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第六章:Rebel Without a Clue

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「ちょっと、今からお前の体を調べるぞ」
 千明師匠は、あたしの腹に手を当てて、そう言った。
「調べる?」
「まず危険は無いが……『魔法使い』系にとっては、何も言わずにやったら喧嘩売ってると見做されかねない真似だからな」
 その時、千明師匠のてのひらから「気」が送り込まれ……。
 微かな「気」だ……でも……。
「力を抜いてろ……」
 例えるなら……医者の打診のような感じ。
 千明師匠が送る「気」に、あたしの「気」が反応している。まるで、音が響くように……。
「結構、疲れが溜ってる。2~3日、休め」
「は……はぁ……」
「休んでる間も、ウチに来ていい。飯ぐらいご馳走する」
 続いてクソ女。
「わかりました……」
「ごめん、瀾ちゃん、朝御飯作る気分じゃないから、今日はお願い」
 更にクソ女の妹。
「じゃ、あたしも手伝う」
「そうか……」
 クソ女は冷蔵庫に入ってた土鍋を取り出すと、ガスレンジの上に置く。
「タイマーをあらかじめ一二分三〇秒にセット。火を付けて、沸騰したら弱火にしてタイマーをスタート。時間切れになったら火を止めろ」
「は~い、あ、この前の炒り卵って、どうやって作ったの?」
「今日はニラが無いから、これでいいか……」
 冷蔵庫の中から取り出されたのは、青ネギと卵と麺つゆが3種類。
 飛魚アゴ出汁のと焼き干しエビ出汁のと鮎の出汁のヤツだ。
 クソ女は、分量を説明しながら、麺つゆと水をボウルに入れ……。
「それ……何?」
 クソ女は何かのフレークのようなモノが入った大きな袋を持って来ていた。
「干し湯葉の割れたヤツだ。これを入れるのが秘訣」
 そう言いながら……それを薄めた麺つゆに混ぜる。
「あ……それ……」
 関東難民と一口に言っても……静岡や長野や山梨も一〇年前の富士の噴火で壊滅している。
 「魔法少女」だった頃のチームメイトにも……山梨の出身者が居た。
「どうした?」
身延みのぶって山梨の地名じゃ?」
 そう言って、あたしは、袋に書かれてた文字を指差す。
「でっかいお寺の門前町だろ? そこの名物だったけど……今じゃ、九州に避難した人が作ってる。どうも、散々、水質や気候が似てる場所を探したらしい」
 富士山が噴火する前の事は良く覚えていない。
 その後の「本当の関東」にもいい思い出はない……。
 でも……あたしの故郷……「本当の関東」……は復興する事なく、海の上に有る東京の名を騙る人工島のように、日本のあっちこっちに偽物の東京や偽物の横浜や偽物の千葉や偽物の静岡や偽物の長野や偽物の山梨が生まれていくんだろうか?
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