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しおりを挟む「『風刃』」
ブンっと音と共に風が魔物を切りつけた後、かろうじで立っている敵に、槍を素早く振るう。魔物はグギャァァァと悲鳴をあげその場に倒れると光となり徐々に消えていった。
「ふぅー」
辺りに散らばった赤と黒の魔石を拾いインベントリへ。これでどのくらい倒しただろうか……。ベルの泉を出てかれこれ3時間ぐらいだ。そろそろ着いてもいいころだが。
辺りを見渡しながら歩いていると懐かしい外壁が見えてきた。
「あっ……」
高くそびえ立つ青い外壁に、胸がドキッと高鳴る。前世の頃よく見た光景だ。
変わってない。いや、ちょっと壁の高さが変わってる気がする。それに所々新しくなってる。
懐かしさにキョロキョロと辺りを見ている間に門の前についた。門には若い奴と、30代ぐらいの門番さんがいた。
30代ぐらいの門番さんと目が合うとフレンドリーに話しかけられた。
「よう、坊主。はじめてみる顔だな。身分証持ってるか?」
「身分証?」
首を傾げていると、見本を見せてくれた。
へー、今はこんなものがあるのか。昔は身分証なんていらなかったのに……。うーん、どうしよう。
困っていた俺に、「どうした?」と優しく笑う門番さん。
「えっと……身分証、持ってないんです。持ってないと入れませんよね?」
しょぼんとする。ここ重要。
俺のしょぼんとした表情に、門番さんは優しく頭を撫でてくれた。
「大丈夫だ。だがな、入る為には身分証の仮発行しなきゃならねんだ。3ギウペル持ってるか?」
この世界のお金である『ペル』は前の世界に例えるなら円だ、。そして、『ラグ』が千万、『ルウ』が万、『ギウ』が千、『ドウ』が百、『リー』が十、『シー』が一になる。
3ギウペル、つまり3000円となる。この世界だと、だいたい10回分の食事代ぐらいだ。
普通の買い物は、だいたい『ルウ』で事足りている。
ちなみに『ラグ』、つまり千万以上の『ペル』はあるが一般人はめったに使わないので省略させていただく。
3ギウベルなら前世の時のお金があるから問題はない。
「持ってます。はい、3ギウペルです」
「おぅ、確かに。じゃぁ、ここに名前、年齢、来た目的を書いてくれ」
名前はジン、16歳。目的は冒険ギルド登録の為でいいか。
必要事項を書き渡すと、それを門番さんがチェックし頷くと、ほいと番号が書いてあるカードを渡された。
「これが仮身分証だ。後で冒険者のギルドカードを持って来ればお金が戻ってくるからな、忘れるなよ」
「はい」
「いい返事だ」
門番さんがぐしゃぐしゃと頭を撫でた後、にっと笑いながら背筋を伸ばし左腕を大きく横に伸ばした。
「ようこそ、バクスへ」
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