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「赤き稲妻」第1章:平和の時代(ユートピア)
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十三人……いや一人減って十二人の「鋼の愛国者」の内五人が、ここ香港に集められていた。
そして、香港に到着した後、大して休む間も無く、私達は世界政府軍香港基地の会議室の1つに呼ばれた。
「全員そろったようだな」
「悪しき者達は我らが手で癒す‼」
作戦の指揮官のである「鋼の愛国者」13=1、コードネーム「金色のジークフリート」ことヴァルター・ランダ大佐と、副指揮官であるヘルマン・グルリット中佐を除く三名は、右手をまっすぐに上げて「鋼の愛国者」の「誓言」を唱えると着席した。
「前から思ってたんですが、これ、やる必要が有るんですかね?」
グルリット中佐は、左手で頬杖を突いて、右手でペンをクルクル回しながら、ニヤニヤとしか形容出来ない、しかし何故か愛嬌のある笑みを浮かべながら、混ぜっ返すように言った。
ランダ大佐は、じろりとグルリット中佐を睨む。
「始めてくれ」
グルリット中佐は「鋼の愛国者」の現役メンバーの中でも最古参で、史上最も長く生き延びた「鋼の愛国者」だが、命令違反や独断専行が多く、出世街道からは外れている。
一方で、ランダ大佐はグルリット中佐より2~3歳年下だが、堅実に仕事をこなすタイプで、部下(つまり私達だが)にも規則遵守を徹底させている。
上の方は真逆の二人を組合せる事で巧く中和したつもりだろうが、残念ながら、強酸と強いアルカリを不用意に混ぜれば、往々にして危険な反応が起きる。
やがてグルリット中佐は電脳を操作し、会議室の大型スクリーンに、元「7=7」の殺害死体を写し出した。
「とまぁ、死体の状況は、こんな感じだが……ゲロ袋を用意した方が良かったかな?」
「やめたまえ、中佐」
ランダ大佐の気難しそうな顔は、いつもの五割増しで不機嫌そうな表情になり、いつもおどけた感じの禿頭の巨漢であるグルリット中佐は「またやっちまった」とでも言いたげな「照れ笑い」六〇%に「ニヤニヤ笑い」四〇%の笑みを浮べた。
「しかし……何故、死体にここまでの……何と言うべきか……」
エリーザベト・ヴェールマン中尉が嫌悪感に満ちた表情と口調で、そう言った。
「まさに、死体損壊と言うより、凌辱とでも呼ぶべきだな。生前の傷は顔のものだけだ。その傷が元で『7=7』ことアドラー大尉は死亡か戦闘不能。その後、鎧を剥ぎ取り、核を奪い、死亡後に死体の手足と腹と胸に軟弾頭弾を何発も撃ち込んでいる。敵は異常者なのか、それとも何か別の理由が有るのか、今の所は不明だ」
ランダ大佐の声は妙に冷静だった。
「普通の殺人であれば、そんな真似をするのは殺しに慣れてないヤツでしょうけどね。相手が死んだが確信が持てないか、慣れない殺しでパニックに陥って、そんな真似をやらかした」
「だが、アドラー大尉を倒した程の腕前の者が、殺しに慣れていないなど、考えにくいな」
「ところで、アドラーの奴は、顔にいきなり一撃を食らって、おっ死んだんですか?」
「君にしては良い質問だ、グルリット中佐。後方支援部隊との通信が妨害されていた為、詳細は不明だ。頭部以外を負傷していたとしても、組織はグチャグチャになっており、解剖しても大した事は判らない。同行していた護送車の要員も全員死亡している」
「警察や民間の街頭監視カメラに映像は無かったんですか?」
「すでに香港警察に映像の確保を依頼済みだ。ミリセント少尉とヘルムート大尉は香港警察の本庁へ行って映像を受け取って来てくれ。グルリット中佐とヴェールマン中尉は、検屍官とは別の視点から死体の状況を確認してくれ。『鎧』の損傷状況は調査中だが、明日までには報告がまとまるまるようだ」
