上 下
54 / 86

短編 同じはずなのに違う存在に戸惑う

しおりを挟む
決闘が終わりピュアブリングが勝者となる。その後仲間達は一目散に彼の傍に駆け寄る。

『ピュアブリング!あれはいったい何なの。あれは貴方じゃない。あんな残虐な行為を楽しむなんて心がないの!そもそももっと楽で簡単に戦いを終わらせてしまうことだって出来たはずでしょう!』

皆が皆あまりの変化に驚いていた。困惑、仰天、恐怖、色々な感情が混ぜられておりとても理解が追い付いてない。

「なによ、わたしに口答えする気?」

『えっ』

まず驚いたのはわたしという一人呼称の変化だった。別にそれだけなら対して問題ないように感じるがいつも穏やかで大人しい彼とはまるで中身が違うように感じてしまう。

「ふんっ。文句を言いたかったらあいてにいうことね。どうやっても勝てないのはわかりきっていたはずなのに降伏をみとめなかった代表がむのうなのよ」

次に驚いたのはその言葉遣いだった。真面目で冷静な彼とは明らかに違う、まるで我儘大好き娘のように傲慢尊大な振る舞いとそれを許容してしまうほどの雰囲気を纏っていたからだ。

「さっさとこてーじにもどるわよ。わたしきぶんが晴れないの。上をもてなすのは下のつとめよね?」

『……はい』

全員が沈黙するが逆らえば自分らだってどうなるのか分からない恐怖を覚え従順になることにした。

「さっさとお茶とくだものきってきなさい」

「ねぇ、ちょっと。どうしたの」

「わたしはピュアブリングよ。リーダーをもてなすのは当然のつとめでしょ」

「あの、あまりにも態度が変わりすぎでは。あなたはもっと」

「なによ。わたしが誰だと思っているのかしら」

「リーダー、これまで我らが至らぬところが多かったですが。どうか温情を」

「だったらおちゃとおいしい食べ物もってきなさい。それで我慢してあげるわ」

「なんだがようやく外見と中身が一致したような感じですねー」

「あら。ほめことばありがとう」

「だとしてもここまで別人のようになるのでしょうか」

「わたしは僕、僕はわたしよ。ただコインのおもてとうらがちがうだけ」

「きみぃ、豹変しすぎだよー」

「それについてはどうしようもないのよ」

仲間全員が疑問を浮かべつつこれまで丁寧に対応していた彼とは全く異なる魂が入り込んでいるのか、そう思わざるを得ないほどの変わりようだった。

わたしが言うようにお茶と果物を切って持っていくと満面の笑みを浮かべながらそれを楽しんでいる。

「うまうまよね」

ひとしきり楽しむと満足したのか柔和な笑みを浮かべる彼というわたし。

「あなたは、誰なの。彼の肉体に別の心があるような感じ」

「そうよ。わたしと僕はコインのおもてとうらの関係。ただ、見るほうこうによってちがうだけなのよ。男性的と女性的と些細な違いだけだけどいみはおおきくことなるわ」

「複数の心って、持てるものなの」

「だれだって耐え難いおもいはしてるものでしょう。べつの自分がいればかわってもらいたいと思わない訳はないわ。だれだってきずつきたくないからね」

ミーアとエメリアの質問にピュアブリングという存在が一己だという疑問は消し飛んだ。

「あなたは何者なのですか。どうも我らが知る彼とは同一人物でないことは確かなようですが」

「僕という肉体がピュアブリングというのならわたしもまたピュアブリングなのよ。赤のたにんからもらった名前だけどね」

「肉体という個に二人の人格がコインのようになっているという訳ですか」

「そうよ。もっとも、わたしの出番はあんまりないほうがつごうがいいの。ゆうとうせいだからね僕は」

バーゼルとシェリルは彼が何か深い闇を抱えている事情があることを察しそこを聞いておくことにした。

「どちらが本物なのですか」

「どっちもほんものよ。まぁ、わたしはこの通りだし僕もまたこの通りだけど」

「頭がおかしいんじゃないのー」

「ふふっ。人はね、条件さえ整えればかんたんにくるえるのよ。いっせんをこえるのに自己意識はじゃまだからね」

ラグリンネとエトナはその豹変ぶりに驚くばかりだ。

「あんしんしなさい。しばらくすればいつもの僕に戻るわよ。ま、その間はわたしのよくぼうはっさんに付き合ってもらうけどね」

これまで僕が甘やかしていた分だけ尽くすのは当然でしょ。わたしはそう言っていた。

「さっさとそとにくりだすわよ。服とか下着とかたりないし、なにより楽しみがたりないのよ」

仲間ら全員を引き連れて外に繰り出し服やら下着やらを買い込む、やっぱり女子用のフリフリヒラヒラ服ばっかり選ぶ。あと、本屋にも立ち寄って洗いざらいの本、特に歴史に関する本ばかりを選ぶ。

