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諸神之黄昏 ― Ragnarok : Battle Royal ―
百瀬 キヅナ (2)
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トラックのコンテナ内を改造した部屋。
そこには、私以外に3人が居た。
眼鏡をかけた小太りだが身嗜みには気を使ってそうな感じの中年男。
おそらくは二〇前らしい……おそらくは私より若いらしい痩せ気味の……「男」と言うよりは「男の子」と良いたくなる感じの「男」。
そして、眼鏡の……これまた私より若そうな……そして、これまた「女」と言うよりは「女の子」と良いたくなる感じの「女」。
コンテナ内に設置された机には複数のモニタが接続されたPCが人数分。そして、画面には「銀座」港の様子と、ドローンの識別番号らしきものが映っている。
警備員も警察もほぼ壊滅した港に、悠々と……一台のフェリーが接岸。
そのフェリーのハッチが開き……。
大型のバンが一台とトラックが一台づつ上陸する。
続いて4m級軍用パワーローダー「国防戦機」が姿を現した。
富士の噴火の前、当時の日本政府は2つに分裂したアメリカの片方である「アメリカ連合国」への服従を決定し、日本はアメリカ連合国の事実上の属国となった。
そして、この決定を行なった日本政府を、万が一、自衛隊が「国」と「国民」の敵と見做した場合の抑止力として「もう1つの自衛隊」である「特務憲兵隊」が結成された。
「国防戦機」は、この「特務憲兵隊」を象徴する兵器だ。
「国防」を名乗りながら、「国」や「国民」を滅ぼしてでも「時の政府」と「宗主国」を守ると云う狂った目的の為に作られた鋼の巨人。
だが……違和感を感じる。
私の雇い主である「英霊顕彰会」も、富士の噴火後に「裏」に流れた「国防戦機」を何台も購入し、下衆な見世物や「九段」地区内の警備に使っている。
しかし……「英霊顕彰会」が所有している機体と、どこか微妙に違う……。どことは指摘出来ないが、形状の細かい部分が違うのは確かだ。
私を一時的に雇った「本土」の「御当地ヒーロー」達は、この「国防戦機」を「特号機」と呼んでいた。
特殊な機体らしいが、どう特殊かは……説明に困っているようだ。
そして……手にしている武器も……。
そうだ……この「人工の浮島」で使うには……あまりにも……。
もし、「流れ弾」が地面を撃ち抜けば、「島」の底に穴が空きかねない……。
「潜入を開始して下さい」
その時、眼鏡の中年男が指示を出した。
私は、私の支配下に有るネズミや野良猫を操る。
何匹もの動物が……そして地上歩行型のドローン……接岸したフェリーの中に入る。
あるモノは監視カメラの死角を縫って……。また、あるモノは通風口から……。
「有害物質爆弾の本体を発見」
やがて、眼鏡の女の子がそう告げた。
画面に写っているのは、何かの装置の上に設置されたドラム缶。それが全部で8つ。
その、たった「ドラム缶8つ分」の放射性廃棄物が日本海に流れ出したが最後、洒落や冗談では済まない国際問題が発生する。
おそらくは、下に有るのが爆弾で、上のドラム缶の中身が……富士の噴火の時に事故を起した原発から持ち出された放射性廃棄物なのだろう。
「有害物質爆弾の本体そのものの大きさは……案外小さいな……。でも……」
「変ですね……何で……トラックやクレーンがこんなに?」
映像は、私が操っているネズミと、他の呪術者が操っている日本猿に取り付けられた小型カメラから送られてきたものだった。
「この『島』から大きなモノを、いくつも運び出そうとしてたんじゃ……?」
「何を?」
そこには、私以外に3人が居た。
眼鏡をかけた小太りだが身嗜みには気を使ってそうな感じの中年男。
おそらくは二〇前らしい……おそらくは私より若いらしい痩せ気味の……「男」と言うよりは「男の子」と良いたくなる感じの「男」。
そして、眼鏡の……これまた私より若そうな……そして、これまた「女」と言うよりは「女の子」と良いたくなる感じの「女」。
コンテナ内に設置された机には複数のモニタが接続されたPCが人数分。そして、画面には「銀座」港の様子と、ドローンの識別番号らしきものが映っている。
警備員も警察もほぼ壊滅した港に、悠々と……一台のフェリーが接岸。
そのフェリーのハッチが開き……。
大型のバンが一台とトラックが一台づつ上陸する。
続いて4m級軍用パワーローダー「国防戦機」が姿を現した。
富士の噴火の前、当時の日本政府は2つに分裂したアメリカの片方である「アメリカ連合国」への服従を決定し、日本はアメリカ連合国の事実上の属国となった。
そして、この決定を行なった日本政府を、万が一、自衛隊が「国」と「国民」の敵と見做した場合の抑止力として「もう1つの自衛隊」である「特務憲兵隊」が結成された。
「国防戦機」は、この「特務憲兵隊」を象徴する兵器だ。
「国防」を名乗りながら、「国」や「国民」を滅ぼしてでも「時の政府」と「宗主国」を守ると云う狂った目的の為に作られた鋼の巨人。
だが……違和感を感じる。
私の雇い主である「英霊顕彰会」も、富士の噴火後に「裏」に流れた「国防戦機」を何台も購入し、下衆な見世物や「九段」地区内の警備に使っている。
しかし……「英霊顕彰会」が所有している機体と、どこか微妙に違う……。どことは指摘出来ないが、形状の細かい部分が違うのは確かだ。
私を一時的に雇った「本土」の「御当地ヒーロー」達は、この「国防戦機」を「特号機」と呼んでいた。
特殊な機体らしいが、どう特殊かは……説明に困っているようだ。
そして……手にしている武器も……。
そうだ……この「人工の浮島」で使うには……あまりにも……。
もし、「流れ弾」が地面を撃ち抜けば、「島」の底に穴が空きかねない……。
「潜入を開始して下さい」
その時、眼鏡の中年男が指示を出した。
私は、私の支配下に有るネズミや野良猫を操る。
何匹もの動物が……そして地上歩行型のドローン……接岸したフェリーの中に入る。
あるモノは監視カメラの死角を縫って……。また、あるモノは通風口から……。
「有害物質爆弾の本体を発見」
やがて、眼鏡の女の子がそう告げた。
画面に写っているのは、何かの装置の上に設置されたドラム缶。それが全部で8つ。
その、たった「ドラム缶8つ分」の放射性廃棄物が日本海に流れ出したが最後、洒落や冗談では済まない国際問題が発生する。
おそらくは、下に有るのが爆弾で、上のドラム缶の中身が……富士の噴火の時に事故を起した原発から持ち出された放射性廃棄物なのだろう。
「有害物質爆弾の本体そのものの大きさは……案外小さいな……。でも……」
「変ですね……何で……トラックやクレーンがこんなに?」
映像は、私が操っているネズミと、他の呪術者が操っている日本猿に取り付けられた小型カメラから送られてきたものだった。
「この『島』から大きなモノを、いくつも運び出そうとしてたんじゃ……?」
「何を?」
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