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序章
Riget/Exodus
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『心せよ‼ 脱出は諸刃の剣なり‼』
ラース・フォン・トリアー監督「キングダム:エクソダス〈脱出〉」より
「すまない。貴方が正常な判断が可能な状態かを確認する為に質問する。貴方の名前は?」
野太い……少なくとも三〇代かそれ以降の男の声だった。
だが、何か……言葉に出来ない違和感が有った。
そして……ようやく、気付く。
自分が意識を失なっていた事に。
そして、意識を失なっていた間に、変な夢を見た気がする。
富士山が爆発し……けど、次の瞬間、富士山は元通り……。
そして、突然……自衛隊っぽいけど、何かが違う軍人達が、見た事もない古臭い外見の戦車と共に出現。
……軍人達が呆然と凝視めている方向には、バカデカいキノコ雲。
どう考えても夢だ。
支離滅裂過ぎだろ。
目を開くと……そこには……。
「ええええ……⁉」
二〇世紀の子供向けヒーロー番組に出て来そうな如何にもな「正義の味方」っぽい仮面。
いや、多分、本当に俗に「正義の味方」と呼ばれてるテロリストどもなんだろうが……。
「落ち着いてくれ、と言っても無意味かも知れないが、ともかく落ち着いてもらえないか? 早く、ここから離れないと、貴方の健康に重大な悪影響が起きる虞れが有る」
「ええええ? な……どういう……」
「有毒性の火山ガスが大量発生してる上に……火山灰は目や呼吸器の粘膜を傷付ける可能性が大きい。我々の仲間の救護チームと被災者の移送チームが近くに居る。歩けるか?」
「あ……ああ……」
俺は、「正義の味方」と呼ばれてる(奴ら自身は、そう名乗ってないらしいが)テロリストの肩を借りて、何とか歩き出す。
と言っても……俺達が、ここでやってた事も、警察の御厄介になる可能性が無いだけで、テロと見做す奴も居るよ~な真似だったのだが。
バルブ期に日本に出稼ぎに来たまま、そのまま日本に居着きやがったブラジル人が住む団地が、この近くに有った。
そして、近隣住民から、ブラジル人どものせいで治安が悪化してるんで何とかして欲しい、って要望が有った、って話を、与党の地方議員が俺が所属してる……自称「政治団体」……実態は「暴力系何でも屋」に持ち込んだ。俺達の「政治団体」のメンバー全員が1~2ヶ月は遊んで暮せる程度の金と共に。
ついでに、警察には、その地方議員が話を付け俺達が逮捕される心配は無いらしい。
早い話が、そのブラジル人どもを襲撃して、団地から追い出せ、死人が出ても問題無し、って事だ。
俺達は歓び勇んで、拳銃やナイフを手に団地に向かい……でも、仲間内では「役立たず」扱いされ、5つぐらい年下の後輩からさえ舐められまくってる俺は、襲撃に参加出来ずに見張り役。
要は、「正義の味方」と呼ばれてるテロリストどもが俺達を止めに来た場合に、見付け次第、仲間に報せて、何なら仲間が逃げる場合の囮になれ、って事だ。
いつもこうだ……。
あの……クソったれな養家から逃げ出したのに……因習一家に居た時の方がまだマシだった、って状況にドンドン堕ちていった。
そして、仲間が楽しくクソ外人どもを駆除してる最中……。
「あ……あのさ……」
「何ですか?」
「え……えっと……意識失なって良く判んね~んだけど……」
俺の頭の中で、ようやく、訊くべき質問が言葉になった。
「あの……富士山、爆発したの?」
「ああ、山の形が変るレベルの歴史的大爆発のようだ。……多分、首都圏は壊滅している」
ラース・フォン・トリアー監督「キングダム:エクソダス〈脱出〉」より
「すまない。貴方が正常な判断が可能な状態かを確認する為に質問する。貴方の名前は?」
野太い……少なくとも三〇代かそれ以降の男の声だった。
だが、何か……言葉に出来ない違和感が有った。
そして……ようやく、気付く。
自分が意識を失なっていた事に。
そして、意識を失なっていた間に、変な夢を見た気がする。
富士山が爆発し……けど、次の瞬間、富士山は元通り……。
そして、突然……自衛隊っぽいけど、何かが違う軍人達が、見た事もない古臭い外見の戦車と共に出現。
……軍人達が呆然と凝視めている方向には、バカデカいキノコ雲。
どう考えても夢だ。
支離滅裂過ぎだろ。
目を開くと……そこには……。
「ええええ……⁉」
二〇世紀の子供向けヒーロー番組に出て来そうな如何にもな「正義の味方」っぽい仮面。
いや、多分、本当に俗に「正義の味方」と呼ばれてるテロリストどもなんだろうが……。
「落ち着いてくれ、と言っても無意味かも知れないが、ともかく落ち着いてもらえないか? 早く、ここから離れないと、貴方の健康に重大な悪影響が起きる虞れが有る」
「ええええ? な……どういう……」
「有毒性の火山ガスが大量発生してる上に……火山灰は目や呼吸器の粘膜を傷付ける可能性が大きい。我々の仲間の救護チームと被災者の移送チームが近くに居る。歩けるか?」
「あ……ああ……」
俺は、「正義の味方」と呼ばれてる(奴ら自身は、そう名乗ってないらしいが)テロリストの肩を借りて、何とか歩き出す。
と言っても……俺達が、ここでやってた事も、警察の御厄介になる可能性が無いだけで、テロと見做す奴も居るよ~な真似だったのだが。
バルブ期に日本に出稼ぎに来たまま、そのまま日本に居着きやがったブラジル人が住む団地が、この近くに有った。
そして、近隣住民から、ブラジル人どものせいで治安が悪化してるんで何とかして欲しい、って要望が有った、って話を、与党の地方議員が俺が所属してる……自称「政治団体」……実態は「暴力系何でも屋」に持ち込んだ。俺達の「政治団体」のメンバー全員が1~2ヶ月は遊んで暮せる程度の金と共に。
ついでに、警察には、その地方議員が話を付け俺達が逮捕される心配は無いらしい。
早い話が、そのブラジル人どもを襲撃して、団地から追い出せ、死人が出ても問題無し、って事だ。
俺達は歓び勇んで、拳銃やナイフを手に団地に向かい……でも、仲間内では「役立たず」扱いされ、5つぐらい年下の後輩からさえ舐められまくってる俺は、襲撃に参加出来ずに見張り役。
要は、「正義の味方」と呼ばれてるテロリストどもが俺達を止めに来た場合に、見付け次第、仲間に報せて、何なら仲間が逃げる場合の囮になれ、って事だ。
いつもこうだ……。
あの……クソったれな養家から逃げ出したのに……因習一家に居た時の方がまだマシだった、って状況にドンドン堕ちていった。
そして、仲間が楽しくクソ外人どもを駆除してる最中……。
「あ……あのさ……」
「何ですか?」
「え……えっと……意識失なって良く判んね~んだけど……」
俺の頭の中で、ようやく、訊くべき質問が言葉になった。
「あの……富士山、爆発したの?」
「ああ、山の形が変るレベルの歴史的大爆発のようだ。……多分、首都圏は壊滅している」
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