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第三話

13 めんどいから腕力で解決

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確かに、勝ち残った生徒はスマホである程度の情報は流れていたけど、誰がどんなふうに活躍したかは、詳しくはモニターを見ていないとわからない。
 それはゲームに参加していない先輩とか、早々に負けた生徒でないとできないわけ。
 最後まで残ったってことは、モニターの前で状況を把握していないってことで。
 勝ち残った席にいる生徒たちは、私と神高が最後まで残った、という情報しか知らないのだ。
 私は「そりゃそうか」と納得したんだけど、ひそめているわけでもないその声は、当然例の男子にも聞こえるわけで。

「馬鹿にしてんのか!?」

その男子が顔を赤くして立ち上がる。

「おい、やめとけって!」

後ろにいた彼の友達らしき生徒が止めようとしているけど、それが余計にムキにさせているというか。
 彼は否定や反対をされる程、ムキになる性格のようだ。

「どうせこの『無能』野郎は自分はなにもしないで、神高にさせたってことだろうが!?
 コイツがそんな犬みたいなヤツだったなんて、見損なったぜ!」

うむ、私だけじゃなくて、神高までディスっているけど。
 神高は無反応。
 この場の収集がつかなくなっていると。

「君は結果が二位だね、その結果が不満だと」

ほうほう、文句ありありな彼は二位だったのか。
 なるほど、自分こそ一位だと自信満々だったんで、余計に腹を立てているんだな。
 っていうか、彼と私との間に挟まれている生徒が、すごく迷惑そうにしているんだけど。
 彼、気付いていないっぽいな。
 わたしがそんな風に余計なことに気をとられていると。

「じゃあ、君と安城君とで、決定戦でもするかい?」

なんと、会長がビックリ発言をした。
 会長の意見に、講堂内が沸いた。

「おいおい、会長本気か!?」

「こりゃあ見ものだ!」

盛り上がる周囲の一方で、彼はこちらをギロッと睨む。

「またどうせ、神高が出張るんだろう?」

「無駄な事に割く労力はありませんね」

神高はというと、やる気なし発言である。
 これは、私が助力を必要としていないのと、そもそもそれは自分の役目の範疇外だというのと、果たしてどちらの意味なのか?
 ……どっちもな気がするけど、後者の方が強いかも。
 というか、神高って最初からそう言うスタンスだし。
 学園長から頼まれたからお守はするけど、それ以外だとノータッチ。
 今回の移動を手伝ってくれたのも、それもゲームのためとかよりも、「一か所でじっとしていると絡まれて面倒臭そう」という事情の方があり得ると見た。
 そう、神高は決して滅私奉公なボディーガードではないのである。
 とにかく、神高が自分から手を出さないと発言したことで、相手の彼は「いよっしゃあ!」と雄たけびを上げた。

「俺ぁこういう、強ぇヤツの陰でコソコソ好き勝手しているのが、大っ嫌いなんだよ!」

そして私を見てビシッと指さしてくる。
 あれぇ? 私ってばそんなに好き勝手してる?
 まだ始まったばかりな学校生活は、いたって大人しいものだと思うけど。
 それとも、神高と常に一緒なのが、威圧感があるとか?
 それともガキ大将の系譜にありがちな、ケンカして上下関係をはっきりさせるという儀式が出来ずにいて、イライラしていたとかかも!
 ああいう連中って、序列があやふやなのがストレスみたいな、野生動物よりだからね。
 そういう不安払しょくなら、私だって協力もやぶさかではないよ!

「わかりました、ちょっとそこのところをはっきりさせておきましょうか」

私はすっごい笑顔で言った。
 こっちだってね、いい加減にしつこい弱い者扱いにうんざりしてたんだからね!
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