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第三章:絶地7騎士 ― The Magnificent Seven ―

(ⅵ)

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「よう、小僧」
「あんたは……」
 ともかく長ったらしい名前の眼鏡っ娘に案内された場所に有ったのは……見覚えの有るトラック。ただし、コンテナ部分には、あの時とは変っていて、製麺所のロゴと、ラーメンやうどんの絵が描かれている。
 その運転席に居たのは、あの夜に「九段」で出会い、俺達を「神保町」の奴らの本拠地まで案内した「魔導師」。
「名乗って無かったな……俺は……」
「クソ長い覚えにくくて訳の判んない名前は、もういい。あんた達の間で、普段使ってる名前を教えてくれ」
「あっ?」
「いちいち『階位ナニ=カニ・ナンタカラカンタラ・何色のHogeHogePiyoPiyoさん、下請業者の課長さんが仕事の打ち合わせの為にお越しです。何番会議室に御案内しています。すぐ行って下さい』なんてやってる訳じゃないだろ」
「あ~、あたしは……その『ドジっ』か『紫の女司祭プリーティス』……もしくは『女司祭プリーティス』です」
「俺は……『緋色の皇帝エンペラー』か『皇帝エンペラー』あと……ニワトリ」
「偉いのか、下っ端なのか判んない呼び名だな」
「俺達の組織では、組織内での呼び名は、タロットカードから付けられてる。ニワトリは……これだ」
 その「ニワトリ」男が呪文を唱えると……。
「なるほどね……」
 ヤツの右肩に半透明の赤い鳥が現れた。つまり、使い魔にちなんだ渾名か。
「正式な魔導師や候補生はオーラの『色』と大アルカナ、魔導師じゃないメンバーは小アルカナの『ソード』『棍棒ワンド』『聖杯カップ』『硬貨コイン』『騎士』『女王』『王子』『王女』にちなんだ名前で呼ばれる」
 なるほど、さっぱり判らん。でも、説明してる時の楽しそうな感じからして、こいつが魔術オタクの成れの果てな事だけは想像が付いた。学校高専にも、こんなのがたまに居る。
「で、あんた達は、そうだな……普通の会社で云うなら、平社員なのか管理職なのか? それとも、まさか重役とか役員?」
「あ……俺は魔導師としては下から2番目……。まぁ、係長になったばかり、ってとこかな?」
「えっと……あたしは……その……会社の喩えだと……まだ正式な社員じゃない……研修員みたいなものです」
「『九段』には、強力な『魔導師』や『呪物』が出入りするのを検知する結界が、あっちこっちに張られていてな……。ウチの中でも上位のヤツが『九段』に入る事が有るとすれば……『靖国神社』側から招かれた時か、逆に全面戦争を覚悟した時だけだ。だから、お前に力を貸せるのは、俺達、下っ端だけだ」
「どう云う事だ? あんた達、神保町の自警団が……俺に協力してくれるのか?」
「礼なら、死んだお前の親父に言え。お前の親父とは、あんな事になったが……お前の親父を尊敬してる奴は、神保町にもかなり居る」
「そうか……」
 そうか……少なくとも今は……俺は……「石川智志さとしの息子」であって、1人の男「石川勇気」じゃない訳か……。
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