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極寒の大陸編
あれから少し時間が過ぎました
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同胞を食わずとも十分な肉にありつけるというインパクトは強烈だったようで、肉はどんどん焼かれ彼らの腹の中に栄養として入り徐々に全ステータスも向上していく。
毛皮や骨は生活道具になっていき生活は少しずつだが確実に変化していた。
僕は定期的にモンスターを倒して持ち帰る。しかし、この極寒の大地なくせにちょっとした時間でモンスターに頻繁に遭遇するので生体系はどうなってるんだ。ここが豊かな水や森があればともかくとして。
肉だけでは偏るので魚も取る。水の底には甲殻類や貝類がそこら中にいて食い物にはある程度困らない。ここで生き抜けるならば、その前提だが。
さらに生命の種子をまいた場所に芽吹きが来て一気に成長。ジャガイモとかイチゴに似た植物が安定して成長し実がそこそこ取れるようになっていた。各自分担してそれを収穫し食事に加える。
今日の食事は肉と甲殻類や貝を焼いたのと、野菜(?)らしき物だ
『いただきまーす』
皆が皆手掴みでガツガツ食う。僕もそれに倣う。
食事も野蛮極まり調味料すらないがある程度中身は充実してきた。保存食も徐々にだが増えてきている。食事の時間が終わり満腹感で少しばかり幸福感を味わう。
まだ毛皮を肌に貼り付けていて寝床すらワイルドだが。
「はふぅー、しあわせですぅ」
「はぁー、くったぁ」
「ああ、いいきもちだぁ」
ちょっ前だったら飢餓寸前だったのだから満足な食料が行き渡ると当然こうなる。肉体の状態が充実すれば元気も出てくる、なので各自体を動かす。
体を動かすのは古の能力取り戻すためだ。因果の戒めによって記憶から忘れ去ってしまうほどに能力を封印されていたため自分達が何者なのかすら忘れさってしまっていた。
だが、そこは本能というか遺伝子というか。僕が教えなくても徐々に能力が発現していく。
ヴァンパイア族は何名か外をある程度の距離を飛べるくらいに、ダークエルフ族は自分の姿を影のように隠す能力が開花した。
まだここにいるモンスターとは戦わせられないが周辺の調査が出来るというだけでもありがたい。
その中でも二人抜けた存在がいる。
「調子はどう」
「絶好調ですわ」「実にいい気分ですよ」
この二人、最初に出会ったときに因果の戒めが発現しこのままでは殺さなくてはならなかった二人だ。フェリスゥマグナ、インティライミ、という名前だ。
僕の力で因果の戒めから解放された二人はここにいる一族の族長の長女であり、他に同族がいないので族姫という事になる。
最初こそ目立たなかったが食料事情が改善し始めると明らかに頭角を現してきたのだ。今ではここで一番能力が高くリーダー的な存在になっている。
「では、早速行こうか」
『はいっ』
この二人を連れていく理由は実戦を目撃させて経験を積ませることとその探知能力を生かすことだ。僕だけだと一面白銀の雪世界で歩き回らないとならない。だからこの二人が生きてくる。
ヴァンパイア族は飛行と生命が発する特殊な波長を感じることが出来る、ダークエルフ族はこの過酷な場所でも十分な視野能力が強い。
この二人に先行して調べてもらうことで狩りを効率化できるのだ。しばらくすると獲物を見つけたようだ。その場所まで雪に足を取られつつ向かう。
「ぶふぅうううう」
現代でいうならゾウというような外見のモンスターがそこにいた、だが明らかに体が一回り大きい。
対峙するとすべてが分かりすべてが互角になる。鈍足だが怪力、なら脳を貫くだけ。大ジャンプし敵の頭上まで飛び脳天目がけて石剣を突き立てる。さすがはモンスターなので一撃で脳まで届いたが暴れる。瞬時に距離を取り同じ攻撃を数回繰り返して倒した。
『おつかれさまでした』
遠巻きに様子見をしていた二人が近づき労いの言葉をかけてくる。
「これだけあれば色々役立ちますわ」
「そうですね。何もかもが足りませんから」
肉の需要が高いし骨や毛皮や油なんかも到底足りない。一体倒せばそこそこ持つが150人分となるとそれ相応の消費になる。
