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第一話 いかにして私が「男子」になったのか
4 私、生まれた頃から女子ですが
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しかし常盤さんは私の驚きに対して、なんだかおかしな解釈をしたようだ。
「ああ、同室って言っても寝室は個室で、リビングとミニキッチン部分が共用になるだけだから」
二人部屋なことに文句を言っていると思われたらしく、慌ててそんなことを言ってきた。
なるほど、二人部屋でも寝室は一人部屋か。
一人部屋だなんて初体験だ。
家では男も女も子供たち全員一部屋で雑魚寝状態だったから、一人部屋は憧れでもあった。
それにリビングとキッチンもあるとか、まるで噂の2LDKみたいじゃないか。
ってそうじゃなくて!
「どうして男と同室なんですか!?」
私の抗議、なおも常盤さんは不思議そうにするばかり。
「だって、ここ男子寮だし。
あ! もしかして安城君ってそういう人?」
そういう人ってどういう人だ。
私がツッコミを入れようとした時。
「その件ですが、先ほど重大な問題が発生しました」
横から神高君の冷静な声が割って入った。
「なんだい、神高君?」
常盤さんが不思議そうに見つめるのに、神高君が告げる。
「安城君、いや、安城さんはおそらく女子です」
「は⁉」
常盤さんが目を見開き、驚きのあまりうっかり手元が疎かになって傾いたせいで、持っていたケーキが落ちかけていた。
せっかくのお土産が落ちて台無しになるのはもったいないので、私はサッとケーキをサルベージする。
「本当かい⁉ え、いつから⁉」
脳内がパニックなのか、常盤さんが変な質問をする。
「私、生まれた頃から女子ですが」
少なくとも、性転換をした覚えはないな。
「え、え、え? じゃあどういうこと?」
「どういうことでしょうね?」
常盤さんと二人して顔を見合わせた。
「どういう経緯かは知りませんが、安城さんは女子であるのは確認しました」
神高君がこれだと話が進まないと思ったのか、間に割って入る。
っていうか、確認ってなによ、どうやって?
私の心の中の疑問が聞こえたわけではないだろうが、彼はあっさりと答える。
「先程移動のため抱えた時に、微かにですが筋肉ではない胸の膨らがありました。それに骨格も男子にしては華奢ですし、他にも接触具合から考えると、ほぼ間違いないかと」
胸が微かで悪かったな、このやろう。
よく大胸筋と間違われるとも。
そして接触具合って、どこと接触して確信したんだこの野郎。
しかしこの神高君の説明を聞いた常盤さんが、顔色を青くした。
「じゃあ、じゃあ、大変だよ!」
この後急遽、私の入学審査の書類を調べられた。
そして来客用の部屋でかなり待たされ、夕食も食堂からここに運ばれてきたものをもそもそと食べ。
食後のお茶も飲み終えて、時刻は既に夜の九時を回っている現在。
「本当に、申し訳ない!」
常盤さんと一緒に、学園長だというおじさんがやって来て、九十度で頭を下げている。
そして何故私が男子とされてしまったのか、話してくれた。
それは、中学卒業間際だったある日のこと。
私は担任に呼び出され、誠心学園の関係者立ち合いの元でテストを受けた。
それは本来ならば、小学一年の終わり頃に受けるものらしい。
しかし私はそのテストの日、風邪をひいて休んでしまった。
そしてそのままテストを受けずにいたのだ。
けれど本来ならなんらかの事情でテストを受けることができなかった子供は、後日に振り替えて受ける決まりなのだという。
しかし私の学校はそんな決まりを知らなかった。
そしてド田舎ゆえに、再テストの指導も行き届かなかったのだろう。
しかし今年に私の弟が学校でそのテストを受けた際、「俺のねーちゃん受けたことねぇんだ」という雑談をしていたらしい。
その話をテストの監督に来た誠心学園関係者がたまたま聞きつけたようで、私が通う中学までテスト用紙を持ってやって来たというわけだ。
それは元々が小学生向けであるので、簡単な心理テストだった。
だから後日、あのテストが入試代わりだっと聞かされて、驚くと同時に脱力したものだ。
私の高校受験の勉強はなんだったのかと。
なにせ学校で習う五教科なんて関係ない、本当にただの心理テストだったのだから。
けれど後で聞いた話によると、テストの内容はあまり関係なかったらしい。
本当に知りたいのは、テストの内容をどう読み取れるのか、という点だったという。
どうやら能力者とそうでない人たちで、同じテスト用紙を配っても、問題が違って見えたようなのだ。
実際、同じテストを受けたはずの弟に聞くと、普通に学校で習う算数の問題だったと答えた。
だがそのテスト結果で私の誠心学園の入学が決まり、家族どころがご近所中が大出世だと喜び、あれよあれよとここまでやって来ることになったのだが。
短期間で決まった事ゆえに、問題が発生してしまう。
あの時の試験はあくまで小学生対象で、明日香のテストはイレギュラーだった。だから当然受験者資料に私の名前があったはずがなく、試験を行った学園関係者が急遽手書きで作成したらしい。
その際にどうやら、私のことを男子だと記入したらしいのだ。
「ああ、同室って言っても寝室は個室で、リビングとミニキッチン部分が共用になるだけだから」
二人部屋なことに文句を言っていると思われたらしく、慌ててそんなことを言ってきた。
なるほど、二人部屋でも寝室は一人部屋か。
一人部屋だなんて初体験だ。
家では男も女も子供たち全員一部屋で雑魚寝状態だったから、一人部屋は憧れでもあった。
それにリビングとキッチンもあるとか、まるで噂の2LDKみたいじゃないか。
ってそうじゃなくて!
