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「まぁ、座れ」とアークに言われ、お互いソファーに座る。そして、アークが懐から小さな箱にボタンがついたものを取り出し、スイッチを押した。

「それ、何?」

「遮音円蓋だ。名の通り音を遮る」

へー、以前はもっと大きかったのに小さくなったんだな。持ち運びがよさそうだ。俺も欲しい。
ツンツンと遮音円蓋をつついているとアークが俺の手を掴み、手の平にクッキーを乗せてくれた。
あっ、これ俺の好きなやつ。
口に入れ、ありがとうと伝えると、いっぱいあるから食えと袋ごと渡された。うまし。

「ジン、昨日、属性のことを教えてくれただろ」

「んっ、属性の事……あぁ、俺の?」

「あぁ、そうだ。全属性だと言ってたな。無属性もか?」

「うん」

「そ、うか……」

数秒の沈黙後、アークは意を決したように、真面目な表情で俺を見つめた。

「単刀直入に聞く。ジンは、異世界人か?」

「っ!」

なぜバレた!ステータスは他人には見れないはずなのに……。

「……どう、して、わかったの?」

「この世界の人間は、今まで全属性と無属性の両方持っているやつは一人もいない。過去に持っていた人間はいたが、皆、異世界人だった」

「そう、なんだ。過去にも異世界人が……」

でも、どうやって来たんだ?もしかして、俺と同じ召喚?

「過去に異世界人が、こちらに来る事が出来たのは、召喚魔法だけだが……ジンも、か?」

「うん、俺も」

アークはそれを聞いて、深いため息後、頭を抱えた。

「召喚された者は……もう自分の世界には戻れない。過去の例を見ても……」

アークはハッと何かに気付き顔を上げ、俺の顔を見た。目が合ったので首を傾げてみる。
するとアークは、眉間に皺を寄せ、頭を深くし謝った。

「ジン、本当にすまん。謝って済むことじゃないとわかっている。でも、安心してくれ。衣食住は俺が保証する。ジンには絶対苦労はさせない。やりたいこと、ほしいものがあれば遠慮なく言ってくれ」

「えーっと、うん、まずは顔を上げてほしい」

ゆっくりと顔を上げたアークは本当に申し訳なさそうな顔をしていた。

「アークが謝ることはないよ。悪いのは召喚した奴らだから。それに、俺、あの世界に未練ないから気にしないで。衣食住も、今のままで十分だよ。俺、自分で稼げるし」

「だが、ご両親の……」

「いいの。この話は終わり。ほら、まだ言いたいことがあるんでしょ?」

アークは諦めたように溜め息をつくとまた話し始めた。

「……過去の例を見ても、帰ったやつは一人もいない」

やっぱりな。ガイヤの宰相が言っていた、魔王を倒すまで帰れないは、嘘だったんだな。まぁ、俺としてはよかった。また、巻き込まれてあの世界に帰るのは勘弁だからね。

「召喚は拉致とかわらない。犯罪だ。人ひとりの人生を狂わせるんだ。だから、召喚は禁断魔法となった。……ジン、どこの誰に召喚された?」

真っ直ぐ俺の目を見つめてくるアークに、これは嘘はつけないな、と思った。

「……隣の国、ガイヤードルだよ」

「また、あいつらか!!」

ガンと怒りに満ちた目でソファーの持ち手を叩く。

「……何か、あったの?」

「あぁ、色々とやらかしている国だ。で、何て言って召喚されたんだ?それに、ジンはどうしてこの国にいる?」

やっぱ、気になるよね……どうしようか……ベル達精霊の話はやめた方がいいよね。なんだか嫌な予感しかしない。前世の時、ベル達が『愛し子だと人間に言わない方がいい。過去に愛し子だと言ったやつが捕まえられてひどい目にあっている』と、教えてくれた。いくらアークでもこれは秘密にした方がいい。アークの事だから、守る!といってくれるだろうけど、絶対アークの負担になる。それは嫌だ。
ぐっと唇を噛み締めた後、深呼吸をし心を落ち着かせた。

「……俺の他に、4人召喚されたんだけど……」

「4人もか!」

「ん、学校のクラスメイトなんだけど、その4人が勇者召喚されたみたいなんだ。で、偉い人から、魔王を倒して平和な世界にしたいから力を貸してほしいって言われてた」

「魔王?魔王なんていないんだが……」

困惑するアークにやっぱりなと呟く。
やっぱり魔王なんていないよね。でも、俺のステータスに魔王の卵と……。あれ?これ、俺が倒されちゃうパターン?フラグ?違うよね!うん、違う。
ちょっと悶々していると、アークがふと気付く。

「ん?ちょっと待て、4人が勇者?なら、ジンは……」

「あー、俺は近くにいたから、巻き込まれたみたいで、いらないからって魔法で森に飛ばされた」

「はぁ?あいつらはふざけてんのか!森に飛ばされたって、ジンは大丈夫だったのか?」

「ん、何とか。『他弾転移』で飛ばされて焦ったけど」

「他弾転移!結界は!」

「なかったよ」

「なんと言うことだ!あれは人を飛ばす時は必ず結界をしなければならないと、諸国魔禁止法で決めたはず……それを……」
※諸国魔禁止法→国同士で決めた魔法の禁止法律。

アークはワナワナと震え怒っている。
うわぁ……マジ怖。












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