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先に言っとくけど、私は人をイラつかせるのが得意なんだ

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 森の中に一本道が出現していた。奴らの1人が放った、とんでもない威力の炎の矢のせいだ。
「ざぁ~こ♥ ざぁ~こ♥」
「あのさ……その台詞セリフって、相手を半殺しにしてから言うもんだよ。一撃で消し炭になった奴に言っても虚しくない?」
「でも、こんなに弱いのが、あたし達の派生体ヴァリアントって、どう言う事?」
「ん?……ちょ……ちょっと待って……」
 私に良く似た顔の……服装も口調も髪型も行動パターンも異様に個性バリエーションが乏しい3人が、そんな事を話している。
 どうやら……3人とも私より「魔力量」は遥かに大きいらしいが……頭の方は……ちょっと何だ。でも、ようやく一番出来がマシなのが気付いたらしい。
「なんで、あんな雑魚に、先に来た3人は殺されちゃったんだろ?」
「その3人も雑魚……ぐえッ?」
 間一髪で、奴らの1人の攻撃魔法を避けて、近くの木の上に退避してた私は、飛び降りて、奴らの1人に背後から組付き、両腕で裸絞、そして、両足で胴締め。
「い……生きてた?」
「あ~、待って、物理系の攻撃魔法はマズいよッ‼」
 どうやら奴らは魔力量は膨大だが、攻撃魔法の威力の調整は苦手のようだ。
 熱や電撃や衝撃波などの魔法で、私を殺せたとしても……私が絞め殺してる途中の奴らの1人も巻き添えになって私の想定より若干早く死ぬ事になる。
「な……何で、誰も生きてる事に気付かなかったの?」
 奴らより遥かに魔力量が低い事が幸いしたようだ。魔力や気配を検知する系の魔法・能力では、私の存在は気付かれにくいらしい。
「スリープっ‼……えッ?」
 眠ったのは……私が絞め殺してる途中の奴だった。
 奴らは、私を「あたし達の派生体ヴァリアント」と呼んだ。
 それと関係が有るかは不明だが……どうやら、私は「気配」そのものが微弱な上に、その「気配のパターン」は奴らのそれと良く似ているらしい。
 つまり、奴らが「気配で狙いを付ける」タイプの呪文で、私を攻撃しようとすると、仲間を誤射してしまう場合が有るようだ。
 前回も、即死系らしい呪文を使った奴が仲間を誤射してくれた。
 ドンっ‼
 あとちょっとで死ぬのが確実な奴が仲間の呪文の誤爆で意識を失ない膝をつく。
「私を雑魚と呼んだが……お前達は阿呆の集団のようだな」
「な……」
「ふ……ふざけるんじゃないわよッ‼ あたし達より能力が低く設定されてる出来損ないの派生体ヴァリアント如きが……」
「じゃあ、5つ数え終るまでに答えてみろ。強い力で胴体を締め付けられた人間は、どうなる? 1・2・3・4……」
「な……なに言って……えっ?」
「1人、頭がマシなのが居たようだな……。語彙が少ないせいか、肉体言語でしか答えられなかったようだが。正解は『死ぬ』だ」
 そう捨て台詞を吐くと、私は出来立てホヤホヤの死体から離れて、一目散に走り出した。
 すぐ近くの崖を目指して……。
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