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第4話 騎士の本領
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「では、少し本気で行かせてもらうとしよう」
エレガンはサファイズの柄同士を近づける。
利き腕である右腕に握っていたサファイズの柄の先端には、穴が開いていた。
その穴に、もう一方の柄を差し込んでいく。
そしてネジを回すように少しだけ回転させると、そのまま合体して離れなくなった。
「あら、その剣にそんな使い方があったのね」
「これが、サファイズの真の姿だ」
柄を中心に二方向に刀身が伸びている状態だった。
双剣ということで、1つ1つは振りやすいように比較的小さめに作られるのが一般的だ。それはサファイズも一緒なのだが、このように合体して1つの長い剣としても使用することができるのだ。
「でもそれじゃあ、せっかくの双剣が台無しじゃない」
デギナの言う通り、双剣の持ち味である手数の多さは消えることになる。
だから、このような仕様の武器は基本的に誰も使わない。そのため、作られることもほとんどない。
しかし、何故それがピース王国にあるのか。
それは、長年仕えているライトアーム家の専用武器だからである。
「ふぅ……。武器造成 サファイズ!」
そう言葉を発すると、サファイズがさらに輝き始める。
1つになったサファイズから、魔力の光があふれ出し、空中に漂っていく。
そしてそれは、ダボルの時に球体へとかたどられていくように、合体したサファイズと同じ形に集合していく。
魔力の結集体が、光ではなく質量を持った物体に変化していく。
その見た目は、エレガンが今まさに持っているサファイズと全く同じ形をしていた。
「これで問題はない」
彼女は空中のサファイズの柄を左手で掴むと、さきほどの時のように両腕に剣を携えて構え直す。
人間が使用できる魔法の1つ。造成魔法。コピーと呼ばれることもある。
そして、指定した武器をそのままの形で増やすことができるのが、ライトアーム家の多くが使用できる武器造成魔法なのだ。
「行くぞ!」
準備の整ったエレガンは、長き双刀を握りしめて魔人へと走っていく。
近づいた瞬間に、目にもとまらぬ高速斬撃を相手に叩きこむ。
「っち」
デギナの顔から初めて笑みが無くなった。
何故なら、頬や腕にサファイズの切っ先が掠り始めたのだ。
合体したことで剣のリーチが伸びたわけではない。剣の先に剣をくっつけたわけではないからだ。
しかし、振り下ろす際に相手に当たる面積が単純に倍になるのだ。
それが、右、左と連続して襲ってくる。
魔人であり、魔王の部下であるデギナでなければとっくに八つ裂きにされているはずだ。
相手にヒットする確率が増えたと同時にそれは、自分自身に当たってしまうという危険性も増える、ということだった。
普通の剣ならば、剣先は上か敵の方向を向くはずだ。
しかし、柄の後ろにも刀身が伸びているので、振り下ろせば後方にも攻撃が伸びてしまうのだ。
それを戦闘中に何度も切りつけながらも、一切自分にかすりすらしないのは、エレガンの技量があってこそなせる業だ。
ハイリスクハイリターン、というほど直接的なデメリットはないが、素人が使えば自分が怪我をするのは間違いないだろう。
4刀の猛追に耐えきれなくなったデギナは、たまらずさらに後退する。しかし、そこは既に衣装室の扉の傍だった。
つまり、逃げる場所はもうない。
「そのまま逃げてくれても構わないが、貴様は魔王軍の一員だ。今ここで、決着をつけてもいい」
武器造成を使って追い詰めたことで、ティアラたちとデギナの距離はかなり開いていた。エレガンはこの戦いに勝とうとも負けようともしていなかった。
守るべきものを守る。
それが、彼女の使命なのだから。
「優勢になったつもり? 私はまだ、本気を出してないって言うのに!」
