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第七章:Cold Pursuit

アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (1)

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 退院手続が終ったと後方支援要員の権藤さんに連絡した途端、何故か、タクシーで最寄り駅のまで行った後に、更に3つぐらい先の駅で下りて、近くに有る駐車場に向かえ、との指示。
 もちろん、足が付かないようにタクシー代は現金払い。
 早速、何かが起きたらしいが……。
 タクシーの運ちゃんのおしゃべりは寝たフリして無視……って、ん?
 一緒に入院してた対異能力犯罪広域警察レコンキスタのレンジャー隊の隊員達の車も……えっ? サイレン?
「どうしたとかねえ……?」
 運ちゃんの質問には寝たフリして……。
 最寄り駅についても、現金で切符買って、電車に乗り、更に指示された駅で下りて……。
 駐車場には……鹿児島と宮崎と熊本市のナンバーのトラックが各1台……ん?
「よう、待ってたぞ」
「えっ?」
 そこに居たのは……「工房」の副責任者。コードネーム「副店長」。
「どうした?」
「あの……工房って、たしか、北九州じゃ……」
 あたしは、トラックのナンバープレートを指差して訊く。
「足が付かないようにするのも大変でな……で、退院早々悪いが、早速、仕事だ」
 副店長が、トラックのコンテナの扉を開くと……。
「おお……」
「注文通り、バイクには、ちゃんとペイントしてた」
 瀾にブッ壊されたバイクと同じモノが、そこに有った。
 ちゃんと、あいつが何故か嫌ってるファイアーパターンのペイントまで再現。
 そして……。
 新しい強化装甲服パワードスーツ「水城」。
 インナーの色は白になり、装甲にはファイアーパターンと、更に炎にも見えるデザインの梵字。
 その横には、あたしの愛用の大型ハンマー。
「開発中の人命救助レスキュー仕様の試作機を更に改良した。パワーは、それほど上ってないが、稼働時間は2~3割増し。防御魔法も前のより強化されてる。あと、ハンマーの方も完全に浄化してもらった。まぁ、『魔法使い』系の後方支援要員には散々文句を言われたがな」
「すげ……」
「鎧の方は追加装備を取り付ければ、ある程度は、放射線 有害微生物 有害化学物質汚染地帯でも活動は可能だ……と言っても、そっち系の性能は一から対NBC用に設計されたモデルには劣るし、今回は多分不要だろうけどな。あと、こっちも使わないだろうけど、火事場なんかでの消防活動も行なえる追加装備も有る」
「何か、前のよりイケてますよ、これ」
「ついでに、制御AIは護国軍鬼4号鬼に使われてるモノを改良した。前回みたいな事が予想される場合は、装着者が『先読み』機能を切れる。もちろん、射撃補正その他の戦闘用の追加プログラムプラグインもインストール済みだ」
「わかりました」
「あと、お前の古巣から贈り物だ」
「へっ?」
「お前の師匠だか育ての親だかの形見だとか言って届いたんだが……」
 そう言って、副店長は布に包まれた何かを、あたしに渡す。
 強い霊力が込められた……それは……。
 あたしを育てた親類の叔父さんが使ってた「焦点具」。
 柄や鞘はコンバットナイフ風だが、中の刀身は……経文が刻まれた脇差。
慈悲忿怒じひとふんぬは 譬如車輪たとえばしゃりんのごとし
闕一輪時いちりんをかくとき 不得人度ひとをどするをえず
意荒時こころ あらぶるとき 三宝荒神』
意寂時こころ しずまるとき 本有如来』
 死んだ、その叔父さんが……あたしが「本当の力」を引き出す鍵になるだろうと言っていた言葉だった。
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