それを虚空庫に仕舞い拠点に戻る。
全員が満面の笑みで出迎えてくれる。
早速解体作業に入るがこれだけの巨体だと一人じゃ無理、手伝いを含めて作業に入る。骨を削り尖らせた先っぽで体を徐々に開いていく。内臓を取り出し皮を剥いで部位ごとに関節を切断し肉を削り出す。
刃物が欲しいところだが石材さえ貴重なので僕以外は持っていないのだ。なので僕が切り出すお仕事担当。皆これが生き残るために必要な仕事であることを認識しているので真剣だ。
切り出した肉はその日に消費する分を除いて乾燥させる。とはいえ、ここは日の光すら拒んでいる極北の大地、これにも時間がかかるのだ。
『私達にもっと力があれば、同族達が多ければ、やれることは増えるのに』
二人は唇をキツめにする。
食う分は賄えているがやはり人手が足りない問題。まだモンスターを狩る力が無いこと、労働力にまわせる人数の少なさ、加えて凶悪な生活環境。何もかもが不利だ。
人数という区分では決して少ないわけではないが区分けすると幼年組や少年組もいて青年組も存在するし壮年組や老人組もいるのだ。
それらを区分すると働ける時間や内容に明確な差がある。
「その気持ちは分かるけど今は無駄に消費が増えないことで備蓄が増えることに力を注ごう、ね」
「そうですわね。同族を救いたい気持ちが先にばかり進みますが今は良い環境を与えられていることを守らないと」
「下手に同族を助けてもようやく形に成りつつある今の環境を破壊されたらどうしようもありませんし」
形に成りつつあるコロニーで一番最悪なのは内部分裂だ。人数が多くなればそれぞれ主張を言い始め争い合い結果としてコロニーが衰退崩壊してしまう例はいくらでもある。
今は僕の力で纏まっているが他から入ってきた連中がどうするかまでは予測できない。いずれ僕すらも不要であると追い出しにかかるかもしれないのだ。その大本を築いたのにもかかわらず。
残念ながらそこまでリーダーは出来ない。
「そうだな。ようやくミソギのおかげで生活圏が出来つつある。不用意に仲間を迎えるよりも自力で増える方がいいかもしれぬな」
「うむ。仲間を救いたい気持ちは強いがそいつらが我々に賛同してくれるとは限らんからな。むしろ迂闊に動かぬ方がいいかもしれん」
『お父様』
父親の登場に二人が頭を下げる。
「そう思いますか。僕としては複雑ですね」
「かつては一枚岩だった我らとて落ちぶれれば仲違いもする。意見を一つに纏めるなど神様でも不可能だろうよ」
「この極寒の大地を目指す際中にも仲間は争い分裂していった。もしかしたら生き残りはおらぬかもしれんしな」
「まだ希望を捨てていい段階では」
「そうです。きっと仲間は生き残ってます」
他の場所にいるかもしれない仲間を探す危険性は大きい。自力での繁栄を目指すのも選択肢の一つだ。
ともかく、生き残りがいたとしても受け入れる準備が到底足りないのでまずは自力で出来ることを増やしていくのが方針となるだろう。
残念ながら僕がいなければこのコロニーの運営は行き詰りやはり滅亡に向かうだろう。自力でモンスターを狩れない、水の中の食べ物も取れない、生活道具も足りない、あらゆる物が足りないのだ。
「我々とて同族意識は捨ててはおらんが果たして他がどのように考えておるのか分からんのでは迎え入れるべきでは無いな」
「ミソギと同じ役割が出来るならまだしもいまだ因果の戒めを全て取り除いておらぬし戦闘経験が乏しい我らは弱い。それがどういうことかよく分かっているはずだ」
『……』
二人は口を塞ぐしかない。
誰かの庇護を得るか自力で生きていくか、どちらにしろ弱いという理由が明白ならば強くなるしかないのだ。どんな楽園でもルールは必要、そうしなければ皆殺しにされるだけだ。
「それでも、助けられるのであれば」
「受け入れても」
二人の返事は弱弱しい。
二人の父親は「相手と人数次第」だと答えた。
今の居住スペースではこれ位以上増えたら空間が足りなくなるし仕事が追い付かないし食料だってあっという間になくなるだろう。建物の建築もモンスターを狩るのも僕がやっているのだ。代わりがいない。
今現在でわずかばかりの備蓄が出来ているギリギリだ。二人の父親が渋い顔をするのも当然だった。
