上 下
55 / 69
第四章:ありふれた悪事/Ordinary Person

(4)

しおりを挟む
 ……。
 …………。
 ……………………。
 どうした?
 何だ、この嫌な雰囲気は?
 後援会の奴らも、選挙管理委員会の連中も……俺を……何と言うか……超危険な犯罪者でも見るような……怯えた目で見ていた。
 おい、兄が生意気な妹を折檻して何が悪いんだ? 折檻の結果、クソ妹が死んでも、事故だろ事故。
「こ……こ……こ……こ……お……おい……い……一郎くん……き……き……君が……ほ……ほんとうに……ひ…っ」
 あ、しまった。
 「正義の味方」どもによる洗脳を解くには……何も殺す必要は無かったのか……。
 どうやら、俺を裏切った親父の後援会の会長は……ショックで洗脳が解けつつあるようだ。
 パニクってるように見えるのは、洗脳が解けるまでの一時的なモノだろう。
 よし、俺が市長になったら、必要最小限の犠牲で、「正義の味方」どもが愚民どもにかけた洗脳を解くようにしよう。
 見せしめに何人か殺して、他の奴らはショック療法で洗脳を解けば済む。
「あああ……もしもし……警察……うぎゃあッ‼ うぎゃっ‼ うぎゃぎゃぎゃぎゃッ‼」
 あ、後援会の奴らの中に、まだ洗脳が解けてないのが居た。
「ふざけんじゃねえぞ、このボケっ‼ 何、勝手に死んでんだ、クソ、ゴミ、クズ、アホっ‼」
 銃弾を何発も浴びたそのクソ野郎は床に倒れ落ちた……。
 まだ、みじめに生きてやがるが……助かる可能性は低いだろう。
 でも……俺に拳銃で撃たれた位で、何、勝手に死のうとしてやがるッ⁉
 俺は、そいつの死体になりかけてる体を蹴った。
 蹴った。
 蹴った。
 怒りに任せて何度も蹴った。
「死ぬな、ボケっ‼ 勝手に死ぬんじゃね~って、言ってんのが判んね~のかッ‼ 俺を裏切りやがったクソが死にやがったら、俺が市長になっても『ざまぁ』ものにならね~じゃね~かッ‼」
「大丈夫ですよ。義理の弟さんが、まだ生きてるじゃないですか。多分、残りの一生、ずっと入院中でしょうけど」
 えっ? あ……待てよ。そうか……。
「先輩が、世界で一番、『ざまぁ』をしたい相手は、まだ生きてて、しかも、何1つ対処も反抗も出来ないまま、先輩のやる事を見てくやしがり続けるしか無いんですよ」
 あ……ああ、そうだ……。いい事を言ってくれた見習い君。
 全てを失なったと思っていたけど……一番、大事な絆だけは残っていた。
 俺とクソ義弟との間の憎しみの絆だ。
 この絆が有る限り、俺は俺でいられる。
 ありがとう、優斗。生きててくれて、ありがとう。そして、嫁も、嫁の腹中に居た子供も、地位も、健康も、全部失なった状態のまま、病室でくやしがり泣き続けろ。
 俺が市長になった暁には、お前の入院費は、市の予算で出してやる。
「おりゃぁッ‼」
 ドンっ‼
「死ねえッ‼」
 バンっ‼
「ざまあみろッ‼」
 ズキュ~ンっ‼
 そして……俺は、この部屋に居る俺が「ざまぁ」をやる為に必須でない人物どもを血祭りに上げ……。
「弾、切れちゃった。拳銃のマガジン有る?」
「これで良かったかな?」
「そうそう、これ……あれ、交換のやり方良く判んないんで……」
「なら、俺が換えてやろう。ほら、終ったぞ。ついでに予備の銃も持ってけ」
「あ……気が効く……えっ?」
 そこに見習い君は居なかった。
 そこに居た奴が着ていたのは……クリムゾン・サンシャインの白いコスチュームじゃない。
 ……黒一色……。
「また会ったな2代目。前回やった名乗りは省略してもいいかな? 自分でやってて、自分が馬鹿に思えてくるんでな」
 そこに居たのは……永遠の夜エーリッヒ・ナハトだった。
「あと、金属バットにサバイバル・ナイフも有るが、要るか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

