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銀の精鋭、とは 2

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「ほら、ここがお留守だよ」「あっ!そこ突いてきますか」

僕らはコテージの中で各自ゲーム盤などで遊んでいた。あまりガツガツ依頼に励む必要がないからだ。たかがゲームでしょ、とはいうが人生の楽しみで娯楽というのは結構重要だ。ゲーム盤と駒を買ってきて仲間と遊んでいた。

「むー、少し前にルールを覚えたばかりなのに」

相手をしてるのはミーアだ。意外とこっちに興味があるそうでルールを覚えて遊んでいた。エミリアが観客である。

「その手はえげつないですわね」

エメリアも予想外の強い打ち方に驚いていた。

「はっはっは。こちらもなかなか白熱しておりますぞ」「うーん、あの壁邪魔ですね」

バーゼルとシェリルが遊んでいるのは玉突きゲーム。指定のボールを指定の穴に入れるだけだが形状の違う障害物を置けるため上手く突かないと穴には入らない。ラグリンネとエトナが観客だった。

「意外と奥深いんですね」「たかが玉転がしでもここまでなら娯楽だよね」

遊ぶものは結構値の張るお店で買ったので存分に楽しむことが出来る。

そうして遊んでいるとチリリリンと、音色が聞こえた。どうやらコテージに来客が来ているようだ。またレクチャー希望の相手か。

「申し訳ないけど来客が来ているようだから」

勝負を一旦切り上げる。

「じゃ、次は私が相手ですわ」

「いいよー。勝ってやる」

僕は階段を降り入口まで向かうとギルドの受付嬢ややって来ていた。

「申し訳ありませんが大至急建物まで来ていただけますか」

「んー。今は仲間と遊んでる最中だし、僕らが必要な依頼はなかったはずだけど」

「それについては後でお話しします」

大急ぎで冒険者ギルドの建物まで向かい別室で話を聞く。

「パーティの増員を考えて欲しい、ですか」

「無理なお願いとは思いますが」

「もうそういうのはお断りだと知っているはずですが」

そうもいかない事情が発生したようだ。何人入れればいい、それを聞くと一人だけだそうだ。

「銀の精鋭のこと、ご存じですよね」

あー、あの傲慢な連中か。ま、ある程度のことは情報として聞いている。

「なんでも大損害を出したとか。ま、初心者が引っかかりやすい罠なりがあったんでしょうね」

「そうです。もう生き残りはほぼおらずパーティは空中分解しました。その後生き残りは好き勝手な行動を始めました」

前回の連中と同じです。あー、そうなるよね。等級やランクだけは偉く高いからそれを悪用しようという事だろう。

「こちらとしてはさっさと中央に帰って欲しいところですが」

その生き残りの一人がソロでゴブリンの巣穴退治を受けようとしたのだと。僕としては、勝手に死ねばいい、それだけだが、話を聞くとどうも厄介なことになっているらしい。

その本人と会ってパーティに加えるかどうか審査して欲しいと。

「それなら、そっちで審査して…あ、そういうことだね。分かった。ただし」

見込み無し、そう判断したらもう彼にはお帰り願う必要がある、それを先に約束しておく。多分相当な家の事情があるのだろう。僕のパーティ以外では面倒を見るのは不可能だと判断したのだ。

そうして、その子と会うことになる

「セシルと言います」

若いな、物腰は丁寧だしちゃんとした教育も受けていたのだろう。だからこそ、今現在自分の状況が危険であることを理解が足りているのかどうか。

「おおよその事情は聞いた。でも、全ては聞いてない。君は僕を振り向かせることが出来るの」

ちょっと煽り気味にする。

プライドが高ければ侮辱、そう取るだろう。だが、彼は意外な返答をした

「いえ、僕にはもう何も信じる存在がありません。家族ですらも僕に何を期待していたのか、その理由さえ分かりません。ただ言えることは『冒険者という仕事を評価していない』それだけです」

ふむぅ、確かに冒険者とはモンスターに暴力で対抗する仕事だ。いわば不穏分子に近い、貴族などからすれば差別的な仕事だと捉えることが出来る。国が動けないから冒険者で対応することはスタンダードになっている現実。それは評価すべきであろう。

「僕が無力だから『都合のいい駒として使い潰される』そのことを思い知りました。もう嫌なんです、誰かの都合で作り出される自分自身が!その結果死地に飛び込み生き残ってしまった。仲間たちの犠牲を払ってです。彼らだってまだまだ未来ある命だった。それなのに、それを命じた。他ならぬ自分達で!」

「で、どうしたいの」

「戦場で助け合う仲間は見切りを付けて勝手に出ていきました。でも、いまだにその命令の撤回が来ておりません。ただ励め、という言葉だけで切り捨てられたんです。堪ったものじゃありませんよ。こんなことならもっと平和に生きられる努力をするべきだった」

「君は同胞に、家族に、貴族に、国王に、それらすべてに剣を向けられるの。たとえそれが国を亡ぼす引き金になるかもしれない。その責任を問えと言うなら誰に問う?」

「暴力を売り物にしてモンスターと戦うのが冒険者の本業なのでしょう。それを無辜の民には向ける気はありませんがそれでなくては世界に平和が来ません。国という軍勢が出られないのなら冒険者が出なくてはなりません。誰もがその責任の一端を担っている。それが悪だというなら容赦なく責任を問うべきです」

