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第7話 空気ヤバくない?

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 分かっている事 〈更新〉〈追加〉

 その①
 高校に移動しているだけではなく、別の世界に来てしまったようだ。

 その④
 ここにいる人たちは全員が美男美女で、髪型や顔立ちが派手な者がいる。
 そもそも、不細工といった言葉が存在しないらしい。

 その⑩
 担任で国語担当のセクシー教師は久三長というらしく、彼女も美人の部類らしい。(海利からみて)


「よし、じゃあ帰るか。あんた家分かんないだろうし、送ってくぜ」

「マジ?助かるよ!」

 話がとりあえず落ち着いたので、ひとまず帰ろうと俺たちはベンチから立ち上がろうとした。
 その時、校舎の玄関から見覚えのある人たちが出てきた。
 といってもさっき会ったばかりだけど。

「あれ、春乃とかじゃないか?」

「皆お揃いだな」

 校舎から出てきたのは、先ほど俺の周りで話していた春乃、沙理弥、そしてルニールだった。
 そしてもう1人、目を疑う人物がいた。

「あ、あの子!」

「あれって……お前が怒鳴りつけた女子か」

 言い方よ。まあ、間違ってないけど。

 海利の言った通りそこにいたのは、俺が廊下で怒鳴ってしまった真里菜、じゃなくて詩織という女の子だった。

「なんか雰囲気ヤバくねぇか?」

 4人の表情はどこか険しく、あの子が他の3人に連れられている風だった。
 なんだ? 
 何か嫌な予感がしてきた。

「あの子たち、面識あんのかな?」

「ねぇと思うけど。とりあえず、様子見に行くか」

 4人はそのまま歩いて行ってしまったので、気になった俺たちはついていくことに。

 彼女たちが訪れたのは体育館だった。しかもその裏。
 今どき体育館の裏に呼び出すとかマジであるんだな。

「ちょっと、俺行ってくる」

 明らかに楽しく談笑しましょうの会ではなかったので、俺は心配になった。
 真里菜とは別人だとしても、彼女が追い詰められている姿は見たくない。

 俺がすぐに近づこうとすると、それを見た海利に制止された。

「なんだよ、行かせてくれよ」

「とりあえず事情を聴いてからにしたほうがいい。大丈夫だ、暴力振るったりするやつらじゃねぇよ」

「……海利が言うなら」

 不安な気持ちを俺は押し殺した。
 彼女たちのことなら、俺より海利の方が絶対にわかっているはずだ。

 はやる思いを抑え込み、俺たちは体育館の脇に隠れて様子を伺うことにした。

「宝城さん、だっけ?」

 最初に口を開いたのは菜乃川春乃だった。
 態度としては、虎頭心火に対して突っかかっている時と似ていた。
 もう少し険悪な感じだけど。

「はい。あの、何か用ですか?」

 真里菜似の宝城詩織は、なぜ自分がここまで来させられたのか理解していないようだ。
 海利の言った通り彼女たちの間に接点がないなら、今は意味不明な状況だろう。

「あなた、虎頭心火とはどういう関係ですの?」

 今度はルニール嬢が強気な態度で質問をした。
 春乃よりも明らかに怒っていることが分かる。
 眉間にしわが寄りすぎだ。

「虎頭って……あー、さっきの。
 いえ、何もないですよ。
 突然話しかけられて、私も驚きました」

 宝城さんは責められている状況でありながらも、冷静に判断して答えている。
 うーん、こういうところもちょっと真里菜に似てるんだよな。

 名前が違ってたし少し雰囲気は違うから、信じがたいけど別人だとは感じている。
 けど、全く共通点がないかと言われるとそうではない。

 同級生でも初対面の子には敬語なところとか、落ち着いた雰囲気なところとか。

「ね、私の言った通りだったでしょ? 
 私、心火くんがこの子と話しているところ、見たことないもん」

 2人に比べて沙理弥は穏やかな表情だった。仲裁する立場にいるように見える。

「でも……今まであんな心火みたことないし。
 絶対何かあるって……」

 幼馴染として心火をずっと見てきたであろう春乃は、俺が不用意にとってしまった行動に疑問を抱き続けているようだ。
 さっきは言い訳が通じているように見えたが、上手くいってはいなかったようだ。

「そうなのかな~? どうなの、宝城さん」

 ほんわかした態度を崩すことなくを沙理弥が詩織に問いかける。
 彼女は天然なのか分からないが、感情が読みにくい。

「だから何もないですって」

 宝城さんはきっぱり言い切った。
 そりゃそうだ。
 俺と真里菜に接点があっても、宝城詩織との間には何もないのが紛れもない事実なのだから。

「庶民のくせに、虎頭心火を裏で誘惑していたのではなくて? 
 わたくし達に隠れて」

 それでもルニールは態度を変えず、食い下がらなかった。
 お嬢様なのか何なのかよく知らないが、気が強すぎるぞこの子。

「いい加減にしないと、先生呼びますよ?」

 宝城さんの表情が少しきつくなった。
 身に覚えのない事を言われて怒ってる?

「私たちも大事にはしたくない。けど、どうしても納得いかなくて……」

 春乃が宝城さんの反応を見て、頭を悩ませていた。
 おそらく、彼女が嘘を言っているようには見えないからだろう。
 けれど、心火の行動に疑問が残っている。
 といった心理状態のようだ。

 彼女たちの空気は最悪だった。
 いつ喧嘩を初めてもおかしくはない。

「さすがに止めないと」

「けど、あんたが行っても火に油だ。
 待てよ、あいつなら……」

 海利は今ここに、虎頭心火がいたら、と想像しているようだ。
 確かにまた俺が変に喋ったら、また疑われる危険性がある。
 最悪正体がバレるかも?

「よし、これだな」

 どうやらイメージができたようだ。
 海利は、虎頭心火がするべきであろう行動を教えてくれた。

「なるほど。でも、俺にできるか?」

「やるしかない」

 俺が上手く虎頭心火として、彼女たちの仲を取り持たないと、事態は収束しないようだ。

 出来るかどうかなんて正直自信はない。
 なんせ、俺は虎頭心火にまだ会ってないから。

 けど、俺のせいであの子が問い詰められているんだ。
 俺が責任取んないとな。
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