上 下
50 / 70
第五章:The Good, the Bad, the Weird

ニルリティ/高木 瀾(らん) (2)

しおりを挟む
「大丈夫?」
「私は大丈夫だが……こいつは、すぐに『魔法使い』系が居る医療チームに引き渡して精密検査だ」
 応援の水神ヴァルナ金翅鳥ガルーダが到着。
 麻薬ならぬ魔薬の売人は口封じで殺され……と言っても、奴も擬似ゾンビ化していたらしいので、どこまで情報を引き出せたかは不明だが……更に実行犯は悠々と逃走。
 残されたのは、死体だらけの警察署と……ゾンビ達が放つ「邪気」とやらに汚染されたせいでグロッキーになってる相棒とレンジャー隊。
「ところで、何で、そんなモノを持ち出してる?」
 金翅鳥ガルーダは私が署内から持ち出した機動隊用の盾の山を指差す。
「爆風を防ぐ為だ」
「何でだ?」
「ところで、ゲロしていい? マジで気分悪いんだけど……」
 その時、相棒の割り込み。
「ああ……レンジャー隊の連中に顔を見られないような角度でな。マスク外すの手伝うか?」
「頼む」
「軽口を叩く気力さえ無いのだけは理解した」
 私は相棒の向きを変え、強化装甲服パワード・スーツ水城みずき」のガスマスクを外す。
「普通の水と、経口補水液、あとブドウ糖の錠剤と護符薬を持って来てくれ」
了解Affirm
 金翅鳥ガルーダがそう答え、ここまで乗って来たバイクに向う。
「あれ……まだ生きてんの?」
 水神ヴァルナが指差したのは相棒が潰したゾンビ達の群。まだ、ピクピクと動いていた。
「何をやりたいかは想像が付くが……念の為、こいつが多少は回復してからにしてくれ」
「おい……まだ働かせる気かよ……」
「ああ、悪い。邪気とやらの検知は、まだ可能か?」
「何とかな……」
「このまま放っておけば、どうなる?」
「辺り一帯、Jホラー映画みたいな事が頻発する心霊スポットになる。あと、立ち入った一般人はゾンビ化。さらに、そのゾンビどもが心霊スポットを広げていく」
「浄化するには、どの程度の人員・期間が必要だ」
「激甘に見積って、あたしクラスの奴が二〇人以上で一週間……いや一〇日とうかは必要だな」
「激甘?」
「有り得ねえレベルで途中で何も失敗も問題も起きなかったとして、って事」
 相棒は吐いた後、うがいをする。
 その後、金翅鳥ガルーダが持って来たブドウ糖の錠剤と護符薬を経口補水液で飲ませる。
 護符薬は、ある日蓮宗の寺で作られている……経文が書かれ「気」が込められたオブラートを丸めたもので、多少は体内の邪気を浄化する効果が有るらしい。
「同じモノを向こうにも配ってくれ」
 私は、レンジャー隊の方を指差して金翅鳥ガルーダに指示。
了解Affirm
水神ヴァルナ、試しにあいつらを凍らせてくれ」
 続いて、私は、潰れてるゾンビの群を指差しそう言った。
「おっしゃ、了解Affirm
「マズいぞ……邪気の量が増してる」
 ゾンビの群が凍結した途端に、相棒から指摘。
「どうなってんの?」
「クソ……あいつらが傷付けば……その傷が異界への門と化す。そして、凍結による細胞や筋肉・内臓・血管なんかの損傷も……異界への門となる傷に含まれるらしい」
「まさか、こうなるのを予想してた?」
「万が一が有るかと思って実験したが……実験失敗、状況は悪化したようだ」
「おい、どうする気だ?」
 金翅鳥ガルーダの声はビミョ~に不安気。
「あんたの力で浄化してくれ」
「あのな、私の力だと『魔法使い』系と違って爆発が起きるぞ」
「こっちの準備が終ったら、少しづつ爆破しろ」
「浄化だ。爆発は、あくまで望ましくない副作用だ」
 金翅鳥ガルーダの愚痴を聞きながら、私は、軍刀で路面を無理矢理、一直線に斬り裂く。
 そして、続いて、生き残ったレンジャー隊員達を安全な場所まで引き摺り……って、安全な場所って、この場合どこだ?
 ともかく、警察署からある程度引き離し……。
 爆音。
「おい、何で私がやる前から爆発した?」
「すまん、こいつの依頼で地下に爆薬を仕掛けてた」
 私は金翅鳥ガルーダの当然の疑問に対して、レンジャー隊の隊長レッドを指差しながら答えた。
「いや、待てよ。何で、所属先カイシャが違うかも知れないけど……警官が警察署に爆弾を仕掛ける必要が有るんだ?」
「さあ? お役所仕事って奴は、堅気の人間には謎だらけだ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

女の子にされちゃう!?「……男の子やめる?」彼女は優しく撫でた。

広田こお
恋愛
少子解消のため日本は一夫多妻制に。が、若い女性が足りない……。独身男は女性化だ! 待て?僕、結婚相手いないけど、女の子にさせられてしまうの? 「安心して、いい夫なら離婚しないで、あ・げ・る。女の子になるのはイヤでしょ?」 国の決めた結婚相手となんとか結婚して女性化はなんとか免れた。どうなる僕の結婚生活。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

「学校でトイレは1日2回まで」という校則がある女子校の話

赤髪命
大衆娯楽
とある地方の私立女子校、御清水学園には、ある変わった校則があった。 「校内のトイレを使うには、毎朝各個人に2枚ずつ配られるコインを使用しなければならない」 そんな校則の中で生活する少女たちの、おしがまと助け合いの物語

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

処理中です...