……決心は相当固いようだ。若いし素質もある。何より中央の大物の一族を手中に収められる。今はまだ役割は果たせないが育て方次第でどんな成長を見せてくれるのかは期待できる。

「ピュアブリング」

「えっ?」

「だから、パーティーリーダーである僕の名前」

復唱して。

「ピュアブリング」

「よし、それを忘れないでね」

「は、はいっ」

「付いてきて。仲間を紹介するから」

セシルは彼を振り向かせられたのだ。

「じゃ、皆に新しいメンバーを紹介します」

彼の住んでいるコテージに連れていかれる。プレートの認証登録をして中に入るとちょっとしたお城のようだ。

「ふぇ、しばらく増員はないって」「そうですわ。そもそもそいつは誰なんでしょうか」

ハイビーストの女の子とハイエルフの女の子がこっちを見ている。相当な美少女だ。

だけども先んじて言われていた。

『彼女達への手出しは絶対に禁止』

欲情したらちゃんとしたお店紹介してあげるから、リーダーにそう言われていたからだ。君の家の事情もあまり言いふらさないこと、彼女達も部族氏族の強引な取り決めに不満があるから。僕と同じなんだ。他人の都合で使われる自分が許せない。

「当面は基礎訓練だね。面倒見てあげて」

「我らの中では一番下っ端、というわけですな」「ま、リーダーのことですから事情が大有りなのでしょうね」

巨体の上竜人とハイドワーフの少女が訳あり風に納得していた。彼女も可愛いな。

「今回はちょっとばかり断れない案件だったから」

「ええ、そうなんでしょうけど」「ま、当分は下積みだね。にししー」

二人のヒューマンの女の子も特徴がありやっぱり可愛い。ここに来る前色々な女の子を見てきているがここまでレベルが高いのが集まっているのは初めて見た。

「はい、自己紹介」

「セシルです。ご指導よろしくお願いします」

それぞれから自己紹介される。バランスは良いな。バカバカしいほど騎士系クラスで構成された前とは大違いだ。

「これで次の目標が追加されたわけだ。頑張ろうね」

『はいっ』

まだ自分は一時的にしかパーティに参加してない状態だ。これを正式にするのが最初の関門ということだろう。その後自分の個室を与えられる。

その後は宴だった。美味しい料理やお酒を飲んで楽しむ。こんなことすら前は無かったからとてもうれしい。

「騎士系クラスってことだけど盾装備が前提なんだね」

「はい」

「大楯まで装備可能か、中盾までで騎乗可能か、クラスチェンジ次第だけど」

「えっ!」

「仲間全員クラスチェンジ済みだから」

クラスチェンジに必要なマナストーン、それを有していると。さらに非常にレアな位階の石像さえもある。これならいいとこ取りが出来る上にさらに強くなれる。

「大楯装備可能な『将軍』中盾までだけど騎乗可能な『聖騎士』属性付与が出来る『魔剣士』とかのルートを選べるからそっちで決めといて。光と闇のいいとこ取りだしどれを選ぼうともかまわないけどね」

決めたら聖堂の使用許可を取ってクラスチェンジさせる。

「でも、それは仲間達に認められた後、だからね」

仲間たちは全員僕に忠誠と覚悟を示している。それが言葉だけのものではないと認めさせられなければ放り出すだけだと。

「もう君の命は君だけの命じゃない。誰かを助けることが出来るかどうか天秤にかけられていることをお忘れなく」

もう、誰かに守られる時間は終わった。もうここからは懺悔の言葉よりも死力を尽くさなければ置いていかれるぞ、無言の圧力を感じる。

冒険者ギルドは彼らのパーティがここで最優秀だと教えてくれた。それに恥じない実績の持ち主だと。なら、もうこれからが新しい僕の人生だ。もう家族一族のことなど考えてなどいられない。同じ戦場に立ち戦い生き延びた者だけが本当の仲間だ。

もう、これ以上仲間の死に顔なんて見る気はない。

「はぁはぁ」

「なにボサボサしてるの。ここが弱いよ」

「くうっ」

「動きを止めるな、前を向け。その装備は何のためにあるんだ」

盾の隙間から容赦なく攻撃を撃ち込まれる。模擬戦闘用の木剣とかだが実力者が使えばそれは凶器になることを痛感するセシル。

ピュアブリングは間違いなく戦達者だった。

本来であれば自分に訓練の時間を割くよりも依頼をこなす方がいいのだろうが、教えるべきことを教えないで無駄死にする、それを避けるためにあえて時間を作ってくれる。

少ない手数手札でいかに勝機を見出すか。それを容赦なく教えてくれる。

「水薬を迂闊に飲もうとするな」

「ぐあっ」

「安易に道具に頼るな。それは使うべき時に使え、お前の無駄遣い一つで仲間の屍の前で悔やむことになることを忘れるな」

「はいっ」

ハッキリ言ってリーダーは鬼だった。優しく手解きなど許してはくれない。だけども、今の僕には最も輝ける意味があった。

『お前が戦場に立つときその周りにはいったい誰がいるか。背中には何か守るものがあるか。その武器を取る覚悟で倒さなければいけない敵は誰かを常に考えろ』

一応騎士学校を出ている身だがこんなことは教科書のどこにも書かれてなかった。どこにも書かれていないことを教えてくれるピュアブリングは僕の生涯を賭けて追い続ける目標になるまで時間はかからなかった。

そして、ついに実戦の日を迎える。
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