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中身を確認したらとんでもないことだった

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「だからパーティ組みましょう」「そうしましょうそうしましょう」

「…」

言葉を立て続けに捲し立てるビースト女とエルフ女、この二人には思慮という文字を知らないらしい。

「組めば鉄色級の依頼を受けられるようになるが付いていけるのか」「そうですよ。おんぶにだっこ状態になるかもしれませんし」

竜人男とドワーフ女はもうちょっと相手の意見を聞けと窘める。

…騒がしい二人と大人しめな二人、アンバランスのようだがこれまでやってきたことを考えると決して悪い状況ではない関係なのだろう。ちょっと強引の面はあるがグイグイ引っ張る二人はパーティに良い風を吹かせてくれるかもしれない、かもしれないが。

(どうしようか?)

ラグリンネとエトナに小声で確認する。

(見た感じ悪い雰囲気はしませんし)(一時的に組んではどうかな)

二人は賛同的だ。

「わかった」

パーティを組むと決断する。

『やったー!』

「僕はピュアブリング」「ラグリンネです」「エトナだよ」

大喜びする4人。そして飲み物で乾杯する。それを飲み終わると「お金貸して」当然言ってきた。まったくずぼらな金勘定だね。早速全員で受付に向かい一時的にパーティを組む申請を行いそれが終わると一旦都市の外に出てコテージを建築して中に入れる。

『うわぁー。すっごくいいね』

各種設備が充実しパーティ全員が寝泊まり可能なこのコテージの中身に驚いていた。先の二人が食材棚をすぐさま物色し始めるがそれを止めて椅子に座りテーブルで話し合う。

「じゃ。まずは各自の状態の確認をする」

「「はい?」」

騒がしい二人は疑問形になるが後ろの二人は「はい」と答えた。とりあえず現在のパーティ共同の資金や物資、各種基本スキルやどれぐらい冒険者として活動してきた記録などを聞く。4人ともまだクラスチェンジしてなかった。これも予想範囲内だ。

「当面の目的は4人分のマナストーンを入手してクラスチェンジとプレートのランク上げ、これで行こう」

「ええっ。オーガとかを倒しに行きたいよ」「そうよそうよ、ドカーンと大物狩りを」

「馬鹿。死にに行きたいの」

不満をあらわにする二人。

「冒険者プレートの順位では我らのほうが下なのだ。先を進んでいる3人に先導してもらうのがよかろう」

「そうですねぇ。そもそも若い信仰職が黒鉄色級というのは貴重なんですから」

「え?そうなの。神官なんて背後でウロウロして神に祈りをするだけじゃないの?」

「…そんなことでランクは上がらないのですが。そもそもそれだけでは生き残れませんよ」

どうも認識の齟齬があるようだ。

「そもそも戦士1名神官2名でオークを100体以上も倒しているというだけでもかなり優秀だがヘッドハンターまで倒しているとは別格だぞ。それと組めるのは非常に幸運なんだが」

「それぐらいで倒せる相手なんでしょ。私達でもやれるわ」

「敵を知らないのは愚か者だけなんですよ。私達では全滅以外ありえないです」

「なによ。仲間にケチをつける気」

「ケチを付けなきゃならないぐらいの実力の差があるんです。一時的とはいえ組んでくれるだけでも大ラッキーですねぇ」

ミーアとエメリアの言葉をバーゼルとシェリルが抑える。ま、いいけどね。

「で、パーティの隊列とか順位付けをするんだけど」

「「私が1番」」

ミーアとエメリアが同時に叫ぶ。

「攻撃役を務める私が」「弓兵の立場である私が」

ここでもまた言い争う二人。

「すまぬ。我々全員そちらより下においてほしい」「そうですね。プレートのランクを考えれば当然かと」

配置は任せるからと。

後は共同の資金管理なのだが二人はまたも口を挟んでくる。

「二人じゃ駄目。僕が管理する。必要な補充物資とかも僕が管理するから」

「「ええっ。それじゃ食事代とか酒代とかも?」」

当然だと答える。諸々の生活費用は状況に応じて渡すがこの二人に任せては青天井で金が出ていく。生活の大部分のことはこのコテージで行えばいいからだ。僕ならいくらでも管理できる。当然二人は猛抗議するが。

「じゃ、板切れの上に薄い布を敷いた不快な匂いの部屋で寝たいのかな」

「それは嫌」「絶対嫌」

下手な宿屋よりもこのコテージのベッドのほうが格段に寝心地がいいしリフレッシュルームには風呂とか湯浴びができる。あんな粗末な宿屋よりもこちらのほうが格段に生活環境が上だ。

「ううっ。これでようやく好きに飲み食いできると思ったのに」

「どうしてよ。弓兵の重要性は誰もが知る所でしょ。あんまりだわ」

「色々と気配りを利かせてくれるのだ。これまでのようなズボラな金管理では不可能だろう」

「そうですねぇ。このコテージは真ん中な宿屋よりも設備が上ですし久々に湯浴びが出来ます」

不満を垂れ流し愚痴を言う二人と待遇が引き上げられたことを喜ぶ二人。凸凹コンビだな。全員で早速必要な道具なりを買い出しに行くことにした。

向かったのは材料販売店だった。石材木材骨材鉄の延べ棒などを買い込む。全員がなぜ武器屋に行かなかったのか疑問を持つが補充物資を安く多くしたいなら材料販売店のほうがいい。当然持ち運べる量ではないので《収納》で全部しまう。

