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第一章:宿怨 ― Hereditary ―

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「監視されてるのか?」
「みたい……」
「ここです。この建物の地下」
 「靖国神社」の従業員達は、あたし達を見ると、どこかに連絡している。そう、「金持ちの外国人向けの観光地」であるここでは、「金持ちに見えない上に『従業員』でも『出入り業者』でもない『日本人』」は……あからさまな不審者だ。
「和服着てるのは……1人残らず『敵』か?」
「まぁ……他に言い方が無いけど……」
「ここまで来る途中の監視カメラの場所は?」
「一〇〇%とは言えないけど……大体は押さえてる」
「私が人間の敵を何とかする。そっちは……監視カメラを何とかしてくれ」
「了解」
「ちょっと待て、何を……」
 荒木田さんは……すぅ……と深呼吸。
『ねぇ、あれやって、あれ』
 その時、荒木田さんの「神様」が何か言い出した。荒木田さんは、一瞬、嫌な顔をする。
「私が変な事をしても、気にせず、そっちの仕事をしてくれ」
「えっ?」
「最も明るき昼も……最も暗き夜も……如何なる悪も我が眼差しより逃れる事あたわず。悪しき力に魅入られし者達よ。畏れよ、我が力を……天照大神の光を……」
 荒木田さんが、そう唱えると……周囲の道端に居る「靖国神社」の従業員が次々と倒れる。
「えっ?」
「早く、監視カメラをブッ壊してくれ‼ 多分、人間の体温を死なない程度に上げるのはこっちが得意だけど、単純な熱量は、そっちの方が上だ‼」
「わ……判った」
 続いて、あたしの能力ちからで街頭監視カメラから次々と煙が上がる。
「突入するぞ。中に人間が居れば、私の能力ちからで感知出来る」
「ねぇ、今の何? 昔のファンタジー漫画に出て来るような、そんな間抜けな呪文唱えなくて、あたし達、能力ちからを使えるよね?」
「アメコミの『グリーンランタン』のパロだ……。こっちの神様は、ここ二~三〇年ぐらいアメコミにハマってるみたいで、時々、アレをやらないと機嫌が悪くなる」
「はぁッ?」
「一体全体、何が、どうなってるんだよ⁉」
「だから、『日本の神様』が、何でアメコミ・オタクなの?」
「知らん。どうも、人間と『神様』じゃ『国』の定義そのものが違うみたいだ。どっちみっち、『神様』からすれば、人間の文化なんて、あっと云う間に変るモノだし、住んでる人間も結構あっさり入れ替わる。『日本の神様』でも『日本の古い文化』に愛着が有る訳じゃないし、外国の文化にハマる事も有るみたいだ」
「訳がわかんないよッ‼」
 まぁ、とは言え、私の「神様」も、「訳だけど。
「取り憑かれてる私も、さっぱり訳が判らん。未だに、二〇一一年にライアン・レイノルズ主演の『グリーンランタン』の映画が制作中止になった事について愚痴ってる」
「だから、何の話だよ⁉」
 事情を判ってない勇気が叫ぶ。
「ともかく、子供らしいのが二〇人以上と大人の男が三~四名、上の階に……大人の男が一〇名ほど地下に居る」
 あたし達は、窓や壁に和風……と言ってもあくまで「日本をよく知らない外国人がイメージする和風」の飾り付けがされた、屋上には神社もしくは神社風の外見のペントハウスが有る、5階建てのビルに入る。外見こそアレだけど、中身は普通の雑居ビルっぽい作りだ。
「その……大人って、銃は持ってるの?」
「すまん、私に感知出来るのは『生きた人間の存在』だけだ」
「どうするのが良いと思う?」
「敵が銃なんかを持ってると、私達の能力ちからが有ってもてこずる可能性が高い。下を急襲して……戦闘力を奪う」
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