『生き残りがいれば助けたい気持ちはよく分かる。が、今現在ようやく秩序が成り立ち始めた頃合いに他者は受け入れがたい』
それがこのコロニーの総意でもあった。
二人とてそれは嫌というほど実感している。僕が来る前は共食いして生存していたのだから。多少環境が良くなりつつある今は着実に力を蓄えるべきだと。
だから、不用意に他者に近づくなと。厳命していた。下手に関わるとそいつがどう動くか予想できないからだ。
二人の父親は今後の動きを考えるため僕に会いに来たようだ。
居住区に同族らを集めて会議を行う。
「さて、ようやく共食いをせずとも生きていけるぐらいの環境が成り立ちつつある、が。ミソギ、我々の因果の戒めを断ち切るには何が必要か教えて欲しい」
僕に質問を振られる。
「条件の全てまでは分からないけど、それなら」
まずは自力で強くなることが必須。加えてどれほど同族らの力が高まっているのか、モンスターとどれほど戦えるのか、その総人数はどれほどのものか、他にも文明のレベル、装備や生活道具などの充実、生活環境の向上、等々
「具体的にはここのモンスターを自力で倒せる者が最低1名必要だね。それぞれの種族で」
「それは族姫らに任せればよいかな」
「武器の材料が乏しいですからね」
どんな相手とでも互角になれる僕の能力ならともかくここにいる者達では自力討伐は難関だ。もうしばらく鍛錬が必要だろう。装備は良くて骨のこん棒程度だ。僕の装備次第ではどうにかなるかもしれないことは伏せておく。
「今現在の所非戦闘員扱いですが時期が来れば戦闘にも参加させます」
「大まかな方針はそれでいいとして、次の問題は食料だな」
この場所のモンスターはどういうわけか栄養豊富で巨体が多い。一体狩れば結構な人数分食わせることが出来るが保存食を作るとなると環境が厳しい。
野菜の収穫も安定してきているが人手が足りない問題がある。区画にはまだ空きはあるが無駄に労力が増えて満足に収穫できないだろうし腐ってしまう。
「同族を受け入れるにしても居住スペースが足りませんし食べ物だってまだまだ足りません」
「迂闊に受け入れれば共倒れという訳か」
「今回は大物だったので当面は生活区域の拡張を進めたいと思います」
その後なんやかんやと話し合うが結論としてはまだ同胞を受け入れる準備が整ってないことが全員一致であった。
毛皮や骨は生活道具になっていき生活は少しずつだが確実に変化していた。
僕は定期的にモンスターを倒して持ち帰る。しかし、この極寒の大地なくせにちょっとした時間でモンスターに頻繁に遭遇するので生体系はどうなってるんだ。ここが豊かな水や森があればともかくとして。
肉だけでは偏るので魚も取る。水の底には甲殻類や貝類がそこら中にいて食い物にはある程度困らない。ここで生き抜けるならば、その前提だが。
さらに生命の種子をまいた場所に芽吹きが来て一気に成長。ジャガイモとかイチゴに似た植物が安定して成長し実がそこそこ取れるようになっていた。各自分担してそれを収穫し食事に加える。
今日の食事は肉と甲殻類や貝を焼いたのと、野菜(?)らしき物だ
『いただきまーす』
皆が皆手掴みでガツガツ食う。僕もそれに倣う。
食事も野蛮極まり調味料すらないがある程度中身は充実してきた。保存食も徐々にだが増えてきている。食事の時間が終わり満腹感で少しばかり幸福感を味わう。
まだ毛皮を肌に貼り付けていて寝床すらワイルドだが。
「はふぅー、しあわせですぅ」
「はぁー、くったぁ」
「ああ、いいきもちだぁ」
ちょっ前だったら飢餓寸前だったのだから満足な食料が行き渡ると当然こうなる。肉体の状態が充実すれば元気も出てくる、なので各自体を動かす。
体を動かすのは古の能力取り戻すためだ。因果の戒めによって記憶から忘れ去ってしまうほどに能力を封印されていたため自分達が何者なのかすら忘れさってしまっていた。
だが、そこは本能というか遺伝子というか。僕が教えなくても徐々に能力が発現していく。
ヴァンパイア族は何名か外をある程度の距離を飛べるくらいに、ダークエルフ族は自分の姿を影のように隠す能力が開花した。
まだここにいるモンスターとは戦わせられないが周辺の調査が出来るというだけでもありがたい。
その中でも二人抜けた存在がいる。
「調子はどう」