不敵な笑みを常に浮かべていた彼女だが、今度は興奮した様子で牙を向けながら口角を上げている。
デギナはまたしてもダボルを作り始めた。しかし、このダボルはすでに何度もエレガンによって対処されている。
だから今度は、相手が対応できないほどの量で挑むことにしたのだ。
「ダボル・トゥエンティ―」
20ものダークボールが、彼女の上空に生成され始めた。いや、おそらく数としてはもっと多かった。数字はある程度の基準。
デギナは感覚で魔法を使っているタイプのようだ。
魔法は頭でイメージして、それを元に魔力を使って、実際に何かが起こる。
だから、言葉にすることで想像しやすくなる。
が、たまに彼女のように言っている事とやっていることが合わない場合もある。それだけ、魔法というのは不安定要素のある物なのだ。
それを具体的に正確に行うには、戦いながらでも止まることのない思考力が必要だ。
「ハチの巣になるといい!」
デギナは片腕を上げてそれを振り下ろすと、一斉に完成したダボルたちは多方向からエレガンに向かっていく。
「私に数で挑むとは、愚策だな」
エレガンは左柄に体をねじり始めた。造成したサファイズを持ちながら、左腕を後ろへと伸ばす。
そしてそれを、勢いよく前方に投げた。
彼女が投げたそれは、槍のように真っすぐ飛ぶのではなく、横向きで回転しながら飛んでいった。どうやら、投げる際にひねりを加えていたようだ。
「私の魔法は、物体の運動をそのまま再現する。
武器造成 サファイズ・イグザクトリィ!」
彼女が再び魔法を唱えた。
すると、ブーメランのように回転しているサファイズが、さらに1個、2個、そしてきっかりダボルと同じ数まで増えたのだ。
彼女が言ったように、回転した状態でだった。
そしてそれは、見事なまでにダボルと相殺しあって、爆発を起こした。
「少し、脆くはなってしまうがな」
本当のサファイズなら、ダボル程度では消えることはない。右腕に持っているサファイズの本体は、ダボルを切り裂いたにもかかわらず傷1つ付いていなかった。
エレガンはサファイズの柄同士を近づける。
利き腕である右腕に握っていたサファイズの柄の先端には、穴が開いていた。
その穴に、もう一方の柄を差し込んでいく。
そしてネジを回すように少しだけ回転させると、そのまま合体して離れなくなった。
「あら、その剣にそんな使い方があったのね」
「これが、サファイズの真の姿だ」
柄を中心に二方向に刀身が伸びている状態だった。
双剣ということで、1つ1つは振りやすいように比較的小さめに作られるのが一般的だ。それはサファイズも一緒なのだが、このように合体して1つの長い剣としても使用することができるのだ。
「でもそれじゃあ、せっかくの双剣が台無しじゃない」
デギナの言う通り、双剣の持ち味である手数の多さは消えることになる。
だから、このような仕様の武器は基本的に誰も使わない。そのため、作られることもほとんどない。
しかし、何故それがピース王国にあるのか。
それは、長年仕えているライトアーム家の専用武器だからである。
「ふぅ……。武器造成 サファイズ!」
そう言葉を発すると、サファイズがさらに輝き始める。
1つになったサファイズから、魔力の光があふれ出し、空中に漂っていく。
そしてそれは、ダボルの時に球体へとかたどられていくように、合体したサファイズと同じ形に集合していく。
魔力の結集体が、光ではなく質量を持った物体に変化していく。
その見た目は、エレガンが今まさに持っているサファイズと全く同じ形をしていた。
「これで問題はない」
彼女は空中のサファイズの柄を左手で掴むと、さきほどの時のように両腕に剣を携えて構え直す。
人間が使用できる魔法の1つ。造成魔法。コピーと呼ばれることもある。
そして、指定した武器をそのままの形で増やすことができるのが、ライトアーム家の多くが使用できる武器造成魔法なのだ。
「行くぞ!」
