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第五章:The Good, the Bad, the Weird
アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (2)
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「ATVから、あたしのハンマーを取って来る事が出来るか?」
あたしは無線通話専用モードで相棒にそう訊いた。
『それで事態が打開出来るか?』
「確実じゃねえけどな」
『じゃあ、私の方でもプランBを考えておこう。失敗を恐れず、思いっ切りやってくれ』
「了解」
「不自惜身命」
相棒は「火事場の馬鹿力」を引き出す為の自己暗示キーワードと「護国軍鬼」のリミッター解除キーワードを兼ねたワードを低く唱え……。
轟……。
護国軍鬼の各部に有る余剰エネルギー排出口が開く。
そして……。
「なっ?」
飛んだ。
レンジャー隊や、あの女や鬼の頭を飛び越え……。
「来い、チタニウム・タイガーっ‼」
その呼び掛けに応じて、四輪バギーが相棒の元に駆け寄る。
ガンっ‼
相棒の右足の武器 兼 方向転換用のピックがアスファルトを貫く。
相棒の背中と脛の裏の余剰エネルギー排出口から熱気のように見えるモノが吹き出す。
ただし、左側のだけ。
あたしのハンマーを両手に持った相棒は、文字通りハンマー投げのように、回転し……。
「受け取れッ‼」
「伏せろッ‼」
「危ねえッ‼ 伏せろッ‼」
相棒と、あの女と……レンジャー隊の副隊長の叫びが、ほぼ同時。
「うお……っと」
あたしは飛んで来たハンマーをギリギリで掴む。
そして……。
「おりゃあああああッ‼」
飛び上がる。
肉体干渉が……下手したら精神操作だって……可能だとしても、重力操作まで出来る「魔法」や「心霊術」なんて聞いた事もねえ。
そして……。
あ……しまった……。
あたしの着地点付近に、次々とゾンビ化した人間や河童が集り……。
グシャ‼
グシャ‼
グシャグシャグシャグシャグシャ~っ‼
山になったゾンビどものせいで勢いは殺され……。
しかも、ゾンビどもが潰れたせいで邪気が吹き出し……。
パチ……パチ……パチ……パチ……。
映画の「ダークナイト」でジョーカーがやったような嫌味ったらしい拍手。
しかし、奴の表情は……完全に嘲笑モード。
「いや、すごいな。こんな曲芸みたいな動きが出来る強化装甲服が有ったとは。たしかに、お前らがヒーロー気取りなのも理解出来る。ただ、残念だが、ヒーローなのは外側の鎧で、中身は……」
「プランB。お前の言う通りだ。私達を勝手にヒーローや『正義の味方』扱いしてるのは……私達以外の誰かだ。外側はヒーローでも、中身の方は必要ならセコい手も使う」
相棒は背後から奴の首筋に軍刀の刃を突き付けていた。やろうと思えば、いつでも頚動脈を断ち切れる位置。
「あと、プランC。ちくしょう、これで打ち止めだッ‼」
あたしは、残りの有りったけの「気」をハンマーに込め……。
軽い一撃だ。
物理的には大した意味はねえ。
だが……。
単体の相手を狙った術じゃない。
いわば……一定の範囲内に「呪詛」をかけるもの。
「がああああ……‼」
「き……貴様……」
「手前ェは相手を舐め過ぎだ」
「鬼」を含めたゾンビどもに結構なダメージ。倒せるとまではいかねえけど……。
まぁ、あたしには、もう大した力は残ってねえけど……後始末は応援が何とか……ん?
「おい、どうした、早く、そいつの頚動脈をズバっと……」
めずらし過ぎる。
相棒が固まってやがる。
それだけでも滅多にねえ事なのに……。
おい、こんな有利な状況で何をやって……?