「絶好調ですわ」「実にいい気分ですよ」
この二人、最初に出会ったときに因果の戒めが発現しこのままでは殺さなくてはならなかった二人だ。フェリスゥマグナ、インティライミ、という名前だ。
僕の力で因果の戒めから解放された二人はここにいる一族の族長の長女であり、他に同族がいないので族姫という事になる。
最初こそ目立たなかったが食料事情が改善し始めると明らかに頭角を現してきたのだ。今ではここで一番能力が高くリーダー的な存在になっている。
「では、早速行こうか」
『はいっ』
この二人を連れていく理由は実戦を目撃させて経験を積ませることとその探知能力を生かすことだ。僕だけだと一面白銀の雪世界で歩き回らないとならない。だからこの二人が生きてくる。
ヴァンパイア族は飛行と生命が発する特殊な波長を感じることが出来る、ダークエルフ族はこの過酷な場所でも十分な視野能力が強い。
この二人に先行して調べてもらうことで狩りを効率化できるのだ。しばらくすると獲物を見つけたようだ。その場所まで雪に足を取られつつ向かう。
「ぶふぅうううう」
現代でいうならゾウというような外見のモンスターがそこにいた、だが明らかに体が一回り大きい。
対峙するとすべてが分かりすべてが互角になる。鈍足だが怪力、なら脳を貫くだけ。大ジャンプし敵の頭上まで飛び脳天目がけて石剣を突き立てる。さすがはモンスターなので一撃で脳まで届いたが暴れる。瞬時に距離を取り同じ攻撃を数回繰り返して倒した。
『おつかれさまでした』
遠巻きに様子見をしていた二人が近づき労いの言葉をかけてくる。
「これだけあれば色々役立ちますわ」
「そうですね。何もかもが足りませんから」
肉の需要が高いし骨や毛皮や油なんかも到底足りない。一体倒せばそこそこ持つが150人分となるとそれ相応の消費になる。
それを虚空庫に仕舞い拠点に戻る。
全員が満面の笑みで出迎えてくれる。
早速解体作業に入るがこれだけの巨体だと一人じゃ無理、手伝いを含めて作業に入る。骨を削り尖らせた先っぽで体を徐々に開いていく。内臓を取り出し皮を剥いで部位ごとに関節を切断し肉を削り出す。
刃物が欲しいところだが石材さえ貴重なので僕以外は持っていないのだ。なので僕が切り出すお仕事担当。皆これが生き残るために必要な仕事であることを認識しているので真剣だ。
切り出した肉はその日に消費する分を除いて乾燥させる。とはいえ、ここは日の光すら拒んでいる極北の大地、これにも時間がかかるのだ。
『私達にもっと力があれば、同族達が多ければ、やれることは増えるのに』
二人は唇をキツめにする。
食う分は賄えているがやはり人手が足りない問題。まだモンスターを狩る力が無いこと、労働力にまわせる人数の少なさ、加えて凶悪な生活環境。何もかもが不利だ。
人数という区分では決して少ないわけではないが区分けすると幼年組や少年組もいて青年組も存在するし壮年組や老人組もいるのだ。
それらを区分すると働ける時間や内容に明確な差がある。
「その気持ちは分かるけど今は無駄に消費が増えないことで備蓄が増えることに力を注ごう、ね」
「そうですわね。同族を救いたい気持ちが先にばかり進みますが今は良い環境を与えられていることを守らないと」
「下手に同族を助けてもようやく形に成りつつある今の環境を破壊されたらどうしようもありませんし」
形に成りつつあるコロニーで一番最悪なのは内部分裂だ。人数が多くなればそれぞれ主張を言い始め争い合い結果としてコロニーが衰退崩壊してしまう例はいくらでもある。
今は僕の力で纏まっているが他から入ってきた連中がどうするかまでは予測できない。いずれ僕すらも不要であると追い出しにかかるかもしれないのだ。その大本を築いたのにもかかわらず。
残念ながらそこまでリーダーは出来ない。
「そうだな。ようやくミソギのおかげで生活圏が出来つつある。不用意に仲間を迎えるよりも自力で増える方がいいかもしれぬな」
「うむ。仲間を救いたい気持ちは強いがそいつらが我々に賛同してくれるとは限らんからな。むしろ迂闊に動かぬ方がいいかもしれん」
『お父様』
父親の登場に二人が頭を下げる。
「そう思いますか。僕としては複雑ですね」
「かつては一枚岩だった我らとて落ちぶれれば仲違いもする。意見を一つに纏めるなど神様でも不可能だろうよ」