「なぜ買うのですか」

「わたしは隔離されたせかいしかしらないの。常識けつじょはだいもんだいだわ。あなた達だってらくさの激しすぎる僕にはなやんでるでしょ。それをわたしが補佐するためにまなぶのよ」

たしかに、ピュアブリングの価値感の高低差は激しすぎて手に負えないのは周知のとおりだ。それがわずかでもマシになるというのなら問題はない。

コテージに戻りすごい速さで本を読破していくわたしという存在。

「ふんっ。世の営みとやらはここまでゆがんでるのね。じつにこうつごうだわ」

「都合がいいとは?」

「ときとばあいと条件によっては略奪とじゅうりんと殲滅がゆるされるということよ。たいはんの部族氏族がじゃくたいかしてるのはこうつごう、もっとも未だに同盟関係があるみたいだけどね」

わたしが言うことがいかに恐ろしいことなのかを全員が理解した。

「やっぱりせかいはくるっているのが素晴らしいわ。こんとんとやらにはしっかりお礼をいわないとね。これでわたしというそんざいが必要であるのかがよくわかるというものよ」

先の決闘で見せた残虐性が当然のようにまかり通るこの世界がわたしにとっていかに都合よくできているのかを再確認している。あれについては降伏を受け入れなかった相手に全部の責任があるとしてピュアブリングについては何も罪がないことがすぐに伝えられていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす
ファンタジー
 病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。  時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。  べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。  月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ? カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。 書き溜めは100話越えてます…

解体の勇者の成り上がり冒険譚

無謀突撃娘
ファンタジー
旧題:異世界から呼ばれた勇者はパーティから追放される とあるところに勇者6人のパーティがいました 剛剣の勇者 静寂の勇者 城砦の勇者 火炎の勇者 御門の勇者 解体の勇者 最後の解体の勇者は訳の分からない神様に呼ばれてこの世界へと来た者であり取り立てて特徴らしき特徴などありません。ただひたすら倒したモンスターを解体するだけしかしません。料理などをするのも彼だけです。 ある日パーティ全員からパーティへの永久追放を受けてしまい勇者の称号も失い一人ギルドに戻り最初からの出直しをします 本人はまったく気づいていませんでしたが他の勇者などちょっとばかり煽てられている頭馬鹿なだけの非常に残念な類なだけでした そして彼を追い出したことがいかに愚かであるのかを後になって気が付くことになります そしてユウキと呼ばれるこの人物はまったく自覚がありませんが様々な方面の超重要人物が自らが頭を下げてまでも、いくら大金を支払っても、いくらでも高待遇を約束してまでも傍におきたいと断言するほどの人物なのです。 そうして彼は自分の力で前を歩きだす。 祝!書籍化! 感無量です。今後とも応援よろしくお願いします。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

今日からはじめる錬金生活〜家から追い出されたので王都の片隅で錬金術店はじめました〜

束原ミヤコ
恋愛
マユラは優秀な魔導師を輩出するレイクフィア家に生まれたが、魔導の才能に恵まれなかった。 そのため幼い頃から小間使いのように扱われ、十六になるとアルティナ公爵家に爵位と金を引き換えに嫁ぐことになった。 だが夫であるオルソンは、初夜の晩に現れない。 マユラはオルソンが義理の妹リンカと愛し合っているところを目撃する。 全てを諦めたマユラは、領地の立て直しにひたすら尽力し続けていた。 それから四年。リンカとの間に子ができたという理由で、マユラは離縁を言い渡される。 マユラは喜び勇んで家を出た。今日からはもう誰かのために働かなくていい。 自由だ。 魔法は苦手だが、物作りは好きだ。商才も少しはある。 マユラは王都の片隅で、錬金術店を営むことにした。 これは、マユラが偉大な錬金術師になるまでの、初めの一歩の話──。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

処理中です...