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終章:一週間後

シルバー・ローニン(2)

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「報告書に記載した通り、日本に約二〇箇所ある伝統文化地域の大半が何者かによって統治機構・政治機構を事実上乗っ取られ、実験場にされていたとしか考えられない」
 瀾師匠は、オンライン会議で日本各地の特殊武装法人監査委員会にそう説明していた。
『その調査の過程で、君の言う「何者か」は、君達が彼等の存在に気付いた事を……』
「当然、先方も既に気付いている。我々が奴らの存在に気付いた事を……。こっちが奴らの存在に気付いた事を、奴らに気付かれた段階で、おそらくは、奴らに宣戦布告をしたのも同じだ」
『奴ら行なっていた「実験」の目的は何だ?』
「おそらく、半ば閉じられた社会やコミュニティの構成員に『不可逆的な脳改造』を行なった場合に、その社会やコミュニティが正常に機能するかの実験だ。まずは、その社会やコミュニティの指導者層を脳改造し、それで巧く行けば次は一般大衆を脳改造する。更に巧く行けば、より大きな社会やコミュニティの構成員を脳改造する」
『その脳改造を行なわれた者達を元に戻す事は可能か?』
「不可能だ。様々な方式を試していたようだが……どの方式も脳の一部を切除し、別の『何か』に置き換える方式だ」
『脳の一部とは?』
「正確さより判り易さを優先した説明をするなら……『自由意志』に関する部位だ。学術的に正確な説明は報告書を参照願いたい」
『脳改造をされた者は……人間と言えるのか?』
「その点に関して結論を出したければ、まずは、哲学者と法学者と社会学者を集めてくれ。とは言え、二一世紀に入ってから、新たなる『人間と言えるか微妙な者達』が発見され、彼らと折り合いを付け共存していく為、社会が変わらざるを得ないのは……ある意味で日常の一部だ。楽観的に考えよう。これまでと同じく、脳改造された者が既に一定数居るなら……彼ら存在している社会を築く事は不可能じゃない筈だ」
『彼らは脳改造をされていない者と何が違うのだ?』
「奴らも、それについての細かい点を知りたいが為に、大規模な実験を行なっていたのだろう」
『では、「奴ら」とは?』
「使われていた脳改造の方式は、各TCAによって異なっていたが、ある共通点が有った。過去に、ある者達が使った技術か、またはその発展形。もしくは、そいつらを支援している企業・団体が持っている技術だ」
『やはり……彼らか……』
「そうだ……。私達は……何度目かの『神の怒りフューリー』との大規模な『戦争』に突入する」
 瀾師匠は、深く息をすると……続けた。
「ただし、この『戦争』は……勝つ為の方法メソッドが確立されていない『戦争』だ。我々、俗に『正義の味方』『御当地ヒーロー』と呼ばれている者達と……『神の怒りフューリー』の……少なくとも一方のほぼ全『細胞』が消え去るまで終る事は無い。……どこかに居るかも知れない頭のいい誰かが……何度も行なわれてきた、この『戦争』を終らせる巧い手を考え付かない限りは……」
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