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第二部 魔獣襲来イベント
Episode31.お友だちができましたわ①
しおりを挟む「真剣に外を眺めてるね。セロース嬢とその弟君の様子を見るっていう話に、僕が暗黒竜の捜索再開をちゃっかり相乗りさせたように、ローフェン地方に蔓延ってる魔獣を見るっていう目的のためだったりするの?」
「目的というか、ただ単に興味がありまして」
「魔獣に興味を持つなんて珍しいと思うよ。特に貴族令嬢はね」
「そうでしょうか? 最近は魔獣の報告も増えてきていますし、新聞で魔獣騒ぎにもなってますから興味も湧くのでは?」
「少なくとも僕の周りじゃ貴族令嬢は無関心だったかな。まあ、女性が騎士になることもほとんどないし、魔獣は瘴気を持っている忌々しい生命体だから、汚いものは蓋をして見ないようにする、みたいな?」
「確かに、それはあるかもしれませんね」
社交界の貴族令嬢にとって、噂話や世間話、どこそこの貴族のご令嬢がどこそこの令息と結婚した、婚約した、という話が多い。もちろん経済の話を好んでする令嬢もいるだろう。
だが、魔獣の話を好んでする者はいない。
魔獣と戦っているのは騎士団の人々であり、領内の魔獣騒動でなければ自分たちには関係ないと貫くかもしれない。
「魔獣は山や森から町に降りてくるって思われがちだけど、こういう何もないだだっ広い街道にも、魔獣の軍勢がいることもある。魔獣が長年居ついた不浄地は新しい魔獣を産んだりするから、君のように目を光らせておいて損はない」
「オルフェン様も、それを警戒してわたくしをこちらの馬車に乗せたのでしょう? ニーナ達が寂しがってますわね、きっと」
後方を走る馬車にいるであろう侍女ニーナに思いを馳せる。
ロサミリスは最初、ラティアーノ家の馬車に乗ろうとしていた。だけれど、オルフェンは頑なにそれを断り、シェルアリノ家の馬車に乗せたのだ。伯爵家にも数人の護衛を侍らせているというのに。
「ここは我が騎士公爵家の領地だ。見かけ上とはいえ、領内を案内している最中に魔獣にでも襲われて、未来のロンディニア公爵夫人に、もしものことがあれば大変だしね。同じ馬車なら守る事も出来る」
「ローフェン地方は最も魔獣の報告例が多かった地域ですものね」
「うん。前にも言ったように、騎士団は暗黒竜を探したけど、それよりも弱くて数の多い魔獣が各地に出現するようになってね、捜索は打ち切りになったんだ」
「液状魔獣ですね。関連する報告書は一通り目を通しました」
ルークスが暗黒竜に襲われたのは、1年前。
液状魔獣などが急増し始めたのと同時期だ。
騎士団は、危険だがいつどこで現れるA級魔獣よりも、数が多く農作物に被害の大きい液状魔獣の駆除を優先した。
そのため、今でも暗黒竜の住処は特定できていない。
「ルークス君が襲われた場所は分かりますよね?」
「そりゃもちろん、今回の捜索でメインに調査する場所だからね。──ルークス少年が魔獣に襲われたのは滝のすぐそば。ほら、ちょうどあの山だよ。あの奥深くに滝があるんだ」
「あそこの奥地で……」
雄々しくそびえる山脈。
その中でも、ひときわ大きい山が一つある。
奥地に滝があり、そこに暗黒竜がいたという。
(確かに。あの山一個分から魔獣の住処を探すのは大変ね。いえ、魔獣の行動範囲を考えれば隣の山から移動してきた可能性だってあるわ。騎士団が捜索を打ち切る必要になった理由も頷けるわね)
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