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第二章:Summer Nights
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『警備担当で手の空いてる方、すぐに連絡お願いします』
その時、携帯電話の施設内連絡用のアプリに通知。
詳細を見ると……条件は……「精神操作耐性が必要」が5段階で3、「相手を負傷させずに無力化」が5段階で4、「相手の想定戦力」が5段階評価で1。
「行きます?」
「まあな……」
「見学させてもらっていいですか? まだ、イマイチ、誰かを生け捕りにする技が苦手なんで……」
「そうだな……」
そう言って、巨体にスキンヘッドの理事(なお、あくまで児童養護施設の理事だ。念の為)高木日焔さんは施設内連絡用のアプリを操作して本部に対応に当る事を通知。
「他に誰が対応に当るんですか?」
「笹原君が既に向かっている」
施設内連絡用のアプリを見る限り、どうやら施設の正門から堂々と不当侵入を試みた自称「この施設に監禁されている子供の親」が1名。
外見は、太り気味だが、日本人としては平均的な身長の四〇代と思われる男性。
ボク達が施設の正門に向かうと、施設内移動用の半自動操縦のATVがやって来た。この施設の運営資金の半分ぐらいは北九州の門司に本社が有る企業「高木製作所」の創業者が作った慈善団体から出ていて、このバギーも高木製作所の新製品開発や先端技術の開発を担当する子会社である高木研究所が作った試作品だ。本部の指示&施設内連絡用のアプリとの連携で、ボクたちを追っ掛けてきたのだ。
ボク達は、それに乗り込み……あれ?
「待ちなさい。まさか……手荒な真似を……」
正門のすぐ外では……施設内連絡用のアプリでの通知内容そのものの外見のおじさんが倒れて……あれ?
比較的、身形はフツ~だ。でも……何かビミョ~な違和感。
「それが……その……何か訳が判んない事を言ってて……」
「どうして倒れたんだ?」
「逃げ出そうとしたら……急に……。多分、運動不足なのに全力で走ったせいじゃないかと……」
「やれやれ……しっかりしなさい。あ、そうだ、本部に飲み水と救急箱と……あとは氷と担架を要請してくれ」
「戸板じゃなくていいんですか?」
「この男性は道場破りに来た訳じゃないだろ」
「了解」
「ここでは、それはよせ」
「あ……」
あれ?
倒れてるおじさんに近付いて違和感の理由に気付く。
着てるのは……普通の服……この位の齢の平均的な収入の男性が着てても何の違和感も無いモノだけど……首元に汚れ。夏物らしい明る目の色の服なので、余計に目立……うわ……っ。
半端に延びてる髭は明らかにお洒落で延ばしてんじゃなくて、何日も剃ってないだけ。
髪の妙なてかりは……絶対に整髪料の使い過ぎなんかじゃない。
耳の後ろや首筋には垢。……そして……あぁ、他人より鼻が効くのも考えモノだ……このおじさん……多分、ここ何日かシャワーすら浴びてない。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「大丈夫ですか?」
「見ろッ‼」
そう言っておじさんは……日焔さんに携帯電話の画面を向ける。
「え……えっと……」
「さあ……俺に従え。まずは、そのクソメスをブチのめせッ‼」
そう言って、謎のおじさんは笹原さんを指差す。
……。
…………。
……………………。
何ともビミョ~な雰囲気の中、時間だけが過ぎていく。
「な……何故だ……⁉ 何故、あらゆる無効化能力を更に無効化する筈の無敵の催眠アプリが……お前らには効かないんだ?」
「あ……あの……仮に、そんな便利なアプリが実在するとしてでもですね……起動してませんよ」
「そ……そんな馬鹿な……。たしかに……俺は……起動した筈なのに……」
「電源入ってないのに、どうやってアプリを起動するんですか?」
「へっ?」
「ところで、この人が腰にぶら下げてるモノは何だ?」
「良く判りませんが……何かビミョ~な程度の霊力が有るんで、調べるまで迂闊に触んない方がいいと思います」
「ねえ、それが呪いの品なら……呪いを解くなんてのは出来ないの?」
「解呪した時に初めて実害が発生するってタチの悪い術の使い手も居る。ちゃんと調べてからじゃないと……迂闊な真似は出来ん」
「ん?」
その時、日焔さんと笹原さんの携帯電話から同時に通知音。
「どうなってる?」
日焔さん携帯電話の画面ではMeaveが起動していた。
メッセージの送り主は……日焔さんの姪の瀾さん。
メッセージに添付されている画像には……安っぽいプラスチック製で右利きの人が左手でデザインしたかのようなダサい外見の……おもちゃの「魔法少女のステッキ」が写っていた。
そう……目の前で倒れてる謎のおじさんが腰に下げてるのとそっくりな。
