない。なら、見せてあげよう。先ほどの彼女と同じ構えをあえて取る。それが自分の必殺技であるように。
「まぁ、即死はしないように手加減するよ。ちゃーんと、治療してあげるから。君ほどの存在は殺せない」
さすがにただ事ならぬと判断した彼女は絶対防御の構えを取る。その後彼女は一時的に冥府へと行かされることになった。
私は暗闇の中をしばらく彷徨い続けていた。延々と終わりの見えない道、その先には川があった。そこには小舟があり船頭がそれに乗るよう促す。それに乗ろうとした瞬間。
「うっ、く、はぁ」
「お目覚めご苦労様。気分はどう?」
「わ、わたしは、どうなって」
傍にいたのは先ほど乱入してきた対戦相手だった。あ、あれ、ここはどこだ?見知らぬ天井に部屋に違和感を持つ。
「ここは闘技場の治療室だよ。緊急事態だから個室だけどね」
「ど、どうなって…」
「君は倒された、それだけ」
え、それだけ。私が倒された?たしか、奥義を繰り出してそれを相手に止められて、それからの記憶がスッポリ抜けていた。負かされた、こんな幼い子供に。
負けたという事実より、確認したいことがある。
「私の奥義と同じ継承者…では、ないのだな。さらに先を行っていると君は言った」
なら、それがどんなものであるのか、教えてもらいたい。
「それはいいけど」
その格好で外を歩き回れないでしょ、私はここで自分は裸であることに気づいた。
「!?」
さすがに私は羞恥心に勝てず体を隠す。
「緊急治療が必要だったからね」
「……」
「安心してよ。不埒なことは何もしてないから」
私は隣に用意された服に着替えてついてくるように言われ彼は出て行った。それは私が来ていた服と全く同じ東国風の着物だった。それを確認しつつ着替える。外ではその子が待っていた。
その子についていく。
都市の外に出るとコテージに案内される。
『おかえりなさーい』
様々な種族の男女が出迎える。冒険者のパーティだと説明される。中の階段を上がり訓練場に案内された。とんでもない品物だなと思う。
「さて、まずは君自身《流星》についてどこまで知っているの」
「5回の多方向からの複数回同時連続攻撃、としか」
「それで大体のことは説明できるよね。でも、少しばかり解釈の誤解がある」
「誤解?」
「この時点で必殺剣技なんだけどこれはまだ下位互換もしくは下地固めに過ぎない。まだ本物には至ってない」
これでもまだ本物ではないことに驚愕するしかない。では、本物とはどれほどのモノなんだ。私の関心はそれだけだった。
10
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。
黒ハット
ファンタジー
前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。
農民の少年は混沌竜と契約しました
アルセクト
ファンタジー
極々普通で特にこれといった長所もない少年は、魔法の存在する世界に住む小さな国の小さな村の小さな家の農家の跡取りとして過ごしていた
少年は15の者が皆行う『従魔召喚の儀』で生活に便利な虹亀を願ったはずがなんの間違えか世界最強の生物『竜』、更にその頂点である『混沌竜』が召喚された
これはそんな極々普通の少年と最強の生物である混沌竜が送るノンビリハチャメチャな物語
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
転生したらドラゴンに拾われた
hiro
ファンタジー
トラックに轢かれ、気がついたら白い空間にいた優斗。そこで美しい声を聞いたと思ったら再び意識を失う。次に目が覚めると、目の前に恐ろしいほどに顔の整った男がいた。そして自分は赤ん坊になっているようだ!
これは前世の記憶を持ったまま異世界に転生した男の子が、前世では得られなかった愛情を浴びるほど注がれながら成長していく物語。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる