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第二章:極悪対決

アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (5)

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「て……てめえぇッ‼」
 狼男が怒号をあげながら「鬼」に突撃。
 「鬼」は……さっき狼男が声をかけた老人と幼児の2人連れに近付いていた。
「がぁッ‼」
 「鬼」の体から放たれる邪気の量が増大。
 だが……。
 狼男の方も、魔法・呪術・心霊系の修行はしてないようだが、持って生まれた「気」の量はベテラン級の「魔法使い」数人分。
 邪気の中を突撃し続け……。
「へっ?」
 とは言え、このチート級狼男相手でも、「鬼」が放つ邪気は、ほんの少しだけ影響は有ったようだ。
 狼男の攻撃は「鬼」の左肩を掠った……えっ?
 ドンっ‼
 掠っただけの中途半端な攻撃で……鬼の左腕が落ちる。
 それも、着ている服には大した傷が出来てねえのに……腕だけが落ちている。
 血とかも出てる様子はねえ。
 しなびた……瘡蓋だらけの腕。
 上腕部には十年前の噴火で形が変る前の富士山と太陽のタトゥー。
 ……富士山の噴火で旧首都圏が壊滅した後の2~3年間、消えてなくなった旧政権の復活を願うネット右翼の間で良く使われてたアイコンだった……と思う。
 その頃、まだ、子供だったあたしが、何故、そのタトゥーの意味を知ってるかと言えば……。
 ごおッ‼
 地面に落ちた腕の付け根。腕を失なった「鬼」の左肩。
 そこから、とんでもない量の「邪気」が放たれる。
「ど……どうなってる?」
 狼男が怪訝そうな表情。
 いや、狼男の顔に浮かぶ怪訝そうな表情って言っても説明が難しいが、ともかく、怪訝そうなに見える表情だ。
「おい、やべえぞ。あいつの体に傷を付ければ付けるほど……」
「マズい事になんのは、何となく判るが……どうなってる? あいつの体……
「だから……何が起きてる⁉」
 レンジャー隊の副隊長ブルーが叫ぶ。
「あの『鬼』を傷付けると……その傷口が剣呑ヤバい『異界』への『門』になる」
「へっ?」
「下手に、あいつを傷付けると……繁華街のド真ん中が、一般人立入禁止の心霊スポットになるぞ」
「冗談だろ?」
「あと……あいつの体は……すげ~脆いみたいだ……。普通の人間なら体内で止まる弾でも……体をブチ抜く可能性が有る」
「お……おい……どうすんだよ、それ?」
 相棒から受け取った霊力入りの弾が入ってるだろう散弾銃を構えてるレンジャー隊の隊長レッドが慌てた声。
 あの狼男の攻撃とは言え、掠っただけで腕が落ちるような体なら……スラッグ弾なんか使ったら……あの「鬼」の体を貫通して……逃げ遅れてる一般人が二次被害を受けかねねえ……。
「お前、『魔法使い』系だろ、何とか……」
 勝手な事を言うな。
 あの「鬼」が「力だけのヘボ」だとしても……気とか霊力の差がクソデカい以上……下手に魔法・心霊系の攻撃をやったら、こっちが「呪詛返し」を食らう可能性……待てよ……。
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