「お~い、ハゲ~。頼まれたモノ、持って来たよ~」
背後から脳天気な声が響いた。
その時、携帯電話の施設内連絡用のアプリに通知。
詳細を見ると……条件は……「精神操作耐性が必要」が5段階で3、「相手を負傷させずに無力化」が5段階で4、「相手の想定戦力」が5段階評価で1。
「行きます?」
「まあな……」
「見学させてもらっていいですか? まだ、イマイチ、誰かを生け捕りにする技が苦手なんで……」
「そうだな……」
そう言って、巨体にスキンヘッドの理事(なお、あくまで児童養護施設の理事だ。念の為)高木日焔さんは施設内連絡用のアプリを操作して本部に対応に当る事を通知。
「他に誰が対応に当るんですか?」
「笹原君が既に向かっている」
施設内連絡用のアプリを見る限り、どうやら施設の正門から堂々と不当侵入を試みた自称「この施設に監禁されている子供の親」が1名。
外見は、太り気味だが、日本人としては平均的な身長の四〇代と思われる男性。
ボク達が施設の正門に向かうと、施設内移動用の半自動操縦のATVがやって来た。この施設の運営資金の半分ぐらいは北九州の門司に本社が有る企業「高木製作所」の創業者が作った慈善団体から出ていて、このバギーも高木製作所の新製品開発や先端技術の開発を担当する子会社である高木研究所が作った試作品だ。本部の指示&施設内連絡用のアプリとの連携で、ボクたちを追っ掛けてきたのだ。
ボク達は、それに乗り込み……あれ?
「待ちなさい。まさか……手荒な真似を……」
正門のすぐ外では……施設内連絡用のアプリでの通知内容そのものの外見のおじさんが倒れて……あれ?
比較的、身形はフツ~だ。でも……何かビミョ~な違和感。
「それが……その……何か訳が判んない事を言ってて……」
「どうして倒れたんだ?」
「逃げ出そうとしたら……急に……。多分、運動不足なのに全力で走ったせいじゃないかと……」
「やれやれ……しっかりしなさい。あ、そうだ、本部に飲み水と救急箱と……あとは氷と担架を要請してくれ」
「戸板じゃなくていいんですか?」
「この男性は道場破りに来た訳じゃないだろ」
「了解」
「ここでは、それはよせ」
「あ……」
あれ?
倒れてるおじさんに近付いて違和感の理由に気付く。
着てるのは……普通の服……この位の齢の平均的な収入の男性が着てても何の違和感も無いモノだけど……首元に汚れ。夏物らしい明る目の色の服なので、余計に目立……うわ……っ。
半端に延びてる髭は明らかにお洒落で延ばしてんじゃなくて、何日も剃ってないだけ。
髪の妙なてかりは……絶対に整髪料の使い過ぎなんかじゃない。
耳の後ろや首筋には垢。……そして……あぁ、他人より鼻が効くのも考えモノだ……このおじさん……多分、ここ何日かシャワーすら浴びてない。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「大丈夫ですか?」
「見ろッ‼」
そう言っておじさんは……日焔さんに携帯電話の画面を向ける。
「え……えっと……」
「さあ……俺に従え。まずは、そのクソメスをブチのめせッ‼」
そう言って、謎のおじさんは笹原さんを指差す。
……。
…………。
……………………。
何ともビミョ~な雰囲気の中、時間だけが過ぎていく。
「な……何故だ……⁉ 何故、あらゆる無効化能力を更に無効化する筈の無敵の催眠アプリが……お前らには効かないんだ?」
「あ……あの……仮に、そんな便利なアプリが実在するとしてでもですね……起動してませんよ」
「そ……そんな馬鹿な……。たしかに……俺は……起動した筈なのに……」
「電源入ってないのに、どうやってアプリを起動するんですか?」
「へっ?」
「ところで、この人が腰にぶら下げてるモノは何だ?」
「良く判りませんが……何かビミョ~な程度の霊力が有るんで、調べるまで迂闊に触んない方がいいと思います」
「ねえ、それが呪いの品なら……呪いを解くなんてのは出来ないの?」
「解呪した時に初めて実害が発生するってタチの悪い術の使い手も居る。ちゃんと調べてからじゃないと……迂闊な真似は出来ん」
「ん?」
その時、日焔さんと笹原さんの携帯電話から同時に通知音。
「どうなってる?」
日焔さん携帯電話の画面ではMeaveが起動していた。
メッセージの送り主は……日焔さんの姪の瀾さん。
メッセージに添付されている画像には……安っぽいプラスチック製で右利きの人が左手でデザインしたかのようなダサい外見の……おもちゃの「魔法少女のステッキ」が写っていた。
そう……目の前で倒れてる謎のおじさんが腰に下げてるのとそっくりな。
「お~い、ハゲ~。頼まれたモノ、持って来たよ~」
背後から脳天気な声が響いた。
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