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第七章:鉄拳掃毒

アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (3)

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 副店長の銃が火を吹く。
 さっきのは本当の簡易焼夷弾ドラゴンブレスだったが、今度の「火を吹く」は、あくまで喩えだ。
 そして、弾丸は河童の一匹の腹に命中……ん?
「あれ?」
 河童の体を守る甲羅を貫通出来ずに変形して、ビシャっと河童の体に貼り付いた弾丸。
 でも……。
「ぐへっ?」
 弾丸が命中した河童は口から血を吹き出す。
「何すか、アレ?」
「ああ、格闘マンガで良く有るだろ。筋肉やボディアーマーの防御力を無視して、直接、内臓を揺らす打撃技ってのが……それを散弾銃用の弾丸で再現した。さて、次は……」
 再び銃声。
 弾が飛んでる途中で……何かが落下。
 命中した河童の体に小さな穴が開き……ん?
 ドン‼ ドン‼ ドン‼
 命中した河童だけじゃなくて、その背後うしろに居た河童、更に、そのまた背後うしろに居た河童まで「どうなってんだ?」って表情かおで、腹から血を吹き出しながら次々と倒れる。
「それは?」
「ああ、散弾銃から発射出来る高速徹甲弾だ。超鋼合金で出来た芯を耐熱素材のカバーで覆ってる。飛んでる途中にカバーが外れて、カバーの分の運動エネルギーは全部、小さくて硬い芯に移る」
「なるほどね」
 更に次。
 河童の一匹の顔面に命中。
 おい……あたしらの俗称は「正義の味方」だろ……。
 河童の顔は思いっ切りエグれて血だけじゃなくて脳漿まで撒き散らしながらブッ倒れ……。
「え……今度のは?」
「中東の某テロ国家が先住民の民族浄化ホロコーストに使ってたダムダム弾の一種を参考にした。例のゾンビ用に用意してたけどテストでNGだった弾を、全部、ここで使い切ろうと思ってな」
「いいっすね、あたしのも有ったりします?」
「ああ、お前のバイクに詰んでる」
「よっしゃ」
「やってるな……あたしらも負けていられねえな」
「えっ?」
 声の主は……ここんとこ、何かと縁が有る対異能力犯罪広域警察レコンキスタの久留米レンジャー隊の副隊長ブルーパワー型イエロー
 背中に着装されてる大型の金属腕には、これまた大型の機関銃を持ってる。
「おっしゃ、一気に片付けるか」
「おい、あたしらにも見せ場を寄越せ。警察が『正義の味方あんたら』に守ってもらわなきゃいけねえなんて事になったら、今後、どんな社会的影響が有るか知れたもんじゃ……」
 機関銃から発射音。
「ねえぞ」
 次々と倒れる、河童・鬼・獣人……。
 あたしと副店長も次々と銃弾を発射し……。
「待てッ‼ 阿呆かッ‼」
「えっ?」
「へっ?」
「何だ?」
 どうやら、高速移動能力者だったらしい大牟田の御当地ヒーローチームの軽装の近接戦闘担当が、いつの間にか、あたし達の、すぐ近くに移動してて……。
「何、流れ弾になったらマズいモノを平気で、ガンガン、ブッはなってんだッ⁉」
「あ……」
「あ……」
「あ……」
 良く見ると、大牟田のヒーローチームの内、人間(広い意味での)は地面に伏せてて、大型ロボットは……装甲は貫通してないけど着弾痕。
 まぁ、警察署を襲撃してた奴らは……皆殺しか、戦意喪失かのどっちかみたいだけど……。
 しまった。何か、あたし含めて、似たよ~な性格のが3人揃ったせいで「ツッコミ役不在の、ボケだけしか居ない漫才」みて~な感じで、調子に乗って暴走しちまったようだ。
 守る筈だった大牟田の警察署の壁も、結構、穴だ……ん?
 轟音。
 轟音。
 轟音。
 次々と轟音。
 その度に、警察署の屋上で爆発。
「何だ?」
「どこからだ?」
『海です』
 後方支援要員から連絡。
「海って、ここまで2㎞ぐらい有るだろ?」
『海を……国防戦機を詰んだ船が航行しています。そこから迫撃砲によるものと思われる砲撃が……』
 ……。
 …………。
 ……………………。
「ねえ……相手、ヤクザだったっすよね? 軍事組織とかじゃなくて?」
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