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第2章:ETERNAL 0 or -1.0
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怪しい。
何で、同じ神様(神様だとして)から「お互いのやる事を邪魔し合え」って命令を受けてるのか?
何で、僕達を捕まえた奴の片割れが、僕達を助けるのか?
しかし……他に手段は無さそうだ。
ともかく謎の女(2人目)は、僕達を牢屋から出してくれた。
外は……もう夜中。
町の城壁の外に有る屋敷らしい場所の倉庫に偽装された建物……それが僕達が入れられていた牢屋の出入口だった。
「持ってけ。あと、昼間の間は、その布で顔を覆ってろ。お前の顔の皮膚の一部が太陽の光に弱くなってるとしても、これを被ってりゃ、外の様子は見えるが、火傷になるのは防げる筈だ。と言っても、外の様子は見えにくくなるんで、夜の間だけ行動するのがオススメだがな」
謎の女(2人目)は、倉庫に偽装されてた建物の中から持って来た武器や衣服、その他、リュックみたいな背負い鞄を地面に並べる。
「何故、こんな事をするのですか? 貴女の話では、貴女達にも、私達が敵か味方が判っていないのでは?」
聖女様は、そう訊いた。まぁ、当然と言えば、当然だ。
「そうだ。あんたらが敵か味方か判らないから、なるべく、あたしらの選択肢を減らさない方法を取った。ただ、あいつは、あんたらを監禁しておいた方が、こっちの選択肢は増えると判断し、あたしは、あんたらを自由にさせた方が、こっちの選択肢は増えると判断した」
「困った事に、それを議論しても、時間がかかるだけだ。どっちを選ぶにせよ、一番リスクが高いのは、決断に時間がかかる場合だ、ってのはお互いに意見が一致してると思うが……」
その時……。
「やっぱ……こうなったか……」
「う……裏切ったの?」
「え……えっと……まぁ……何と言うか……」
そう答えたのは……謎の女(2人目)。
「お前たちからすれば『裏切った』になるかも知れんな」
続いて答えたのは、謎の女(1人目)……つまり平気で人を殺しまくるサイコ女。
サイコ女の背後には……ああ、やっぱり……。「白人を差別してるのに、格好はKKKそのまんま」という悪趣味にも程が有る白頭巾軍団。
「そいつらが、お前の新しいお友達か?『國民の創生』でも上映したらどうだ?」
「あいにく、PCやらネット回線やらスピーカーやらモニタやらが無い。あと、こんな人種差別主義者の下衆どもなんて友達じゃない」
サイコ女が、そう言った途端……KKK軍団が白頭巾を取り……。
ある者は……顔中に血管みたいなモノが受かんでるが……その血管みたいなモノは鮮やかな緑色。
ある者は、額の真ん中に鉄の杭みたいなモノを打ち込まれ……それでも生きてる。
ある者は、一見すると能面みたいな仮面を被っている……けど、その能面と顔の皮膚の境目が見えない……まるで、仮面と顔が一体化してるように……。
「たしかに、友達にやる真似じゃねえな……」
「私は、殺していい人間が居るなら、誰かを殺してもいいと思ってる奴だと考えてる。だから、私的には、このKKKもどきどもは、殺していい奴らだ。そして、生きてはいるが、もう人間とは言えないし、元にも戻せない。死んでるも同じだな」
「ちょ……ちょっと待ってよ?『誰かを殺してもいいと思ってる人間こそ殺してもいい』なら、あんたは、どうなるんだよッ⁉」
流石に、僕もツッコミを入れざるを得ない。
「そこが問題だ。私を殺せる奴が、そうそう居ない。私が死んで当然の糞野郎で、私みたいなのは絵に描いたような『正義の味方』に壮絶かつ無様に負けた方が子供の教育上良いのは、私自身が自覚してる。けど、誰かに殺される事で罪を償いたくても、その誰かに巡り会えない。3~4人がかりなら私を殺せそうな奴らには何組か心当りは有るが、そいつらでも、内1人は確実に死なせてしまうんで『無様な負け方』とは言えんな。困ったもんだ」
サイコ女は……大真面目な表情で、そう言った。本気で言ってるにせよ、ギャグのつもりにせよ……このサイコ女、やっぱり、ガチのサイコ女だ。
「じゃあ、提案だ。そいつと、私の『道具』を戦わせて、そいつが勝ったなら、その『聖女』とやらを解放する。これでどうだ?」
「勝手に決め……」
「ああ、やっぱり、私の言う通りにするのは嫌か。まぁ、そうだな、散々、酷い真似をやったんだから仕方ない。では、私は『ただし、戦うのは1人だけで、どいつと戦うかは、そっちで選んでいいぞ』って条件を付けるつもりだったが……そんなに私の提案を飲むのが嫌なら……全員と戦ってくれ」
「ちょっと待てッ‼ そんな罠、有ってたまるかッ‼」
「注意力が無かった、お前が悪い。注意深く聞いてりゃ判った筈だ。私が『道具』と単数形で言った事を……」
「あたしが手を貸してもいいか……?」
謎の女(その2)から助け船。
「向こうの世界から持って来た酒は、あと何本残ってる? ただし、飲みかけのと、店で定価で買った場合にクレーム付けたくなるような状態のヤツは除く」
「サントリーのオールドが3本と、吉四六と南泉の小瓶が2つづつ」
「サントリーは七〇〇㎖のヤツか?」
「うん」
ちょっと待て、こっちの命がかかってるのに、何の話をしてる?
