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第三章 糞蠅/Breathless

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 何故……こんな事になってしまったんだ?
 俺達は……「正義の味方」を自称する犯罪者どもが裏でやっている悪事を公表する……たった、それだけの事をやるつもりだった。
 しかし、動画サイトの俺達のアカウントはBANされた。……もちろん、「正義の味方」どもの陰謀だ。
 妹の亭主は「正義の味方」どもに受けた暴行が原因で心身ともに廃人、そして、同じく「正義の味方」どもに暴行を受けた妹は腹の中に居た子供を流産。……奴らにとって都合が悪い俺を追い詰める為に「正義の味方」どもは、こんな酷い真似までしやがった。
 そのショックで、久留米の市長だった俺の親父は……まぁ、その何だ……脳味噌が可哀想な事になった。……そうだ、こうなる事を見越して、「正義の味方」どもは俺の妹とその亭主を拉致監禁拷問したのだ。
 市議会の市長親父派の会派の長老格だった古川のおっちゃんは……一家皆殺し。ああ……俺が……「正義の味方」どもの「正義」に屈服さえしていれば……。
 携帯電話ブンコPhoneでネットの地域ニュースを調べてみると……親父の選挙事務所の警備顧問だった猿渡のおっちゃんが撲殺死体で発見されたらしい。ああ、最後に会った時は、ちょっと具合が悪そう程度だったのに……。
 そして……副市長の古賀までもが「正義の味方」に殺されたらしい……。
 これに関しては、いいお報せであると同時に、悪いお報せでもある。
 いいお報せは、最早、市長親父派の次期市長候補は、俺しか残っていない。俺が次期市長になれる可能性は大だ。
 悪いお報せは……俺に古賀殺害の濡れ衣が着せられているらしい事……。
 これを何とかしなければ……。
 残っている仲間の堤と野口に連絡を取ろうとしても……返事がない。まるで、死んだみたいに……。
 あれ? そう言や、山下は……あ、あいつ裏切ったんだな、たしか。
 何とか残る仲間2人に連絡を取ろうと……ああ、そうだ、野口のSNSアカウントが有った……。
 えっ?
 何だ、こりゃ?
 野口がSNSに変な動画を投稿……うわああああッ‼
『おい……ちゃんと撮影始めてるか?』
『は……はい』
 野口が投稿した動画に映っていたのは……黒一色のコスチュームの男……それは……「正義の暴徒」どもの中でも、特に俺を執拗に狙っていた……「永遠の夜エーリッヒ・ナハト」だ……。
『我が名はエーリッヒ・ナハト。紅の夕日が沈んだのちに訪れる「永遠の夜」だ。警察と久留米市内の「御当地ヒーロー」達に告ぐ。お前たちは、何故、市内で「ホームレス狩り」「関東難民狩り」を行なっていた緒方市長の馬鹿息子を殺さなかったのだ? 殺す機会が何度も有ったにも関わらずな。あのような人間の屑に人権を認めるなど、愚かしいにも程が有る』
 いや、待て、何を言ってる?
 ヒトモドキを叩きのめす事は公共の利益の為だ。
 SNSでは、みんな、そう言ってるだろッ‼
『「クリムゾン・サンシャイン」を名乗り、あの人間の屑どもを他の「御当地ヒーロー」より護っていた愚か者は既に我が手で抹殺した』
 ……えっ? じゃあ、こいつが……俺達のクリムゾン・サンシャインを殺した……真犯人。
『そして、他の「御当地ヒーロー」達よ。お前達がお前達の正義に縛られ、殺すべき者を殺せないのなら、この俺が……奴らを誅戮する』
『あの……「ちゅうりく」って、どう云う意味すっか?』
『……殺すって事だよッ‼ 俺がしゃべってる途中に、余計な茶々を入れるなッ‼』
『それだったら……その……普通に「殺す」って言った方が判り易い……』
『うるさい、余計な事は、これ以上、言うな』
『じゃ……その、最後に1つだけ質問が有るんですけど』
『わかった、わかった。これが最後だぞ』
『あ……あの……俺は助けてくれますよね? えっと、広報活動に協力したんで……その……うぎゃあっ‼』
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