「どうして男と同室なんですか!?」
私の抗議、なおも常盤さんは不思議そうにするばかり。
「だって、ここ男子寮だし。
あ! もしかして安城君ってそういう人?」
そういう人ってどういう人だ。
私がツッコミを入れようとした時。
「その件ですが、先ほど重大な問題が発生しました」
横から神高君の冷静な声が割って入った。
「なんだい、神高君?」
常盤さんが不思議そうに見つめるのに、神高君が告げる。
「安城君、いや、安城さんはおそらく女子です」
「は⁉」
常盤さんが目を見開き、驚きのあまりうっかり手元が疎かになって傾いたせいで、持っていたケーキが落ちかけていた。
せっかくのお土産が落ちて台無しになるのはもったいないので、私はサッとケーキをサルベージする。
「本当かい⁉ え、いつから⁉」
脳内がパニックなのか、常盤さんが変な質問をする。
「私、生まれた頃から女子ですが」
少なくとも、性転換をした覚えはないな。
「え、え、え? じゃあどういうこと?」
「どういうことでしょうね?」
常盤さんと二人して顔を見合わせた。
「どういう経緯かは知りませんが、安城さんは女子であるのは確認しました」
神高君がこれだと話が進まないと思ったのか、間に割って入る。
っていうか、確認ってなによ、どうやって?
私の心の中の疑問が聞こえたわけではないだろうが、彼はあっさりと答える。
「先程移動のため抱えた時に、微かにですが筋肉ではない胸の膨らがありました。それに骨格も男子にしては華奢ですし、他にも接触具合から考えると、ほぼ間違いないかと」
胸が微かで悪かったな、このやろう。
よく大胸筋と間違われるとも。
そして接触具合って、どこと接触して確信したんだこの野郎。
しかしこの神高君の説明を聞いた常盤さんが、顔色を青くした。
「じゃあ、じゃあ、大変だよ!」
この後急遽、私の入学審査の書類を調べられた。
そして来客用の部屋でかなり待たされ、夕食も食堂からここに運ばれてきたものをもそもそと食べ。
食後のお茶も飲み終えて、時刻は既に夜の九時を回っている現在。
「本当に、申し訳ない!」
常盤さんと一緒に、学園長だというおじさんがやって来て、九十度で頭を下げている。
そして何故私が男子とされてしまったのか、話してくれた。
それは、中学卒業間際だったある日のこと。
私は担任に呼び出され、誠心学園の関係者立ち合いの元でテストを受けた。
それは本来ならば、小学一年の終わり頃に受けるものらしい。
しかし私はそのテストの日、風邪をひいて休んでしまった。
そしてそのままテストを受けずにいたのだ。
けれど本来ならなんらかの事情でテストを受けることができなかった子供は、後日に振り替えて受ける決まりなのだという。
しかし私の学校はそんな決まりを知らなかった。
そしてド田舎ゆえに、再テストの指導も行き届かなかったのだろう。
しかし今年に私の弟が学校でそのテストを受けた際、「俺のねーちゃん受けたことねぇんだ」という雑談をしていたらしい。
その話をテストの監督に来た誠心学園関係者がたまたま聞きつけたようで、私が通う中学までテスト用紙を持ってやって来たというわけだ。
それは元々が小学生向けであるので、簡単な心理テストだった。
だから後日、あのテストが入試代わりだっと聞かされて、驚くと同時に脱力したものだ。
私の高校受験の勉強はなんだったのかと。
なにせ学校で習う五教科なんて関係ない、本当にただの心理テストだったのだから。
けれど後で聞いた話によると、テストの内容はあまり関係なかったらしい。
本当に知りたいのは、テストの内容をどう読み取れるのか、という点だったという。
どうやら能力者とそうでない人たちで、同じテスト用紙を配っても、問題が違って見えたようなのだ。
実際、同じテストを受けたはずの弟に聞くと、普通に学校で習う算数の問題だったと答えた。
だがそのテスト結果で私の誠心学園の入学が決まり、家族どころがご近所中が大出世だと喜び、あれよあれよとここまでやって来ることになったのだが。
短期間で決まった事ゆえに、問題が発生してしまう。
あの時の試験はあくまで小学生対象で、明日香のテストはイレギュラーだった。だから当然受験者資料に私の名前があったはずがなく、試験を行った学園関係者が急遽手書きで作成したらしい。
その際にどうやら、私のことを男子だと記入したらしいのだ。
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