83 / 125
第一〇章:Where have all the good men gone? And where are all the gods?
(4)
しおりを挟む
翌朝、トラックで移動中に、クソ女の親類に、昨日の晩に沙也加ちゃんとやった話をする。
『そう言や、昔、ある学者がカルト宗教に関するシミュレーションをやった論文を見た事が有る』
「へっ?」
『今の「大阪」はカルト宗教に支配されてるようなモノだ。精神操作能力者を量産してるけど……原理はともかく、出来る事は、古典的な洗脳の強化版に過ぎない』
「ま……まぁ、言われてみれば……」
『精神操作能力について良く知らない奴らは、精神操作能力を万能の力だと思い込む事が多い。どんなトンデモない特異能力の持ち主だって、精神操作してしまえば関係ないだろ、とかな。でも、精神操作能力には、結構、制約が多い。魔法使い系は……我流とか、修行を途中でドロップアウトしたとか、マトモな流派じゃなかった場合は別として、修行の過程で副次的に精神操作能力が効きにくくなる。他の特異能力でも、メインの能力のオマケに精神操作能力への耐性が付いてくる場合が多い。精神操作で何かを自白させようとすれば……下手にその精神操作が効いたが最後、自白するのは本当の事じゃなくて精神操作をした奴が望んだ事だ。精神操作をされる相手の思い込みや望みに沿った精神操作は成功率が高いが、そうじゃない精神操作は成功率がガタ落ちになる。つまり、どんな奴か良く判ってない相手に精神操作をやったら、ヘボがやったのに大成功する場合も有れば、達人がやっても巧くいかない場合も有る。精神操作能力は、少しも便利な能力じゃない……むしろ、実運用上の制約が無茶苦茶多い能力だ』
「実際、俺、見た事有んだよ……」
沙也加ちゃんのお兄ちゃんが、そう言い出した。
「へっ?」
「霊力量も腕の段違いの2人の魔法使い系が、ほぼ同時に同じ相手達に『精神操作』をやった……。けど、格下の方がやった精神操作が、対象の思い込みに沿ったモノだったんで、効き目は、ほぼ互角。同時にかけられた2つの精神操作が互いの効き目を相殺しちまった」
「な……なるほど……」
『で、さっきの論文だが、カルト宗教は……特に、ピラミッド型の上意下達式の組織のカルト宗教は……どこかで拡大が止まる。どの程度で止まるかは、条件によって大きく違うが、上限だけは確実に存在する。そして、拡大が止まって以降は、洗脳なんかの組織拡大の時に使われてた技術やノウハウは、組織の内部統制の為に使われるようになる』
「じゃ……えっと……?」
『多分だが、もう既に「大阪」の勢力拡大は終っている。「大阪」が抱えてる精神操作能力者達は勢力拡大よりも「大阪」内部の締め付けの方に使うのが「正解」の段階に来てる。実際、大阪の軍や警察には政治将校を兼ねた精神操作能力者が配属されてるようだ。でも、十年前の富士の噴火を機に、今の「大阪」を作った連中からすりゃ、万能だと思ってた精神操作能力者が、ここんとこ何故か急に役に立たなくなったように見えるだろう』
「つまり、アレは……『大阪』内で立場が悪くなりつつ有る精神操作能力者達が……自分達は、まだ、役に立つぞ、って証明する為に作ったモノなんですか?」
そう訊いたのは、沙也加ちゃんの彼氏。
『まぁ……その可能性は高いな』
『そう言や、昔、ある学者がカルト宗教に関するシミュレーションをやった論文を見た事が有る』
「へっ?」
『今の「大阪」はカルト宗教に支配されてるようなモノだ。精神操作能力者を量産してるけど……原理はともかく、出来る事は、古典的な洗脳の強化版に過ぎない』
「ま……まぁ、言われてみれば……」
『精神操作能力について良く知らない奴らは、精神操作能力を万能の力だと思い込む事が多い。どんなトンデモない特異能力の持ち主だって、精神操作してしまえば関係ないだろ、とかな。でも、精神操作能力には、結構、制約が多い。魔法使い系は……我流とか、修行を途中でドロップアウトしたとか、マトモな流派じゃなかった場合は別として、修行の過程で副次的に精神操作能力が効きにくくなる。他の特異能力でも、メインの能力のオマケに精神操作能力への耐性が付いてくる場合が多い。精神操作で何かを自白させようとすれば……下手にその精神操作が効いたが最後、自白するのは本当の事じゃなくて精神操作をした奴が望んだ事だ。精神操作をされる相手の思い込みや望みに沿った精神操作は成功率が高いが、そうじゃない精神操作は成功率がガタ落ちになる。つまり、どんな奴か良く判ってない相手に精神操作をやったら、ヘボがやったのに大成功する場合も有れば、達人がやっても巧くいかない場合も有る。精神操作能力は、少しも便利な能力じゃない……むしろ、実運用上の制約が無茶苦茶多い能力だ』
