上 下
78 / 111

77

しおりを挟む


部屋に戻ると外から赤や緑、青や白などの明かりが見え、不思議に思い窓を開ける。どうやら川沿いで騎士灯をやっているみたいだ。

「綺麗……一人で行ってみようかな。でも、クロが戻ってくるかもだし……」

よし、ちょっと待って戻ってこなかったら、出掛けよう。
俺は部屋の明かりをつけ、インベントリから魔法本を取り出して読み始めた。
しばらく集中して読んでいると、ゆらりと魔力の歪みを感じた。クロが帰ってきたのかと歪みの方に顔を向けると、懐かしい顔ぶれが現れた。

『よう、ジン様』

『ジン、久しぶり』

「ガイ!ドイ!」

ニヤッと笑っている赤色の短髪と瞳の青年と優しく笑っている茶色の長髪と瞳をした青年が現れた。
赤色が火の精霊王のガイで、茶色が土の精霊王のドイ。ちなみに契約できなかったが、シロ同様お願いされたので、俺が仮の名を付けました。
嬉しくて抱き付こうと立ち上がった俺の前に、2人はふわりと降りると、片膝をつき俺の手を取るなり、指先にキスをした。

『『主に呼ばれて恐悦至極』』

「コレ絶対クロの仕業だよね!あと、俺、2人の主じゃないからやめて」

俺がそう言うと、2人はお互いに顔を会わせて頷いた。

『『御意』』

「ガイー、ドイー」

俺が軽く怒っていると、ガイが俺の左手を掴み、ドイが俺の前に立った。
なんだろうと首を傾げていると、2人が優しく笑う。

『ジンに火の加護を』

『ジンに土の加護を』

チュッと左の甲にガイから、鼻の頭にドイから、キスをされ、ふわりと暖かい何かが全身を包み込む。俺の魔力とガイとドイの力が混ざり合い一つになっていくのを感じた。

『これでジン様は俺達の主だな』

『ジンは主』

『これで文句は言わせねぇ』

なんでもないように笑いながら言っているが、精霊王は滅多に契約はしないことを知っている。

「ガイ、ドイ、こんな簡単に契約してもいいの?」

悩ましげに2人を見ていると、ぎゅっと2人に抱き締められた。

『俺は前々からジン様一筋だからな』

『俺もジンだけ。だから気にしないでいい』

ふわりと2人の魔力を感じたかと思うと、すーっと魔力が出ていくのを感じ、胸にあったモヤモヤがスーと消えた。
あれ?なんだか軽くなった気がする……。
不思議に思っているとガイがぐしゃぐしゃと頭を撫でながら微笑んだ。

『頑張ったな』

「?」

『モヤモヤがスッキリしたんじゃないか?』

「どうしてわかるの!」

『それにはちゃんとした理由がある。聞く?』

ドイはそう言いながら、ぐしゃぐしゃになった俺の髪を優しく手ぐしで整える。

「ん、お願いします」





俺はベッドに腰掛けると、俺を真似してか、ガイは机の上、ドイは椅子に座った。

『ジン様、どうやって魔王化になるか知ってるか?』

「うん、魔王レベル99の後に闇落ちしたらなるってクロから聞いた」

うんうんと頷くガイの横にいたドイが優しく問う。

『じゃあ、闇落ちはどうやってなるか、知ってる?』

「えっ、うーん、人間の【負の感情】がいっぱいたまってなるから?」

『ほしいな。【負の感情】と【闇魔力】が混ざったものが人間の器から溢れて、闇落ちになるんだ』

「器?」

『ダンジョンの中にあっただろ?あの黒い固まりを器と思えばいい』

「なるほど」

『人間は【負の感情】と【闇魔力】を溜める器を持っていて、それらは、一度体に取り込むと中々消えない』

『特に【闇魔力】はな、【不純魔力】の集まりで出来ているから……』

「ちょっと待って、【不純魔力】ってなに?」

『あー、そうだなぁ……人間が生成した魔力を【純粋魔力】、その【純粋魔力】を魔物に当てることで【不純魔力】へと変化する。
その【不純魔力】が集まって混ざりあったのが【闇魔力】だ』