準備の整ったエレガンは、長き双刀を握りしめて魔人へと走っていく。
近づいた瞬間に、目にもとまらぬ高速斬撃を相手に叩きこむ。
「っち」
デギナの顔から初めて笑みが無くなった。
何故なら、頬や腕にサファイズの切っ先が掠り始めたのだ。
合体したことで剣のリーチが伸びたわけではない。剣の先に剣をくっつけたわけではないからだ。
しかし、振り下ろす際に相手に当たる面積が単純に倍になるのだ。
それが、右、左と連続して襲ってくる。
魔人であり、魔王の部下であるデギナでなければとっくに八つ裂きにされているはずだ。
相手にヒットする確率が増えたと同時にそれは、自分自身に当たってしまうという危険性も増える、ということだった。
普通の剣ならば、剣先は上か敵の方向を向くはずだ。
しかし、柄の後ろにも刀身が伸びているので、振り下ろせば後方にも攻撃が伸びてしまうのだ。
それを戦闘中に何度も切りつけながらも、一切自分にかすりすらしないのは、エレガンの技量があってこそなせる業だ。
ハイリスクハイリターン、というほど直接的なデメリットはないが、素人が使えば自分が怪我をするのは間違いないだろう。
4刀の猛追に耐えきれなくなったデギナは、たまらずさらに後退する。しかし、そこは既に衣装室の扉の傍だった。
つまり、逃げる場所はもうない。
「そのまま逃げてくれても構わないが、貴様は魔王軍の一員だ。今ここで、決着をつけてもいい」
武器造成を使って追い詰めたことで、ティアラたちとデギナの距離はかなり開いていた。エレガンはこの戦いに勝とうとも負けようともしていなかった。
守るべきものを守る。
それが、彼女の使命なのだから。
「優勢になったつもり? 私はまだ、本気を出してないって言うのに!」
不敵な笑みを常に浮かべていた彼女だが、今度は興奮した様子で牙を向けながら口角を上げている。
デギナはまたしてもダボルを作り始めた。しかし、このダボルはすでに何度もエレガンによって対処されている。
だから今度は、相手が対応できないほどの量で挑むことにしたのだ。
「ダボル・トゥエンティ―」
20ものダークボールが、彼女の上空に生成され始めた。いや、おそらく数としてはもっと多かった。数字はある程度の基準。
デギナは感覚で魔法を使っているタイプのようだ。
魔法は頭でイメージして、それを元に魔力を使って、実際に何かが起こる。
だから、言葉にすることで想像しやすくなる。
が、たまに彼女のように言っている事とやっていることが合わない場合もある。それだけ、魔法というのは不安定要素のある物なのだ。
それを具体的に正確に行うには、戦いながらでも止まることのない思考力が必要だ。
「ハチの巣になるといい!」
デギナは片腕を上げてそれを振り下ろすと、一斉に完成したダボルたちは多方向からエレガンに向かっていく。
「私に数で挑むとは、愚策だな」
エレガンは左柄に体をねじり始めた。造成したサファイズを持ちながら、左腕を後ろへと伸ばす。
そしてそれを、勢いよく前方に投げた。
彼女が投げたそれは、槍のように真っすぐ飛ぶのではなく、横向きで回転しながら飛んでいった。どうやら、投げる際にひねりを加えていたようだ。
「私の魔法は、物体の運動をそのまま再現する。
武器造成 サファイズ・イグザクトリィ!」
彼女が再び魔法を唱えた。
すると、ブーメランのように回転しているサファイズが、さらに1個、2個、そしてきっかりダボルと同じ数まで増えたのだ。
彼女が言ったように、回転した状態でだった。
そしてそれは、見事なまでにダボルと相殺しあって、爆発を起こした。
「少し、脆くはなってしまうがな」
本当のサファイズなら、ダボル程度では消えることはない。右腕に持っているサファイズの本体は、ダボルを切り裂いたにもかかわらず傷1つ付いていなかった。
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