「こいつも馬鹿じゃなかったらしい……」
「こっちのプランBだ。あそこに居る阿呆警官達がゾンビに変るぞ」
ヤツの指差す先を見ると……。
しまった……。良く見りゃ……あたしが潰したのより、もっと多くのゾンビどもが居た筈……。
「あ……あの……これ……下手にブチのめしたら、余計マズい事になるんだっけ?」
残りのゾンビどもは、レンジャー隊の皆さんに纏わり付いていた。
あたしは無線通話専用モードで相棒にそう訊いた。
『それで事態が打開出来るか?』
「確実じゃねえけどな」
『じゃあ、私の方でもプランBを考えておこう。失敗を恐れず、思いっ切りやってくれ』
「了解」
「不自惜身命」
相棒は「火事場の馬鹿力」を引き出す為の自己暗示キーワードと「護国軍鬼」のリミッター解除キーワードを兼ねたワードを低く唱え……。
轟……。
護国軍鬼の各部に有る余剰エネルギー排出口が開く。
そして……。
「なっ?」
飛んだ。
レンジャー隊や、あの女や鬼の頭を飛び越え……。
「来い、チタニウム・タイガーっ‼」
その呼び掛けに応じて、四輪バギーが相棒の元に駆け寄る。
ガンっ‼
相棒の右足の武器 兼 方向転換用のピックがアスファルトを貫く。
相棒の背中と脛の裏の余剰エネルギー排出口から熱気のように見えるモノが吹き出す。
ただし、左側のだけ。
あたしのハンマーを両手に持った相棒は、文字通りハンマー投げのように、回転し……。
「受け取れッ‼」
「伏せろッ‼」
「危ねえッ‼ 伏せろッ‼」
相棒と、あの女と……レンジャー隊の副隊長の叫びが、ほぼ同時。
「うお……っと」
あたしは飛んで来たハンマーをギリギリで掴む。
そして……。
「おりゃあああああッ‼」
飛び上がる。
肉体干渉が……下手したら精神操作だって……可能だとしても、重力操作まで出来る「魔法」や「心霊術」なんて聞いた事もねえ。
そして……。
あ……しまった……。
あたしの着地点付近に、次々とゾンビ化した人間や河童が集り……。
グシャ‼
グシャ‼
グシャグシャグシャグシャグシャ~っ‼
山になったゾンビどものせいで勢いは殺され……。
しかも、ゾンビどもが潰れたせいで邪気が吹き出し……。
パチ……パチ……パチ……パチ……。
映画の「ダークナイト」でジョーカーがやったような嫌味ったらしい拍手。
しかし、奴の表情は……完全に嘲笑モード。
「いや、すごいな。こんな曲芸みたいな動きが出来る強化装甲服が有ったとは。たしかに、お前らがヒーロー気取りなのも理解出来る。ただ、残念だが、ヒーローなのは外側の鎧で、中身は……」
「プランB。お前の言う通りだ。私達を勝手にヒーローや『正義の味方』扱いしてるのは……私達以外の誰かだ。外側はヒーローでも、中身の方は必要ならセコい手も使う」
相棒は背後から奴の首筋に軍刀の刃を突き付けていた。やろうと思えば、いつでも頚動脈を断ち切れる位置。
「あと、プランC。ちくしょう、これで打ち止めだッ‼」
あたしは、残りの有りったけの「気」をハンマーに込め……。
軽い一撃だ。
物理的には大した意味はねえ。
だが……。
単体の相手を狙った術じゃない。
いわば……一定の範囲内に「呪詛」をかけるもの。
「がああああ……‼」
「き……貴様……」
「手前ェは相手を舐め過ぎだ」
「鬼」を含めたゾンビどもに結構なダメージ。倒せるとまではいかねえけど……。
まぁ、あたしには、もう大した力は残ってねえけど……後始末は応援が何とか……ん?
「おい、どうした、早く、そいつの頚動脈をズバっと……」
めずらし過ぎる。
相棒が固まってやがる。
それだけでも滅多にねえ事なのに……。
おい、こんな有利な状況で何をやって……?
「こいつも馬鹿じゃなかったらしい……」
「こっちのプランBだ。あそこに居る阿呆警官達がゾンビに変るぞ」
ヤツの指差す先を見ると……。
しまった……。良く見りゃ……あたしが潰したのより、もっと多くのゾンビどもが居た筈……。
「あ……あの……これ……下手にブチのめしたら、余計マズい事になるんだっけ?」
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