上 下
14 / 82
第一章:傷城

ニルリティ/高木 瀾(らん) (7)

しおりを挟む
 だが……。
 メリっ……。
 嫌な音がする。
 狼男が自分の口を引き裂こうとする機械腕を掴み……。
 機械腕に爪が食い込む。
「マジか、これッ⁉」
 レンジャー隊の副指揮官ブルーパワー型イエローが背中から大型機械腕ユニットを除装。
 ほぼ時を同じくして……機械腕が狼男の爪と握力で破壊される。
 私は、狼男の口から手を放し、裸絞に切り替え、背中の排出口から余剰エネルギーを排出。
 狼男を押し潰そうとした時、狼男の足が地面を蹴り、手は逆に地面に向かい、宙返りをしようとする。
 狼男は、私が狼男を押し潰そうとした運動エネルギーを逆用して、その時の勢いで……危うく、逆に狼男の体に潰されそうになる前に、私は狼男の体から離れる。
「兄貴~ッ‼ 大丈夫ですか~ッ⁉」
 その時、道路の反対側から声。
 出て来たのは……河童の姿をした連中……。
 いや、大型狙撃銃を持ってる河童というのもシュールな光景だが……この御時世、良く有る事だ。
 まぁ、河童と言っても「昔の河童の絵の独特の口はスッポンの口を元にしたもの」という説は本当だったようで「亀人間」っぽい外見だが。
「おい、この狼男をブッ殺す方法は無いねえのかよ?」
「警官が容疑者を殺すのか? 取調べはどうする気だ? こいつの知ってる情報の二〇分の一でも自白うたわせる事が出来れば、大手柄で臨時ボーナスも、警察そっちの偉いさんの弱味を握るも、犯罪組織の手下になってる不良警官を一掃するのも思いのままだぞ、勿体ない」
「こいつみて~なのを置いとける留置所なんか無いねえし、こいつを尋問して無事でいられる警官も居無いねえよッ‼」
「まぁ、殺す方法なら、いくらでも有る。一般人が逃げ遅れてるかも知れない町中で軍用装甲車を一瞬でブッ壊せる武器を使用出来て、誤射その他の事故が起きても誰も責任を取らなくていいならな」
「事実上無いねえって事だろ、それ」
「おい、この状況で軽口か?」
 まぁ、獣化能力者の中では日本最強、東アジアでもベスト3入り確実なヤツの攻撃を、あまり仲の良くない組織の構成員と仲良くギリギリで捌き続けてるって状況だが……。
「軽口でも叩いてなきゃ、この状況では、それこそ心の余裕が無くなる」
 私は、狼男の腹に前蹴り。それと同時に隠し武器のピケットを射出。
 だが、以前にも使った手だ。
 当然効いて無い。
 そして、蹴った足を掴まれ……だが、その足を軸に空中回し蹴り。
 狼男の頭の狙って、靴の爪先を叩き込む。この箇所だけは、装甲素材の組成が軽さと強度のバランスを重視した他の箇所とは違い、重量は有るが硬度や頑丈さ重視だ。
 だが、狼男が腕を上げ、その蹴りも防がれ……銃声。
 レンジャー隊の副指揮官ブルーパワー型イエロー……今はパワー型イエローの機能を失なった単なる副指揮官ブルーだが……が狼男を銃撃。
 威嚇や牽制にしか成らない……が、その一瞬の隙を突いて体全体を奴の腕に絡ませる。
「やるじゃねえか……。関節技ってのは、さっきのみてえなのじゃなくて、コレなんだよな」
「悪いが、腕1本、いただく」
 だが、完全に極まる前に、狼男は飛び上がり、私を地面に叩き付けようとし……。
「まだ、やれねえな……」
 何とか、狼男から離れ……。
「高威力の重火器を使いたいが、後始末をお願いしていいか? あいつを殺せるかも知れないが……周囲の建物に大穴を空けるのも確実な武器なら有る」
 私は、レンジャー隊の副指揮官ブルーに向かって、そう言った。
「ふざけんな」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

おもらしの想い出

吉野のりこ
大衆娯楽
高校生にもなって、おもらし、そんな想い出の連続です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

処理中です...