14 / 16
14
しおりを挟む「はぁー、疲れた」
ガバッと机に顔を伏せる。今は昼休み。
朝、あれから荷物をまとめると、バイクでいったん時雨の家に行き荷物を置いて、学校に送ってもらった。朝、ケンさんに本当にいいのかを聞こうとしたが、「ほらほら、学校に間に合わないぞ。また後でな」とにっこり笑って追い出された。
それから時雨のバイクに乗って、チャイムと同時に学校についたのだった。
お昼かぁ……お腹空いてないんだよな……ってか、今朝のことが気になってそれどころじゃない。
それは『コイアイ』のストーリーのことだ。
俺と時雨が一緒に住むなんて話あったか?俺はモブ扱いでゲームには出てこなかったはず……。なのに時雨の側にいていいのか?このままだと時雨とのハッピーエンドルートで終わらないんじゃ……。主人公が時雨を選ばなかった時はどうなるんだっけ?思い出せない……。
急に不安になり、胃がキリキリと痛む。
痛い……。
「瀬名垣さん、どこか悪いんッスか?」
聞きなれない声に顔を上げると、クラスメイトの不良君に敬語もどきで話しかけられた。名前は……知らない。
「えっと……ごめん。誰だっけ?」
「あっ、俺、『クレナイ』の馬場芽乃(ばばめの)っていいます」
「『クレナイ』……あー、もしかして時雨に頼まれたりした?」
「いいえ!あの、俺、この間、『SEA』いて、瀬名垣さんを見て……」
「え"っ……あそこに……!!」
この間の時雨とのやり取りを思い出す。膝にのせられたよな……それを見られて……。
うわぁ!クラスメイトに見られていたなんて、恥ずかしすぎるわ!!
両手で顔を覆ってバタバタと両足を動かしている俺に馬場君は慌ててフォローしてくれた。
「大丈夫っす!皆、総長の豹変にビックリして、瀬名垣さんの印象それほど残ってないッス!だから大丈夫ッス。きっと、皆も覚えてないッスよ!可愛いくてエロっぽかったとか……きっと……たぶん……」
馬場君の目がめっちゃ泳いでいた。バッチリ覚えてるやん!
「うがぁぁぁ!!」
「……すみません、瀬名垣さん」
「……いや、フォローありがと。あー、馬場君、俺のことはミツとかミツルでいいよ」
「えっ、いやーそれは……」
「だめ?」
首を傾げ馬場君の目をじっと見つめると、うっと顔を赤くさせ、手の甲で口許を隠した。
えっ、俺、平凡だよ。赤くなる意味がわからない……あっ、もしかして、あの時の時雨の破廉恥なことを思い出した?きっとそうだ。ごめんよ、馬場君!時雨は歩く18禁なんだ!どうしようもないんだよ!と心の中で思いながらも、自分の意思は曲げない。
「馬場君、俺もメノって呼ぶから、ミツって呼んで?」
「……じゃぁ、ミツさんで」
「えー、じゃぁ俺もメノさんて呼ぶよ」
「うっ、あー……ミツ」
めっちゃ顔を赤くするメノ。かわいいな!
話してみるとメノはメッチャいい奴だった。
金髪でピアスや指輪をじゃらじゃらと着けた、見たまんまの不良君だけど、気配りが出来る超いい子。
寒くないッスか?から始まり、俺が話さなくても何かと笑顔で話題を振ってくれる。なので、心地いい。
さらに、俺が昼御飯は購買とか食堂にいくのが面倒だから、いつもカロリーの名のついたお菓子だと知ると、「それじゃぁ、体に悪いッス!」と自分のお昼ご飯であろう、パンやおにぎりを分けてくれた。4個ほど。メノの前にも4個ある……あれ?合計8個?多くないか?
「いつもそのぐらい食べてるの?」
「昼に4個食べて、残りはおやつッス!」
にへっと笑って返ってきた。
喧嘩するからお腹すくんだね、きっと。うんうん。
さて、現実に戻ろう。お昼ごはんをもらったのはいいのだが、こんなには食べれない。
「えっと、多いからおにぎりを一つもらうよ。お礼にこれ食べて」
「ありがとうッス!」
カロリーのお菓子を渡すとメノは嬉しそうに食べ始めた。
「……」
メノが笑った時、八重歯がチラリと見え、耳と尻尾が見えた。ヤバ、ワンコみたいでかわいい。
41
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う
らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。
唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。
そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。
いったいどうなる!?
[強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。
※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。
※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。
ヒモ幼馴染を更生します
幸姫
BL
顔だけは良い幼馴染の蓮(レン)と何もかも平凡で仕事の為だけに生きる遙(ハル)
蓮が何人もの女を連れ込んでるのも、お金を欲しがる時は大体女の為だってことも全部知ってた。だけどどうしても蓮に縋ってしまう。
だがある日、遙が蓮と離れる決意が強くなって____
蓮と離れた遙はどうなるのか。
遙と離れた蓮はどう思ったのか。
周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)
ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに
ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子
天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。
可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている
天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。
水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。
イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする
好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた
自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い
そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語
なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!
柑橘
BL
王道詰め合わせ。
ジャンルをお確かめの上お進み下さい。
7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです!
※目線が度々変わります。
※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。
※火曜日20:00
金曜日19:00
日曜日17:00更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる