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第3話 どうして君がここに?
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その③
虎頭心火《ことうしんか》と菜乃川春乃《なのかわはるの》は幼馴染だった。
その⑤
唐石海利《からいしかいり》というチャラついたイケメンの友人がいる。
その⑥
苗字はわからないが沙理弥《さりや》という清純そうだけど毒舌な友人がいる。
その⑦
お嬢様のルニール・シュリビアスという、外国人かハーフの友人がいる。
虎頭心火、どうやったらこんな友人たちに囲まれて学校生活を送ることになるんだ。
「……はぁ」
俺は濃すぎる人たちに圧倒されて、息がつまりそうだった。
高校は高校だけど、俺の知っている学生生活とはまるで違った。
俺の席は教室の1番後ろの窓側、なんとも都合のいい席である。
こんな教室の隅っこに、個性の塊みたいなやつらがたむろしている状態だ。
俺は4人の会話に入ろうとはしなった。勝手に喋り続けているというのもあるし、俺にはそんなコミュニケーション能力はない。
俺はまだ喋り散らしている4人から目をそらそうと、廊下の方へと視線を移した。
ぼんやりと廊下を眺めていると、2人の女子生徒が通り過ぎた。
美少女だけどこいつらに比べると地味に思える。
ん?
今度は別の女子生徒と2人組が通り過ぎた。
いたって普通の美少女が、俺の目には映ると思ってた。
けど、違った。
その2人組の1人に、見覚えがあった。
見覚えがあるどころではない。
忘れるはずもない。
俺は理解するよりも早く、席から立ち上がっていた。
突然の行動に、皆が俺を向く。
けど、気にしてる場合じゃない。
俺はすぐに廊下へと走り出した。
「ちょ、心火?」
「おいおい、どうしたんだよ」
そんな声が聞こえてきたがどうでもいい。
俺は教室から廊下へと飛び出した。
やっぱりそうだ。
俺は数メートル先にいるその女の子を見て、確信した。
なんで、どうして、キミがここに。
どれだけ探したっていなかったのに。
キミがいなくなったあの場所を何度も訪れても、キミはいなかったのに。
どうして。
あ、そうか。
俺はなんで、俺がここに突然来たか理解できた気がした。
そうだ、俺が望んだんじゃないか。
彼女に会いたいって。
「真里菜!」
俺は喉が枯れてもいいから、精一杯その名を呼んだ。
通り過ぎたその女の子は、亡くなった真里菜に瓜二つだった。
名前を呼んだけど、いまいち反応が薄かった。
名前を呼ばれたというよりは、廊下で大声を出した変な奴がいるから振り向いた、そんな風だった。
「真里菜、どうしてここに!」
俺は駆け寄った。廊下を走ってはいけませんとか、どうでもいい。
すぐにだって駆けつけたかった。
「は、はい?」
彼女は俺が目の前に現れると、びくっと驚いた。
「俺だよ! ずっと会いたかったんだ」
俺はとっさに彼女の手を握っていた。もう自分では、体をコントロールできなかった。それぐらい、待ち望んでいた状況なのだ。
「ちょ、ちょっと、急に何ですか! それに、あなた誰ですか?」
俺はその言葉を聞いて自然と握った手を離した。
俺を知らないのか? いや、そんなはずは。
あることに気がついた俺は、近くにある窓を見た。
鏡ほどではないが、そこには俺の姿が薄く映し出されていた。
いや、俺ではないのだ。
この姿は、虎頭心火なんだ。
窓には茶色の短めの髪をした童顔の美少年が俺を真っすぐ見ている。
俺は虎頭心火になったという本当の意味を理解した。
意識だけじゃなかったんだ。
体も俺は、俺でなくなっていたんだ。
これでは彼女が俺のことを理解できるはずもない。
それじゃ、俺の名前を言えばわかってくれるはずだ。
そう思って、名前を口に出そうとした時だった。
彼女から思いもよらない言葉が飛び出した。
「それと、真里菜って誰ですか?」
「……え?」
言葉を失った。俺は黙り込んでしまった。
そんな、せっかく会えたっていうのに。
あんまりだ。
俺が虎頭心火の見た目で、心は俺のままだというのに、彼女は逆とでもいうのか?
真里菜の見た目をしているけど、真里菜ではない。
「詩織、先生呼んでこようか?」
彼女の横にいた友人と思われる女子生徒が心配そうに言った。
詩織っていうのか、この子。
ほんとに、真里菜ではないんだな。
双子だという話は聞いたことがない。
にわかには信じがたいことだ。
けど、さっきから混乱するような情報が次々と流れてきたせいか、別人と言う事実を素直に理解できてしまった。
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その②
俺は見た目が虎頭心火になっていた。
その⑧
真里菜に似た子は、名前の違う詩織という別人だった。
ここに来てよかったって感じた矢先に、ひどい仕打ちじゃないか。
俺は怯えた彼女を見て、この場を立ち去ることにした。
けれど、その前に1つだけどうしても聞きたいことがあった。
真里菜ではないことは分かってる。
それでも、俺は真里菜に面と向かって聞きたかったことがあるんだ。
1年間、考えに考え抜いても、答えが出なかったこと。
それは……
「どうして……」
「な、なんですか?」
「どうして、自殺なんかしたんだよ!!」
彼女の死因だった。
下山真里菜は、1年前に飛び降り自殺をした。
「だから、なんのことですか!」
とうとう詩織と呼ばれていた彼女が怒りだした。
俺が怒鳴ってしまったからだな。
「……知らないよな」
誰に聞いたって、自殺した理由を聞いても知っている人はいなかった。
本人に直接聞くしかない。
できっこない方法をずっと求めていたけど、ここでも駄目だった。
「ごめん……」
俺は訳も分からず走り出していた。
やっと真相がわかると思ったのに。
ようやく、胸のもやがはれると思ったのに。
どこかへ消えてしまいたい。
何も考えたくない。
そう思った俺は、自然と人気のいなさそうな場所を目指していた。
普通の高校なら開いていることはあまりないであろう場所。
青空に向かって叫びたいと思ったのか、俺は屋上を目指してとりあえず階段を駆け上った。
その③
虎頭心火《ことうしんか》と菜乃川春乃《なのかわはるの》は幼馴染だった。
その⑤
唐石海利《からいしかいり》というチャラついたイケメンの友人がいる。
その⑥
苗字はわからないが沙理弥《さりや》という清純そうだけど毒舌な友人がいる。
その⑦
お嬢様のルニール・シュリビアスという、外国人かハーフの友人がいる。
虎頭心火、どうやったらこんな友人たちに囲まれて学校生活を送ることになるんだ。
「……はぁ」
俺は濃すぎる人たちに圧倒されて、息がつまりそうだった。
高校は高校だけど、俺の知っている学生生活とはまるで違った。
俺の席は教室の1番後ろの窓側、なんとも都合のいい席である。
こんな教室の隅っこに、個性の塊みたいなやつらがたむろしている状態だ。
俺は4人の会話に入ろうとはしなった。勝手に喋り続けているというのもあるし、俺にはそんなコミュニケーション能力はない。
俺はまだ喋り散らしている4人から目をそらそうと、廊下の方へと視線を移した。
ぼんやりと廊下を眺めていると、2人の女子生徒が通り過ぎた。
美少女だけどこいつらに比べると地味に思える。
ん?
今度は別の女子生徒と2人組が通り過ぎた。
いたって普通の美少女が、俺の目には映ると思ってた。
けど、違った。
その2人組の1人に、見覚えがあった。
見覚えがあるどころではない。
忘れるはずもない。
俺は理解するよりも早く、席から立ち上がっていた。
突然の行動に、皆が俺を向く。
けど、気にしてる場合じゃない。
俺はすぐに廊下へと走り出した。
「ちょ、心火?」
「おいおい、どうしたんだよ」
そんな声が聞こえてきたがどうでもいい。
俺は教室から廊下へと飛び出した。
やっぱりそうだ。
俺は数メートル先にいるその女の子を見て、確信した。
なんで、どうして、キミがここに。
どれだけ探したっていなかったのに。
キミがいなくなったあの場所を何度も訪れても、キミはいなかったのに。
どうして。
あ、そうか。
俺はなんで、俺がここに突然来たか理解できた気がした。
そうだ、俺が望んだんじゃないか。
彼女に会いたいって。
「真里菜!」
俺は喉が枯れてもいいから、精一杯その名を呼んだ。
通り過ぎたその女の子は、亡くなった真里菜に瓜二つだった。
名前を呼んだけど、いまいち反応が薄かった。
名前を呼ばれたというよりは、廊下で大声を出した変な奴がいるから振り向いた、そんな風だった。
「真里菜、どうしてここに!」
俺は駆け寄った。廊下を走ってはいけませんとか、どうでもいい。
すぐにだって駆けつけたかった。
「は、はい?」
彼女は俺が目の前に現れると、びくっと驚いた。
「俺だよ! ずっと会いたかったんだ」
俺はとっさに彼女の手を握っていた。もう自分では、体をコントロールできなかった。それぐらい、待ち望んでいた状況なのだ。
「ちょ、ちょっと、急に何ですか! それに、あなた誰ですか?」
俺はその言葉を聞いて自然と握った手を離した。
俺を知らないのか? いや、そんなはずは。
あることに気がついた俺は、近くにある窓を見た。
鏡ほどではないが、そこには俺の姿が薄く映し出されていた。
いや、俺ではないのだ。
この姿は、虎頭心火なんだ。
窓には茶色の短めの髪をした童顔の美少年が俺を真っすぐ見ている。
俺は虎頭心火になったという本当の意味を理解した。
意識だけじゃなかったんだ。
体も俺は、俺でなくなっていたんだ。
これでは彼女が俺のことを理解できるはずもない。
それじゃ、俺の名前を言えばわかってくれるはずだ。
そう思って、名前を口に出そうとした時だった。
彼女から思いもよらない言葉が飛び出した。
「それと、真里菜って誰ですか?」
「……え?」
言葉を失った。俺は黙り込んでしまった。
そんな、せっかく会えたっていうのに。
あんまりだ。
俺が虎頭心火の見た目で、心は俺のままだというのに、彼女は逆とでもいうのか?
真里菜の見た目をしているけど、真里菜ではない。
「詩織、先生呼んでこようか?」
彼女の横にいた友人と思われる女子生徒が心配そうに言った。
詩織っていうのか、この子。
ほんとに、真里菜ではないんだな。
双子だという話は聞いたことがない。
にわかには信じがたいことだ。
けど、さっきから混乱するような情報が次々と流れてきたせいか、別人と言う事実を素直に理解できてしまった。
分かっている事〈更新〉〈追加〉
その②
俺は見た目が虎頭心火になっていた。
その⑧
真里菜に似た子は、名前の違う詩織という別人だった。
ここに来てよかったって感じた矢先に、ひどい仕打ちじゃないか。
俺は怯えた彼女を見て、この場を立ち去ることにした。
けれど、その前に1つだけどうしても聞きたいことがあった。
真里菜ではないことは分かってる。
それでも、俺は真里菜に面と向かって聞きたかったことがあるんだ。
1年間、考えに考え抜いても、答えが出なかったこと。
それは……
「どうして……」
「な、なんですか?」
「どうして、自殺なんかしたんだよ!!」
彼女の死因だった。
下山真里菜は、1年前に飛び降り自殺をした。
「だから、なんのことですか!」
とうとう詩織と呼ばれていた彼女が怒りだした。
俺が怒鳴ってしまったからだな。
「……知らないよな」
誰に聞いたって、自殺した理由を聞いても知っている人はいなかった。
本人に直接聞くしかない。
できっこない方法をずっと求めていたけど、ここでも駄目だった。
「ごめん……」
俺は訳も分からず走り出していた。
やっと真相がわかると思ったのに。
ようやく、胸のもやがはれると思ったのに。
どこかへ消えてしまいたい。
何も考えたくない。
そう思った俺は、自然と人気のいなさそうな場所を目指していた。
普通の高校なら開いていることはあまりないであろう場所。
青空に向かって叫びたいと思ったのか、俺は屋上を目指してとりあえず階段を駆け上った。
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