「ほうっ。《収納》持ちとはこれは実にありがたい。これで手荷物を格段に減らせますな」

「な、なによ。それぐらいで」

「これまでどれだけ手荷物が重かったか忘れたのですか」

「……」

反論不可能なようだ。それが終わりコテージ戻り異空間に全員を連れて行く。それに全員が驚いた。

「各自用の装備などを製作する。希望はできるだけ聞く」

各自持つその装備のそのデザインをすぐさま図面で書いて制作する。

最初はミーア。武器は曲刀と逆刃刀の二刀流のようだ。そのままで制作。

2番目はエメリア。弓だが狩弓。もっと小回りが利き射程が長いのが希望なので複合弓を製作。

3番目はバーゼル。武器の希望はポールウェポン。斧と槍の両方を持つハルバードを製作。

最後はシェリル。魔術師である彼女は魔力を高めるスタッフが希望なのでそれを製作。

弓に必要な矢も大量制作する。石や骨の鏃だが工夫を凝らしより刺さりやすく肉を抉り抜けにくくする。もちろん矢筒も作成しそこに仕舞い込む。

各自も木造人形を相手に試す。

「うわっすごい切れ味だし動きが格段に軽い」

「すごい威力ね。易々と刺さるし射程も長いし使いやすいし」

「パッと見た感じ重すぎると感じましたが軽々と振り回せますな」

「わわわっ。すごく魔術の威力が上がってます」

最低限の材料で作った即席だが彼らからすると上等も上等のようだ。

その日はパーティ結成の日なのでちょっと豪勢にした。4人はガツガツ肉ばかりを食べる、よほど食べてなかったのだろう。料理役の僕は忙しかった。

順番を決めて湯を浴び寝る。脱いだ服や装備は僕が手入れをしておく。

翌朝の4人はガツガツ飯を食う。ラグリンネとエトナと僕はやや控えめにだ。短い間だがお客様扱いでいいか。食事が終わると各自の戦績を確認する。

「僕は二人と出会う前はソロだった。ゴブリンやオーク、オーガとも経験済み。後は分かるね」

「「私達はゴブリンやオークと経験済みです。ヘッドハンターとも戦いました」」

で、声高に叫んでいた二人は。というのだが、

「「……未経験」」

え?なにそれ。戦闘経験ゼロ?それはありえないだろ。だって冒険者ギルドの最初の項目にも書かれているはずだ。さすがにこれはあり得ない。残りの二人に説明を求める。

「声高に叫ぶこの二人と我々は、その、冒険者ギルドに大分顔が効く一族の出自であってな。その…つまり、そういうことなのだ。スマン、事実を打ち明けてはよからぬ輩が殺到するため出身地や氏族名が言えぬ一族の出でな。その中でも二人の家系の名声は相当なものでな」

「私達も元は別のパーティにいたんですけど。『可愛い我が子に旅をさせよ、ただし危険な目には合わせるな』一族の長からそう命じられまして。その、本当にごめんなさい!この二人がいつもこんな感じなので」

つまり、縁故採用ということだろう。

「冒険者ギルドの反応はどうなの」

「あまり良い目で見られてません。というか、私達は真面目に冒険者をやるつもりですが、このお二人にはお嬢様らしく家にいろと散々言われてまして」

「ならなんで赤彩石級なんて与えたの」

「ハク付けのためですな。さすがに灰色では良い相手はいないもので、理由は分かりますでしょう」

そういえば前の場所にいた時もやたらとビースト女やエルフ女にちょっかいをかけられていた、主に性欲の面で。つまり、その、そういうことなのだろう。性欲が強い上に自信過剰なお嬢様だから傷物にされると困るということか。なら家の中で大人しくさせていればいいものをコネでそこそこの冒険者ランクを与えたということか。

「『そんな馬鹿なことがありうるのか?』まぁ、この二人は冒険者ギルドの中でも歴史ある一族の出ですからそのぐらいの融通は利かせられたわけでして。で、その後パーティを組んだら案の定というわけでして」

「金遣いは荒くて我儘なうえに脅威を知らない。そう、英雄譚に憧れる馬鹿が二人生まれただけなんです。正直送られてくる金は徐々に減っていきまともに依頼は受けられない。実力がないからです。もうパーティ崩壊直前だったんですよ」

じゃ、さっさと実家に帰らせればいい。そうなってくるのだが彼女ら反発する。

「実家は嫌よ。傍に寄って来るのは中身のないクズだけ」「エルフ男がいかに無能であるかを知ってるから帰りたくない」

「「ごらんとおりで」」

「「自分の隣に立つ相手は自分で選ぶ」」

「それを言ったらもう逃げ場はないと思うのですが」

「いい加減現実を見て下さいよぉ」

二人は涙目である。

「その割には結構動けるよね」

「そこなんですよ。無駄に自信があるのはそのせいでして」

「血筋によるものなのか覚えが早いんです」

お嬢様なら温室育ちは能力が低いはずなのに見た感じそれなりには戦闘力があるし器は大きい。多分先祖が優秀なのだろうな。とはいえこのトラブルメーカー二人をコントロールするのは大変そうだ。
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