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第四章:A Hard Day

アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (5)

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「ごばあッ‼」
「ぐがぁッ‼」
 ドアが開いた途端に作業着を着た2体の……。
「体温を測定」
 相棒は冷静に後方支援チームに連絡。
『通常の哺乳類なら死んでる筈の体温……あと、その部屋の気温、かなり低い』
 そう言や死体の一時安置所か……って……。
 グギャッ。
 ゴキャッ。
 飛び出してきた2匹のゾンビは……あっさりと、足が変な方向に曲がって……床に……。
「マズい‼ あ~、隊長さん、逃げてッ‼」
「えっ?」
 このゾンビどもは……負傷すると、その傷口が剣呑ヤバい「異界」への「門」と化す。
 その癖、体は生きてる人間よりも脆くなってる。
「2体とも倒れた拍子に頭蓋骨を損傷した模様」
 相棒の冷静過ぎる声……ああ、クソ。相棒が実験した通りだ。骨まで脆くなってる。
「畜生がぁッ‼」
 あたしは2体のゾンビに目掛けて思いっ切り「気」を放つ。
「○×△□ッ‼」
「∴∵∩∪ッ‼」
 ゾンビどもは苦しみ続け……続け……続け……。
「終ったのか?」
「あ……ああ……」
 ゾンビの体は、ほぼ、腐汁と化し……残った骨もボロボロ。異界への門も閉じている。だけど……。
「クソ……こいつらと同じ程度の奴らを……あと1~2体浄化出来りゃあ御の字だな、こりゃ……」
「大丈夫か?」
「何とか、動けるし……まだ、意識が飛ぶ程じゃねえが……疲れた。あと、邪気の発生源は……この部屋の中だ」
「それが、この2人をゾンビに変えたのか? しかし、この作業着……」
「えっと、たしか、県警の鑑識の……」
 そう言ったのはレンジャー隊の隊長レッド
「ちくしょう……焦点具を持ち込めてたら……もう少しマシだったんだが……」
「待て、焦点具って『ハリー・ポッター』あたりで言うなら『魔法の杖』だったよな?」
「そうだけど」
 相棒は顔を少し下げて、右手の人差し指を額に当て……何かを考えてるような仕草。
「その『焦点具』とやらが有ると無いとでは……同じ術を使っても威力やら力の消費が違ってくるって事か?」
「そういう事、体感だけど3割強から4割弱ぐらいは違ってくる」
「えっと……ひょっとして、お前、あの馬鹿デカいハンマの事以外の『焦点具』とやらを持ってないのか?」
「そ……」
 相棒の口調は……何かいつもの……異様に理屈っぽい罵詈讒謗を浴びせる1分前みたいな感じになってる。
「その……『ハリー・ポッターで言う魔法の杖』は……あんな馬鹿デカくする必要が……何って言うか魔法上の理由でも有るのか?」
「え……えっと……」
「小さくても言いのか?」
 相棒は、どんどん不穏な口調になっていきながら……部屋の奥に進む。
「……う……うん……」
「何で、屋内での取り回しに難が有る位デカくした?」
「い……いや……その……」
「理由を簡潔に答えろ」
「あ……あのさ……誰でもマッチョぶって、デカい武器をブン回したくなるよ~なお年頃って有ったじゃん。あたし、その頃に、たまたま、一人前になってさ……」
「マヌケか、お前は? 漫画の『ベルセルク』の読み過ぎだ」
「うるせえよ……」
「私も私が思ってた以上に馬鹿だった。お前が馬鹿じゃないかもと何度も思ってし……」
「だから、うるせ……どうした……」
「あのゾンビは……体に傷が付くと……そこが異界への門になるんだったな……」
「いや……だから、それ、お前も知って……おい、何が有った?」
「昨日の鬼の腕だ……。多分、証拠品として警察署ここに持ち込まれ……そのせいで、警官や職員がゾンビに変った……」
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