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ダンジョンと関わることにする6

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「「「おはよう~」」」

 朝早くに起きる、私達3人は同じ部屋を使うように言われた。水を生み出す水差しや温度調整をするマジックアイテムなどが設置されていて外が暑かろうが寒かろうが快適な空間を保っている。早めに起きるのは朝風呂を楽しむためだ。そうして極楽の時間を楽しんだ後食事になる。

「今日も美味しいです」

「朝からこんな美味しいご飯が食べられるなんて」

「精白したパンにジャムやバターなどどれも手に入れずらい物ばかりですね」

 朝から豪華な食事です。まだ10代なので出来るだけ食べて体を作らなくてはいけません、辺境伯様の料理のこだわりは噂には聞いてましたがほぼ全ての住民に同じ食事が出されるそうです。

「人生の3分の1は食事だ、それに手を抜くと非常に残念なことになる」

 そうして料理を残さずに食べ終えます。

「今日も冒険者として働きますか」

 4人で出かけようとして、

「リーヴリル、領主としての仕事はどうするのですか?」

 ユーフォリア様らが止めますがリーヴリルは冷ややかに向き合います

「現時点では労働者人口が少なすぎてこれ以上広げても無駄に仕事が増えて管理が行き届かない。重臣としての権限を持っているのだからそちらの方で進めて」

「しかし」

「今まで王国の財源の大本であるダンジョンの問題を解決しないと今後冒険者が増えにくくなる、いまだ試験的な意味合いが強いけど軌道の乗せればこの領地にも莫大な利益となる。その説明は十分してあるはず」

 変貌を遂げたダンジョン周辺には宿屋や運び屋や商人等が先を競って利権確保に動いている。それらの整備をしなくてはならないのだ。

「将来的には殆ど任せることになるのだから経験を積んでほしい、どうしても無理なら手を貸すから自分たちの判断で領地発展を考えて行動して」

 そうして今日も冒険に向かう。

「リダラさん、彼女らに少し手厳しいのでは?反乱を起こしたらどうするのですか」

 魔法で外見を変化させて外に出てからほんの少し悩むようにしてから言う。

「それはそれで別に不都合など無いよ。元々あの領地を完全に保護する気はないし彼女たちが実権を握ったとしてもそれも世界の一つの流れなのだから」

 もっとも、ゴーレムなどを万単位で動かせるからすぐに鎮圧できるとか。ここまで好き勝手に出来るのは自分の影響力が絶大であり切ることが不可能だからだ。数多くの独占している知識や技術や品々などを出させるまでは絶対服従するしか方法が無いし追い出したら他の場所で同じことをするだけなのだ。

「完全に支配者階級の頂点にいますね。それが幸運か不運かどうか判断が難しいですけど誰もが幸福な生活を謳歌してますから造反者が出てこない、いや、そもそもそういう考えすら生まれない。問題があるのは外側だけであり入りたければそれなりの物を出させる。支配者は大半が独裁体制を設置したがるのですけどここまで恩恵を出していれば独裁者であろうと何も問題が無い」

 リダラさんは間違いなく独裁者だが領地と領民の幸せを第一に考え身銭を切ることなど問題視していない、いままでだれも考えたことすらない姿だった。このまま行けば王国との力関係は完全に逆転して乗っ取ったとしても不思議ではないしむしろそうしたほうが更なる発展が続くと思う。

「わたしは王国などどうでもいいけど立てるべきところは立ててる、向こうから出すべき物を出さなければこちらから出す必要性は何もない」

 王国貴族らはそれなりに仕事は出来るが引きこもり体質で先行投資の重要性が理解できていないのだと愚痴を言う。私達にも王国の貴族やその子供らの横暴さには辟易していて『お前らにそんな実力があるのか?だったら結果を出してみろ』と疑問が大きいのは事実だ。王妃様や一部の家臣は好人物だが発言力が低く意見が通っていないがエクリプス辺境伯様の力でその勢力を日増しに増やしているそうだ。こちらから専売権や働き先の斡旋先を優先的に出す代わりにお金や労働力などを引き換えに出させる。別にこのぐらいは当然なのだが王らの派閥はそれを出そうとはせずに利権だけを根こそぎ取ろうとするから追い出されているのだとか。