「この極寒の大地を目指す際中にも仲間は争い分裂していった。もしかしたら生き残りはおらぬかもしれんしな」
「まだ希望を捨てていい段階では」
「そうです。きっと仲間は生き残ってます」
他の場所にいるかもしれない仲間を探す危険性は大きい。自力での繁栄を目指すのも選択肢の一つだ。
ともかく、生き残りがいたとしても受け入れる準備が到底足りないのでまずは自力で出来ることを増やしていくのが方針となるだろう。
残念ながら僕がいなければこのコロニーの運営は行き詰りやはり滅亡に向かうだろう。自力でモンスターを狩れない、水の中の食べ物も取れない、生活道具も足りない、あらゆる物が足りないのだ。
「我々とて同族意識は捨ててはおらんが果たして他がどのように考えておるのか分からんのでは迎え入れるべきでは無いな」
「ミソギと同じ役割が出来るならまだしもいまだ因果の戒めを全て取り除いておらぬし戦闘経験が乏しい我らは弱い。それがどういうことかよく分かっているはずだ」
『……』
二人は口を塞ぐしかない。
誰かの庇護を得るか自力で生きていくか、どちらにしろ弱いという理由が明白ならば強くなるしかないのだ。どんな楽園でもルールは必要、そうしなければ皆殺しにされるだけだ。
「それでも、助けられるのであれば」
「受け入れても」
二人の返事は弱弱しい。
二人の父親は「相手と人数次第」だと答えた。
今の居住スペースではこれ位以上増えたら空間が足りなくなるし仕事が追い付かないし食料だってあっという間になくなるだろう。建物の建築もモンスターを狩るのも僕がやっているのだ。代わりがいない。
今現在でわずかばかりの備蓄が出来ているギリギリだ。二人の父親が渋い顔をするのも当然だった。
『生き残りがいれば助けたい気持ちはよく分かる。が、今現在ようやく秩序が成り立ち始めた頃合いに他者は受け入れがたい』
それがこのコロニーの総意でもあった。
二人とてそれは嫌というほど実感している。僕が来る前は共食いして生存していたのだから。多少環境が良くなりつつある今は着実に力を蓄えるべきだと。
だから、不用意に他者に近づくなと。厳命していた。下手に関わるとそいつがどう動くか予想できないからだ。
二人の父親は今後の動きを考えるため僕に会いに来たようだ。
居住区に同族らを集めて会議を行う。
「さて、ようやく共食いをせずとも生きていけるぐらいの環境が成り立ちつつある、が。ミソギ、我々の因果の戒めを断ち切るには何が必要か教えて欲しい」
僕に質問を振られる。
「条件の全てまでは分からないけど、それなら」
まずは自力で強くなることが必須。加えてどれほど同族らの力が高まっているのか、モンスターとどれほど戦えるのか、その総人数はどれほどのものか、他にも文明のレベル、装備や生活道具などの充実、生活環境の向上、等々
「具体的にはここのモンスターを自力で倒せる者が最低1名必要だね。それぞれの種族で」
「それは族姫らに任せればよいかな」
「武器の材料が乏しいですからね」
どんな相手とでも互角になれる僕の能力ならともかくここにいる者達では自力討伐は難関だ。もうしばらく鍛錬が必要だろう。装備は良くて骨のこん棒程度だ。僕の装備次第ではどうにかなるかもしれないことは伏せておく。
「今現在の所非戦闘員扱いですが時期が来れば戦闘にも参加させます」
「大まかな方針はそれでいいとして、次の問題は食料だな」
この場所のモンスターはどういうわけか栄養豊富で巨体が多い。一体狩れば結構な人数分食わせることが出来るが保存食を作るとなると環境が厳しい。
野菜の収穫も安定してきているが人手が足りない問題がある。区画にはまだ空きはあるが無駄に労力が増えて満足に収穫できないだろうし腐ってしまう。
「同族を受け入れるにしても居住スペースが足りませんし食べ物だってまだまだ足りません」
「迂闊に受け入れれば共倒れという訳か」
「今回は大物だったので当面は生活区域の拡張を進めたいと思います」
その後なんやかんやと話し合うが結論としてはまだ同胞を受け入れる準備が整ってないことが全員一致であった。
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