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第三話

16 続々乱入

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なんだか勝手にヒートアップしているけど。
 可哀想なのがこの件に全く関係ないのに、表彰式に割り込まれたせいで、巻き込まれる形で囲まれた三位君と、木村君代理だ。
 木村君代理は女子の集団が怖いのか、小さく縮こまってプルプルしているけど。

「あー、木村だからなぁ……」

三位くんが、そう漏らす声が聞こえた。
 うん? 木村君のなにに納得なのかね?
 って、これはアレか?

「ねえねえ、もしかして木村君って姫様ファンだったりする?」

私がヒソッと聞くと、「有名だぞ」と三位君に肯定された。
 なるほど、色々と腑に落ちたわ。
 木村君が演説で言ってた「あの方」って、姫様のことだったのか。
 それに好き勝手に云々というのも、姫様とのトラブルについてだろう。
 要するに、姫様に従わなかった私が、姫様ファンとしては許せないと。
 にしてもさ、さっきのって私のせいなの?
 木村君の倒れ方が下手くそだったんじゃなくて?
 それに目を覚まさないって、連れて行かれた時は意識があったみたいだけど?
 ……あ、もしかして。

「もしかして木村くんを揺すりました?
 そんなことをしたら症状が悪化するだけですよ?」

私が冷静に言い返すと、姫様は「なにを言っているの?」という顔になる。
 おい姫様よ、救護係を買って出たんだよね?
 頭を打った人の対処法の基本くらい、知っとこうよ!
 そして、囲んでいるのが姫様が主体で大人がいないのが、嫌な予感がする。

「あの、木村君は保健室に運ばれて、先生に診てもらえたんですよね?」

「何故そのような無駄な行為をする必要があるの?
 こちらでやると言って、身柄を渡してもらいました。
 薬と包帯を出すのがせいぜいの役立たずより、姫の治癒の方がいいに決まっているでしょう」

決まっているでしょうって、決まってないよ!?
 治癒の能力ってどういうものがわたしには分からないけど、多少はそういう医療の知識が必要なんじゃないの?
 木村君の例で考えるに、姫様の力は例えるなら、仕組みはよくわからないけど風邪が治ることだけは確かな、市販の風邪薬のようなものだろうか。
 軽い症状だとこれでいいかと思うけど、重めの病気になったらちゃんと病院に行って、医者に診てもらいたい、みたいな。
 医療の勉強をしている保健の先生と、治癒の能力者ではあるものの、医療の素人の姫様、どっちが安心できるのよ?
 そして姫様は、さっきの私の質問を否定しなかったけど、さては木村君を揺すったな?
 私がちらっと視線を巡らせると、万智先輩が人を走らせている。
 木村君を助けに行ったんだといいけど。

「安城、よそ見をするとは無礼な!」

ツンケン女子さんが時代劇みたいな言いがかりをつけてくる。

「ねえ安城君、話をそらそうとしないでよ。
 ひどいじゃない、可哀想よ!
 まずは謝って?」

そして、姫様はウルウルお目目でジィーッと見てきた。
 なんだ? ムズムズするんだけど?

「なんで?
 木村君からケンカを売ってきて、返り討ちにされたら可哀想って、その論理おかしいでしょう?
 それにもし謝るにしても、その相手はアナタじゃないし」

言い返した私に、姫様が目を見開く。

「……まただ、なんで?」

姫様が小さく漏らした、その時。

「うるっせぇなぁ、どいつもこいつも!」

怒鳴り声がギャラリーから響いた。そして飛び出してきたのは、鴻上先輩だった。
 鴻上先輩って、こういうゲームに興味あったんだぁ。
 なんか、「ダリぃのに付き合えっかよ!」とか言って、寮の部屋で寝ているかと、勝手にイメージしてた。

「ガタガタぬかしやがって、要はテメェらはあれか?
 ソイツが得体が知れねぇからビビるって話か?」

「誰がビビるなどと……!
 能力で決着をつけられない輩を、持ち上げるのはいかがなものかと言っているのよ!」」

鴻上先輩のセリフに、ツンケン女子さんが顔を赤くして反論する。

「ハン! だったら、コイツが能力で勝ったってわかればいいんだろう?
 それをこの俺が、ハッキリさせてやろうじゃねぇか!
 どうやら木村程度じゃあ話にならなかったみてぇだしなぁ!」

「おっと、鴻上から対戦のお誘いだ!
 安城君は受けるのかな?」

会長がノリノリでアナウンスしているけど。
 え、これって鉢巻取りゲームだったよね?
 いつからなんちゃら武闘会みたいな流れになったの?
 そして「受けるのかな?」って、会場はもう対戦ムードなんですけど?
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