「政治は面倒なことばっかり」

 この話はおしまいだと言われて今日の目的の場所まで向かう。

 王国の首都まで来ている、ここ最近はダンジョンの方ばかりに行っていたので実績を積むためにギルドに依頼を受けるのだ。

「3人とも久しぶりだね、最近ダンジョンのほうばかり行ってたそうじゃないか。その分だと相当稼いだようだね、依頼もそれなりにあるから選ぶと良いよ」

 おや、そちらの美人さんは?と聞きたそうな顔をしている。

「この人はリダラさんです。最近正式にパーティに入ってもらいました。恐ろしく美人ですが冒険者の実力はすごいんですよ」

「そうなのかい、でも、女だけのパーティだと悪い奴らも近づくことも多いから気をつけなよ」

 残念だがリダラさんの正体は他言は出来ない話なのだ。依頼は北部の方にある魔物発生地帯の魔物の討伐だ。食料やキャンプ用品をそろえてから馬車でむかう。場所は北部の帝国と王国の境目にあり発生頻度も高く常時警備兵が置かれている。

「何者か!用件をいえ」

 国境警備兵が止めます。

「私達はここで発生する魔物討伐を王国で依頼で受けた冒険者です」

 依頼内容を書かれた書類を出して確認させる。

「問題はないな。最近魔物が活発化していて帝国王子の一人であるヴァン様が直々に視察に来ている、くれぐれも失礼の無いように」

 どうやら偉い方がいるようですがただの冒険者の私達などとは関わることなどありえません、そうして魔物討伐の依頼をこなします。かなりの数が発生してますが、

「サクサク倒そう~」

 非常に気楽な声でリダラさんは倒して行きます。ある程度まで手を貸してそれ以降は何もしません。能力差が圧倒的なので全て倒せますがそれでは私達に経験値などが入りません。

 数日討伐依頼をこなしましたがリダラは何でもできるので何の問題もなく魔物を倒して行きますが、

「大変だ!ヴァン様が負傷して毒を受けてしまった。治癒魔法を使えるものはいないか!」

 重傷者が出てしまい大至急治癒魔法をかけて欲しいと兵士達が大声で叫びます。

「リダラさん、どうにかなりませんか」

 強力な治癒魔法が使える彼女ならばすぐさま治せるはずだが、

「・・・これはちょっと面倒ですね。誰か他に若い女性はいませんか?」

 どうしてだか嫌そうな顔をしています。

「どうしてですか?治癒魔法なら簡単に直せると思いますが?」

 周りの人も私達も疑問を浮かべる。

「すみませんがこの人を治癒するためには隔離した部屋で二人きりにしてもらわなければ治せません」

「どうしてだ、さほど猛毒ではないが体が異常なほど熱いのだ。すぐさま治療して欲しい」

 兵士達はどうして魔法で治せないのか説明を求めるが魔法ではかえって悪化させるタイプの毒だと説明される、治癒したければ隔離した場所で二人きりにならなければ助からないと。周りの人たちは少し悩みましたが『お願いします!』と頼んで離れた一軒家にリダラさんと二人きりになれる状況を作ってくれました。

「ここからはわたしのお仕事、すまないけど誰も近づかないようにして」

 そうして警戒をする人を除いて全ての人を遠ざけてしまいます。そうして翌日になり、

「ウプッ、年頃の男って激しすぎる」

 気持ち悪そうな顔をしたリダラが出てきました。

「ヴァン様は助かったのですか?」

「安心して、解毒は完全にしてあるから命に別状は無い、けど時々だけど発作が出ると思うから病気を持っていない若い女性を数名側に付けておいて」

 そうして別室に戻ります。

「あの毒はそれほど酷い物だったのですか?」

 気分が良くないリダラだったが何も答えてくれません。ただただ疲れたような顔で一緒に食事を取ります。
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