そういえば、似たようなことをクロがダンジョンでいってた気がする。

「じゃあ、闇落ちは、人間の【負の感情】と【不純魔力】が集まって混ざりあってできた【闇魔力】が、器から溢れ出したせいってこと?」

『そうなるな』

ということは、闇落ちを防ぐには、その2つを消すか減らせばいいということだ。

「それを消したり、減したりする方法はあるの?あのダンジョンの黒い固まりのように光魔法を使えば減らせる?」

期待しながらドイとガイを見ると、2人は申し訳なさそうな表情で首を振った。

『ジン、それは、できない』

「どうして?」

『人間だからだ』

















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚式をやり直したい辺境伯

C t R
恋愛
若き辺境伯カークは新妻に言い放った。 「――お前を愛する事は無いぞ」 帝国北西の辺境地、通称「世界の果て」に隣国の貴族家から花嫁がやって来た。 誰からも期待されていなかった花嫁ラルカは、美貌と知性を兼ね備える活発で明るい女性だった。 予想を裏切るハイスペックな花嫁を得た事を辺境の人々は歓び、彼女を歓迎する。 ラルカを放置し続けていたカークもまた、彼女を知るようになる。 彼女への仕打ちを後悔したカークは、やり直しに努める――――のだが。 ※シリアスなラブコメ ■作品転載、盗作、明らかな設定の類似・盗用、オマージュ、全て禁止致します。

悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ
BL
生前、社畜だったおれの部屋に入り浸り、男のおれに乙女ゲームの素晴らしさを延々と語り、仮眠をしたいおれに見せ続けてきた妹がいた 人間、毎日毎日見せられたら嫌でも内容もキャラクターも覚えるんだよ そう、例えば…今、おれの目の前にいる赤い髪の美少女…この子がこのゲームの悪役令嬢となる存在…その幼少期の姿だ そしておれは…文字としてチラッと出た悪役令嬢の行いの果に一家諸共断罪された兄 ナレーションに 『悪役令嬢の兄もまた死に絶えました』 その一言で説明を片付けられ、それしか登場しない存在…そんな悪役令嬢の兄に転生してしまったのだ 社畜に優しくない転生先でおれはどう生きていくのだろう 腹黒?攻略対象×悪役令嬢の兄 暫くはほのぼのします 最終的には固定カプになります

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

転生先がハードモードで笑ってます。

夏里黒絵
BL
周りに劣等感を抱く春乃は事故に会いテンプレな転生を果たす。 目を開けると転生と言えばいかにも!な、剣と魔法の世界に飛ばされていた。とりあえず容姿を確認しようと鏡を見て絶句、丸々と肉ずいたその幼体。白豚と言われても否定できないほど醜い姿だった。それに横腹を始めとした全身が痛い、痣だらけなのだ。その痣を見て幼体の7年間の記憶が蘇ってきた。どうやら公爵家の横暴訳アリ白豚令息に転生したようだ。 人間として底辺なリンシャに強い精神的ショックを受け、春乃改めリンシャ アルマディカは引きこもりになってしまう。 しかしとあるきっかけで前世の思い出せていなかった記憶を思い出し、ここはBLゲームの世界で自分は主人公を虐める言わば悪役令息だと思い出し、ストーリーを終わらせれば望み薄だが元の世界に戻れる可能性を感じ動き出す。しかし動くのが遅かったようで… 色々と無自覚な主人公が、最悪な悪役令息として(いるつもりで)ストーリーのエンディングを目指すも、気づくのが遅く、手遅れだったので思うようにストーリーが進まないお話。 R15は保険です。不定期更新。小説なんて書くの初めてな作者の行き当たりばったりなご都合主義ストーリーになりそうです。

伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。 実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので! おじいちゃんと孫じゃないよ!

もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人と、騎士見習の少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。

天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん
BL
享年59歳、ハッピーエンドで人生の幕を閉じた大樹は、生前の善行から神様の幹部候補に選ばれたがそれを断りあの世に行く事を望んだ。 しかし自分の人生を変えてくれた「アルバード英雄記」がこれから起こる未来を綴った予言書であった事を知り、その本の主人公である呪われた英雄<レオンハルト>を助けたいと望むも、運命を変えることはできないときっぱり告げられてしまう。 しかしそれでも自分なりのハッピーエンドを目指すと誓い転生ーーーしかし平凡の代名詞である大樹が転生したのは平凡な平民ではなく・・? 少年マンガとBLの半々の作品が読みたくてコツコツ書いていたら物凄い量になってしまったため投稿してみることにしました。 (後に)美形の英雄 ✕ (中身おじいちゃん)平凡、攻ヤンデレ注意です。 文章を書くことに関して素人ですので、変な言い回しや文章はソッと目を滑らして頂けると幸いです。 また歴史的な知識や出てくる施設などの設定も作者の無知ゆえの全てファンタジーのものだと思って下さい。

処理中です...