こいつら、他人の命を何だと思って……。
「よし、お前が、そいつを魔法で1回支援する毎に、1本寄越せ。どれを寄越すかは、お前に任せる。それで手を打とう」
「わかった」
え……っ?
いや、待ってよ、人の命を賭けの対象にするよ~なデスゲーム系の話は大好きだけど……ここまで賭金(代り)が安っぽいデスゲーム系のギャンブルが有ってたまるかッ‼
「ところで、お前の手下、全員と戦えってのは……」
「こっちの話を聞こうともせずに、一方的にこっちの提案を拒絶した、そいつらの自己責任だ。そいつらに頑張ってもらうしか有るまい」
「なるほど……仕方ねえな」
仕方なくないよッ‼
「でも、せめて1対1の……えっと、そっち何人出すつもりだ?」
「5人」
「じゃ、1対1の5番勝負で手を打ってくれ」
「わかった。1対1の5番勝負、その阿呆男の全勝で、そいつらは解放。お前が魔法で支援する度に、そっちの酒を1瓶渡せ。他の連中が、代表選手のマヌケ野郎を魔法で支援するのは、かまわん。勝ちの条件は、相手が気絶その他の戦闘不能状態が一〇秒以上継続か死亡。もしくは、相手側の代表選手か相手側の誰かによるギブアップ。私は道具どもに指示はするが、魔法や科学技術を用いた支援は行なわない。その条件でいいか?」
「引き分けは?」
「そっちの勝ちと認める」
「あと、こっちがギブアップする場合は、そいつか、その『聖女』サマによるギブアップ宣言しか認めん。あたしは『ギブアップしろ』と助言するかも知れんが、最終的なギブアップの決断は、こいつか『聖女』サマだけが行なう資格を持つ事にしろ」
「なるほど。いいだろう。以上の条件で交渉成立か?」
「交渉成立だ」
なに、勝手に話を進めて……。
「すまんな……聞いての通りだ。お前を、あたしの魔法で助けられるのは……1回だけだ」
「え……えっと……さっきの話だと7回じゃ……?」
「1回しか助けられん」
「いや……待って、7回……」
「1回だ」
「だから、酒瓶は7本……」
「何度言わせる? 酒瓶が2本しか無くても、逆に数えきれんほどの数有っても1回だけしか助けん。判ったな? この世界の全部の酒樽を持って来ようが、あたしがレズで、その『聖女』サマをお前らが、あたしに献上しようが、1回は1回だ。話は、これで打ち切り。さっさと戦闘準備に入れ。戦いが夜の内に終んねえと、お前が不利になんだぞ、判ってんのか?」
「そ……そんな……」
「ま、この世界には、まだ、転生者が残ってるみたいだし、その『聖女』サマさえ無事なら、転生者なんぞ、いくらでも生み出せる筈だ。安心しろ、お前の代りなど、どれだけでも……」
「ち……違いますッ‼」
謎の女(その2)の最悪な台詞に続いて、聖女様の絶叫。
「転生者が何人居ようとも……貴方が……貴方だけが、ようやく巡り会えた私にとっての特別な……たった1人の御方ですッ‼」
多分……他人事だったら、すごくクサくてダサい台詞だろう……。
でも……。
ごお……っ。
体の中から、力が湧いてきた。
これまでの「火事場の馬鹿力」とは何かが違う……力が……。
負けてもいい……死んでもいい……ただ、この瞬間だけでも、僕が聖女様にとっての、特別な……たった1人でされ有れば……それでいい……。
不思議だな……。死んでもいいと思った瞬間……負ける気がしなくなった。
何で、同じ神様(神様だとして)から「お互いのやる事を邪魔し合え」って命令を受けてるのか?
何で、僕達を捕まえた奴の片割れが、僕達を助けるのか?
しかし……他に手段は無さそうだ。
ともかく謎の女(2人目)は、僕達を牢屋から出してくれた。
外は……もう夜中。
町の城壁の外に有る屋敷らしい場所の倉庫に偽装された建物……それが僕達が入れられていた牢屋の出入口だった。
「持ってけ。あと、昼間の間は、その布で顔を覆ってろ。お前の顔の皮膚の一部が太陽の光に弱くなってるとしても、これを被ってりゃ、外の様子は見えるが、火傷になるのは防げる筈だ。と言っても、外の様子は見えにくくなるんで、夜の間だけ行動するのがオススメだがな」
謎の女(2人目)は、倉庫に偽装されてた建物の中から持って来た武器や衣服、その他、リュックみたいな背負い鞄を地面に並べる。
「何故、こんな事をするのですか? 貴女の話では、貴女達にも、私達が敵か味方が判っていないのでは?」
聖女様は、そう訊いた。まぁ、当然と言えば、当然だ。
「そうだ。あんたらが敵か味方か判らないから、なるべく、あたしらの選択肢を減らさない方法を取った。ただ、あいつは、あんたらを監禁しておいた方が、こっちの選択肢は増えると判断し、あたしは、あんたらを自由にさせた方が、こっちの選択肢は増えると判断した」
「困った事に、それを議論しても、時間がかかるだけだ。どっちを選ぶにせよ、一番リスクが高いのは、決断に時間がかかる場合だ、ってのはお互いに意見が一致してると思うが……」
その時……。
「やっぱ……こうなったか……」
「う……裏切ったの?」
「え……えっと……まぁ……何と言うか……」
そう答えたのは……謎の女(2人目)。
「お前たちからすれば『裏切った』になるかも知れんな」
続いて答えたのは、謎の女(1人目)……つまり平気で人を殺しまくるサイコ女。
サイコ女の背後には……ああ、やっぱり……。「白人を差別してるのに、格好はKKKそのまんま」という悪趣味にも程が有る白頭巾軍団。
「そいつらが、お前の新しいお友達か?『國民の創生』でも上映したらどうだ?」
「あいにく、PCやらネット回線やらスピーカーやらモニタやらが無い。あと、こんな人種差別主義者の下衆どもなんて友達じゃない」
サイコ女が、そう言った途端……KKK軍団が白頭巾を取り……。
ある者は……顔中に血管みたいなモノが受かんでるが……その血管みたいなモノは鮮やかな緑色。
ある者は、額の真ん中に鉄の杭みたいなモノを打ち込まれ……それでも生きてる。
ある者は、一見すると能面みたいな仮面を被っている……けど、その能面と顔の皮膚の境目が見えない……まるで、仮面と顔が一体化してるように……。
「たしかに、友達にやる真似じゃねえな……」
「私は、殺していい人間が居るなら、誰かを殺してもいいと思ってる奴だと考えてる。だから、私的には、このKKKもどきどもは、殺していい奴らだ。そして、生きてはいるが、もう人間とは言えないし、元にも戻せない。死んでるも同じだな」
「ちょ……ちょっと待ってよ?『誰かを殺してもいいと思ってる人間こそ殺してもいい』なら、あんたは、どうなるんだよッ⁉」
流石に、僕もツッコミを入れざるを得ない。
「そこが問題だ。私を殺せる奴が、そうそう居ない。私が死んで当然の糞野郎で、私みたいなのは絵に描いたような『正義の味方』に壮絶かつ無様に負けた方が子供の教育上良いのは、私自身が自覚してる。けど、誰かに殺される事で罪を償いたくても、その誰かに巡り会えない。3~4人がかりなら私を殺せそうな奴らには何組か心当りは有るが、そいつらでも、内1人は確実に死なせてしまうんで『無様な負け方』とは言えんな。困ったもんだ」
サイコ女は……大真面目な表情で、そう言った。本気で言ってるにせよ、ギャグのつもりにせよ……このサイコ女、やっぱり、ガチのサイコ女だ。
「じゃあ、提案だ。そいつと、私の『道具』を戦わせて、そいつが勝ったなら、その『聖女』とやらを解放する。これでどうだ?」
「勝手に決め……」
「ああ、やっぱり、私の言う通りにするのは嫌か。まぁ、そうだな、散々、酷い真似をやったんだから仕方ない。では、私は『ただし、戦うのは1人だけで、どいつと戦うかは、そっちで選んでいいぞ』って条件を付けるつもりだったが……そんなに私の提案を飲むのが嫌なら……全員と戦ってくれ」
「ちょっと待てッ‼ そんな罠、有ってたまるかッ‼」
「注意力が無かった、お前が悪い。注意深く聞いてりゃ判った筈だ。私が『道具』と単数形で言った事を……」
「あたしが手を貸してもいいか……?」
謎の女(その2)から助け船。
「向こうの世界から持って来た酒は、あと何本残ってる? ただし、飲みかけのと、店で定価で買った場合にクレーム付けたくなるような状態のヤツは除く」
「サントリーのオールドが3本と、吉四六と南泉の小瓶が2つづつ」
「サントリーは七〇〇㎖のヤツか?」
「うん」
ちょっと待て、こっちの命がかかってるのに、何の話をしてる?