「実際、俺、見た事有んだよ……」
沙也加ちゃんのお兄ちゃんが、そう言い出した。
「へっ?」
「霊力量も腕の段違いの2人の魔法使い系が、ほぼ同時に同じ相手達に『精神操作』をやった……。けど、格下の方がやった精神操作が、対象の思い込みに沿ったモノだったんで、効き目は、ほぼ互角。同時にかけられた2つの精神操作が互いの効き目を相殺しちまった」
「な……なるほど……」
『で、さっきの論文だが、カルト宗教は……特に、ピラミッド型の上意下達式の組織のカルト宗教は……どこかで拡大が止まる。どの程度で止まるかは、条件によって大きく違うが、上限だけは確実に存在する。そして、拡大が止まって以降は、洗脳なんかの組織拡大の時に使われてた技術やノウハウは、組織の内部統制の為に使われるようになる』
「じゃ……えっと……?」
『多分だが、もう既に「大阪」の勢力拡大は終っている。「大阪」が抱えてる精神操作能力者達は勢力拡大よりも「大阪」内部の締め付けの方に使うのが「正解」の段階に来てる。実際、大阪の軍や警察には政治将校を兼ねた精神操作能力者が配属されてるようだ。でも、十年前の富士の噴火を機に、今の「大阪」を作った連中からすりゃ、万能だと思ってた精神操作能力者が、ここんとこ何故か急に役に立たなくなったように見えるだろう』
「つまり、アレは……『大阪』内で立場が悪くなりつつ有る精神操作能力者達が……自分達は、まだ、役に立つぞ、って証明する為に作ったモノなんですか?」
そう訊いたのは、沙也加ちゃんの彼氏。
『まぁ……その可能性は高いな』
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
「悪の組織」からの足抜けを手伝いますッ♥/第一部「安易なる選択−The Villain's Journey−」
蓮實長治
SF
現実と似ているが「御当地ヒーロー」「正義の味方」によって治安が維持されている世界。
その「正義の味方」が始めた新しい「商売」である「悪の組織からの足抜けと社会復帰の支援」を利用して、落ち目になった自分の組織の「お宝」を他の組織に売り渡し、輝かしい第二の人生を始めようとしたある悪の組織の幹部(ただし、幹部の中でも下の方)。
しかし、のっけから事態は予想外の方向に……。
同じ作者の別の作品と世界設定を共有しています。
「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。
(pixiv,GALLERIAは完結後の掲載になります)
こちらに本作を漫画台本に書き直したものを応募しています。
https://note.com/info/n/n2e4aab325cb5
https://note.com/gazi_kun/n/nde64695e2171
Storm Breakers:第一部「Better Days」
蓮實長治
SF
「いつか、私が『ヒーロー』として1人前になった時、私は滅びに向かう故郷を救い愛する女性を護る為、『ここ』から居なくなるだろう。だが……その日まで、お前の背中は、私が護る」
二〇〇一年に「特異能力者」の存在が明らかになってから、約四十年が過ぎた平行世界。
世界の治安と平和は「正義の味方」達により護られるようになり、そして、その「正義の味方」達も第二世代が主力になり、更に第三世代も生まれつつ有った。
そして、福岡県を中心に活動する「正義の味方」チーム「Storm Breakers」のメンバーに育てられた2人の少女はコンビを組む事になるが……その1人「シルバー・ローニン」には、ある秘密が有った。
その新米ヒーロー達の前に……彼女の「師匠」達の更に親世代が倒した筈の古き時代の亡霊が立ちはだかる。
同じ作者の別の作品と世界設定を共有しています。
「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。(pixivとGALLERIAは掲載が後になります)
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる