魔導兇犬録：哀 believe

第八章：Reborn

(3)

「師匠、どうなってんですか⁉ 魔法を解いたら、何で、こんな事が……‼」
「し……知らん……何でだ⁉」
　水天宮の参道には……突然、無数のドブネズミとゴキブリが溢れ出ていた。
「お前……本当に何も知らんのか⁉」
「本当に何も知りませんッ‼」
　ゴキブリやドブネズミは思い思いの方向に走り出してるようで……。
「うわあああ……」
「な……何だ、こりゃ？」
　露店の人や、今日の試合の観客らしい人達が慌てふためいている。
　もちろん……嫌がらせ以上の実害は無い魔法だ……。
　ゴキブリやドブネズミに集たかられた出店の食材が使えなくなる以外は……。
　でも……地味に効果的な嫌がらせだ。
「師匠……魔法で何とか……」
「知らん……こんな状態を何とかする魔法など……逆に……しまった……そうか……」
「えっ？」
「やられた……我々『魔法使い』の思﹅い﹅込﹅み﹅を﹅逆﹅用﹅す﹅る﹅魔﹅法﹅だ」
「だ……だから……何が起きて……」
「うわあああ……」
　突然、師匠の守護天使が出現。
　そして……次々と攻撃……。
「師匠ッ‼」
　あたしは、自分の守護天使を呼び出して……。
「あんぎゃ～‼」
「うげっ……」
　あたしの守護天使が口から吐き出した霊力が師匠の守護天使を直撃。
「何をするッ⁉」
「そう言いたいのは、こっちですよ？ 何やってんですか？ 何考えてんですか？ 一般人の観客を魔法で攻撃するって？」
「阿呆ッ‼ あいつら……この光景を携帯電話ブンコＰｈｏｎｅで撮影してたんだぞ‼ こんな光景……ネットで拡散されたら……我々の商売が……」
　駄目だ……。
　駄目だ、この師匠……。
「だから……一体、何が起きてんですか？」
「あ……ああ……私が感じた魔法の気配は……多分、このネズミやゴキブリを……眠らせておく魔法だ」
「へっ？」
「何者かが……どこからか集めたネズミやゴキブリを……この辺りに潜ませて……魔法で眠らせていたんだ……」
「だから、何の為に？」
「嫌がらせだ……。普﹅通﹅の﹅魔﹅法﹅と﹅は﹅発﹅想﹅が﹅逆﹅の﹅魔﹅法﹅だ﹅。魔﹅法﹅が﹅解﹅け﹅た﹅時﹅に﹅初﹅め﹅て﹅実﹅害﹅が﹅出﹅る﹅タイプのな」
「あの……師匠……」
「何だ？」
「それって……師匠が、このイベントを妨害しようとしてる誰かの罠に、まんまとハマったって事ですか？」
「阿呆ッ‼ 人聞きの悪い事を言うなッ‼」
「いや、それ以外の何ですか、これッ⁉」