こいつら、他人の命を何だと思って……。
「よし、お前が、そいつを魔法で1回支援する毎に、1本寄越せ。どれを寄越すかは、お前に任せる。それで手を打とう」
「わかった」
え……っ?
いや、待ってよ、人の命を賭けの対象にするよ~なデスゲーム系の話は大好きだけど……ここまで賭金(代り)が安っぽいデスゲーム系のギャンブルが有ってたまるかッ‼
「ところで、お前の手下、全員と戦えってのは……」
「こっちの話を聞こうともせずに、一方的にこっちの提案を拒絶した、そいつらの自己責任だ。そいつらに頑張ってもらうしか有るまい」
「なるほど……仕方ねえな」
仕方なくないよッ‼
「でも、せめて1対1の……えっと、そっち何人出すつもりだ?」
「5人」
「じゃ、1対1の5番勝負で手を打ってくれ」
「わかった。1対1の5番勝負、その阿呆男の全勝で、そいつらは解放。お前が魔法で支援する度に、そっちの酒を1瓶渡せ。他の連中が、代表選手のマヌケ野郎を魔法で支援するのは、かまわん。勝ちの条件は、相手が気絶その他の戦闘不能状態が一〇秒以上継続か死亡。もしくは、相手側の代表選手か相手側の誰かによるギブアップ。私は道具どもに指示はするが、魔法や科学技術を用いた支援は行なわない。その条件でいいか?」
「引き分けは?」
「そっちの勝ちと認める」
「あと、こっちがギブアップする場合は、そいつか、その『聖女』サマによるギブアップ宣言しか認めん。あたしは『ギブアップしろ』と助言するかも知れんが、最終的なギブアップの決断は、こいつか『聖女』サマだけが行なう資格を持つ事にしろ」
「なるほど。いいだろう。以上の条件で交渉成立か?」
「交渉成立だ」
なに、勝手に話を進めて……。
「すまんな……聞いての通りだ。お前を、あたしの魔法で助けられるのは……1回だけだ」
「え……えっと……さっきの話だと7回じゃ……?」
「1回しか助けられん」
「いや……待って、7回……」
「1回だ」
「だから、酒瓶は7本……」
「何度言わせる? 酒瓶が2本しか無くても、逆に数えきれんほどの数有っても1回だけしか助けん。判ったな? この世界の全部の酒樽を持って来ようが、あたしがレズで、その『聖女』サマをお前らが、あたしに献上しようが、1回は1回だ。話は、これで打ち切り。さっさと戦闘準備に入れ。戦いが夜の内に終んねえと、お前が不利になんだぞ、判ってんのか?」
「そ……そんな……」
「ま、この世界には、まだ、転生者が残ってるみたいだし、その『聖女』サマさえ無事なら、転生者なんぞ、いくらでも生み出せる筈だ。安心しろ、お前の代りなど、どれだけでも……」
「ち……違いますッ‼」
謎の女(その2)の最悪な台詞に続いて、聖女様の絶叫。
「転生者が何人居ようとも……貴方が……貴方だけが、ようやく巡り会えた私にとっての特別な……たった1人の御方ですッ‼」
多分……他人事だったら、すごくクサくてダサい台詞だろう……。
でも……。
ごお……っ。
体の中から、力が湧いてきた。
これまでの「火事場の馬鹿力」とは何かが違う……力が……。
負けてもいい……死んでもいい……ただ、この瞬間だけでも、僕が聖女様にとっての、特別な……たった1人でされ有れば……それでいい……。
不思議だな……。死んでもいいと思った瞬間……負ける気がしなくなった。
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