SEVEN TRIGGER

匿名BB
SF
20xx年、科学のほかに魔術も発展した現代世界、伝説の特殊部隊「SEVEN TRIGGER」通称「S.T」は、かつて何度も世界を救ったとされる世界最強の特殊部隊だ。 隊員はそれぞれ1つの銃器「ハンドガン」「マシンガン」「ショットガン」「アサルトライフル」「スナイパーライフル」「ランチャー」「リボルバー」を極めたスペシャリストによって構成された部隊である。 その中で「ハンドガン」を極め、この部隊の隊長を務めていた「フォルテ・S・エルフィー」は、ある事件をきっかけに日本のとある港町に住んでいた。 長年の戦場での生活から離れ、珈琲カフェを営みながら静かに暮らしていたフォルテだったが、「セイナ・A・アシュライズ」との出会いをきっかけに、再び戦いの世界に身を投じていくことになる。 マイペースなフォルテ、生真面目すぎるセイナ、性格の合わない2人はケンカしながらも、互いに背中を預けて悪に立ち向かう。現代SFアクション&ラブコメディー

特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第三部 『暗黒大陸』

橋本 直
SF
遼州司法局も法術特捜の発足とともに実働部隊、機動隊、法術特捜の三部体制が確立することとなった。 それまで東和陸軍教導隊を兼務していた小さな隊長、クバルカ・ラン中佐が実働部隊副隊長として本異動になることが決まった。 彼女の本拠地である東和陸軍教導隊を訪ねた神前誠に法術兵器の実験に任務が課せられた。それは広域にわたり兵士の意識を奪ってしまうという新しい発想の非破壊兵器だった。 実験は成功するがチャージの時間等、運用の難しい兵器と判明する。 一方実働部隊部隊長嵯峨惟基は自分が領邦領主を務めている貴族制国家甲武国へ飛んだ。そこでは彼の両方を西園寺かなめの妹、日野かえでに継がせることに関する会議が行われる予定だった。 一方、南の『魔窟』と呼ばれる大陸ベルルカンの大国、バルキスタンにて総選挙が予定されており、実働部隊も支援部隊を派遣していた。だが選挙に不満を持つ政府軍、反政府軍の駆け引きが続いていた。 嵯峨は万が一の両軍衝突の際アメリカの介入を要請しようとする兄である西園寺義基のシンパである甲武軍部穏健派を牽制しつつ貴族の群れる会議へと向かった。 そしてそんな中、バルキスタンで反政府軍が機動兵器を手に入れ政府軍との全面衝突が発生する。 誠は試験が済んだばかりの非破壊兵器を手に戦線の拡大を防ぐべく出撃するのだった。

神造のヨシツネ

ワナリ
SF
 これは、少女ウシワカの滅びの物語――。  神代の魔導と高度文明が共存する惑星、ヒノモト。そこは天使の魔導鎧を科学の力で蘇らせたロボット『機甲武者』で、源氏、平氏、朝廷が相争う戦乱の星。  混迷を深める戦局は、平氏が都落ちを目論み、源氏がそれを追って首都キョウトに進撃を開始。そんな中、少女ウシワカは朝廷のツクモ神ベンケイと出会い、神造の機甲武者シャナオウを授けられる。  育ての親を討たれ、平氏討滅を誓い戦士へと覚醒するウシワカ。そして戦地ゴジョウ大橋で、シャナオウの放つ千本の刃が、新たなる争乱の幕を切って落とす。 【illustration:タケひと】

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

処理中です...