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第三話

2 今日から食堂解禁

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そうして部屋へ入ると、リビングでラフな私服姿の神高が新聞を読んでいた。彼は朝から新聞を読むのが習慣なのか。

「おはよう、神高」

私がとりあえず朝の挨拶をすると、神高が新聞から視線を外してこちらを見る。

「おはようございます。
 今日から朝食は食堂でいいと、常盤さんが言ってきました」

「あ、そうなの? わかった」

私がそう返事をすると、神高は新聞に視線を戻す。
 昨日の夕食までは、常盤さんが持ってきてくれて部屋で食べたんだよね。
 その時に私が徳倉君や松川君と仲良くなったという話をしたんで、案外私が馴染んでいるみたいだったから、食堂でもいいかという判断になったのかも。
 っていうか、神高ってもしかして私にメッセンジャーをするために、ここで待っていてくれたのかな?
 スマホに電話してくれればよかったのに、って電話番号教えてないか。
 後で伝えておこうっと。
 時間的には、やっと食堂が開いた頃か。
 混む前に食べに行った方がいいかな?
 散歩&ラジオ体操でお腹空いたし、食堂に行くか!

そんなわけで私が水筒を置いて部屋の鍵だけ持って、一応ボディガード的な神高と出ると、徳倉君と松川君とかち合った。

「あ、なになに、今日は食堂で食べるんだ?」

徳倉君が楽しそうに聞いてくる。

「はい、常盤さんからゴーサインが出まして」

「ならなら、一緒に食べようよ!」

というわけで二人も一緒に食堂へ向かう。
 食堂は既に生徒で込み合っていた。

「おい」

「あ、アイツ」

けど食堂に私たち、っていうか私が入った瞬間、一気に視線が集まってちょっと変な沈黙が流れる。
 けど、すぐにザワザワとした話し声が再開した。
 まあ新入りが珍しいのは仕方ないことで、こればっかりはお互いになれるしかないかな。
 とにかく外野は気にしないことにして、厨房から朝食を受け取ると四人で一緒のテーブルに着いた。
 寮の食堂って、なんと洋食と和食が選べるし、付け合わせが色々あるんだよ。
 すごいね、まるであれだ、テレビで見たホテルのビュッフェ。
 昨日常盤さんが持って来たのは、常盤さんチョイスのメニューだったようだ。

「うーん、朝から贅沢な気分……」

私はちょっとオシャレなホットサンドと、美味しそうな焼き鮭の和定食とで悩み、和定食を選んだ。
 昨日が朝夕と洋食だったんだよ。
 そして徳倉君と松川君と、ワイワイと話しながら食べる。
 やっぱり会話を弾ませながら食べるっていいもんだ。
 なにせ昨日の朝食と夕食は、全く会話が弾まない神高と二人ぼっちな食事会だったからね。
 こんな感じで朝は寮で穏やかに過ごせたんだけど。
 問題は、制服に着替えて登校してからだ。
 例によってボディガード神高と一緒の登校となったんだけど。

「おはようございまーす」

挨拶をしながら教室に入ると、男子はチラッと見てくるんだが、女子はガン無視体勢か、刺々しい視線を突き刺してくるかのどちらかだ。
 特に、昨日直接絡んできた女子グループは、私を「姫様」への謝罪に引っ張っていけなかったことが悔しいのか、まるで親の仇を見るかのような形相だ。
 ねえ、なんでそんなに嫌われているの? 私ってば。
 意味が分からない私に、神高が隣で囁く。

「大方、ペナルティでも科されたんでしょうよ。
 安城を私的裁判の場へ連れて行く役割を課されていたみたいですから」

ペナルティとか裁判とか、ちょっとなんなの女子寮って、怖いんですけど。
 私がキャッキャウフフ出来る女子はいずこ?
 思わず遠い目をしてしまう私だけど、そんな女子に敵認定された新入りと、好き好んで積極的コミュニケーションをとろうとする男子も、またいないわけで。
 まあわかるけどね、「君子危うきに近寄らず」ってやつだよね。
 うーん、教室の空気を悪くしている原因が自分って、なんかやるせないなぁ。
 そんな切ない気持ちで、朝のホームルームを待つ私なんだけど。

「てめぇら黙らないと話さんぞ」

そう言いながら入って来た担任は、今日もグラマーボディに黒スーツ姿だ。
 昨日は入学式だからスーツだったわけじゃないんだな。
 担任は神高と並んで座る私の方をチラッと見て、言い放った。

「来週金曜、一年全員でゲームをするぞ」
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