「で、上海で俺達が接触したジャミラ・ニュートンの言う通り、何者かが『鋼の愛国者』を一箇所に集めて一網打尽にするつもりだったら、どうするんですか?何者かの手にわざと乗りますか?それとも……」
「その判断をするにも情報が足りない。まずは情報を集めよう」
「ジャミラ以外に、最近、香港近辺で動きの有ったテロリストの情報は有りますか?」
「未確認情報だが、ここ2~3週間で、アイルランド解放軍のウィリアム・マクギャバンと黒桜隊の河野康夫、義烈団の朴 裕天の目撃情報が有ったらしい」
「どう言う事ですか?我々から見りゃ、どいつもテロリストとは言え、確執が有る連中が、仲良く一箇所に集合ですか?」
「そっちの方は私が調べよう。では、解散」
「了解しやした」
「悪しき者達は我らが手で癒す‼」
「悪しき者達は我らが手で癒す‼」
「悪しき者達は我らが手で癒す‼」
「……だから、これ、やる必要有るの?」
そして、香港に到着した後、大して休む間も無く、私達は世界政府軍香港基地の会議室の1つに呼ばれた。
「全員そろったようだな」
「悪しき者達は我らが手で癒す‼」
作戦の指揮官のである「鋼の愛国者」13=1、コードネーム「金色のジークフリート」ことヴァルター・ランダ大佐と、副指揮官であるヘルマン・グルリット中佐を除く三名は、右手をまっすぐに上げて「鋼の愛国者」の「誓言」を唱えると着席した。
「前から思ってたんですが、これ、やる必要が有るんですかね?」
グルリット中佐は、左手で頬杖を突いて、右手でペンをクルクル回しながら、ニヤニヤとしか形容出来ない、しかし何故か愛嬌のある笑みを浮かべながら、混ぜっ返すように言った。
ランダ大佐は、じろりとグルリット中佐を睨む。
「始めてくれ」
グルリット中佐は「鋼の愛国者」の現役メンバーの中でも最古参で、史上最も長く生き延びた「鋼の愛国者」だが、命令違反や独断専行が多く、出世街道からは外れている。
一方で、ランダ大佐はグルリット中佐より2~3歳年下だが、堅実に仕事をこなすタイプで、部下(つまり私達だが)にも規則遵守を徹底させている。
上の方は真逆の二人を組合せる事で巧く中和したつもりだろうが、残念ながら、強酸と強いアルカリを不用意に混ぜれば、往々にして危険な反応が起きる。
やがてグルリット中佐は電脳を操作し、会議室の大型スクリーンに、元「7=7」の殺害死体を写し出した。
「とまぁ、死体の状況は、こんな感じだが……ゲロ袋を用意した方が良かったかな?」
「やめたまえ、中佐」
ランダ大佐の気難しそうな顔は、いつもの五割増しで不機嫌そうな表情になり、いつもおどけた感じの禿頭の巨漢であるグルリット中佐は「またやっちまった」とでも言いたげな「照れ笑い」六〇%に「ニヤニヤ笑い」四〇%の笑みを浮べた。
「しかし……何故、死体にここまでの……何と言うべきか……」
エリーザベト・ヴェールマン中尉が嫌悪感に満ちた表情と口調で、そう言った。
「まさに、死体損壊と言うより、凌辱とでも呼ぶべきだな。生前の傷は顔のものだけだ。その傷が元で『7=7』ことアドラー大尉は死亡か戦闘不能。その後、鎧を剥ぎ取り、核を奪い、死亡後に死体の手足と腹と胸に軟弾頭弾を何発も撃ち込んでいる。敵は異常者なのか、それとも何か別の理由が有るのか、今の所は不明だ」
ランダ大佐の声は妙に冷静だった。
「普通の殺人であれば、そんな真似をするのは殺しに慣れてないヤツでしょうけどね。相手が死んだが確信が持てないか、慣れない殺しでパニックに陥って、そんな真似をやらかした」
「だが、アドラー大尉を倒した程の腕前の者が、殺しに慣れていないなど、考えにくいな」
「ところで、アドラーの奴は、顔にいきなり一撃を食らって、おっ死んだんですか?」
「君にしては良い質問だ、グルリット中佐。後方支援部隊との通信が妨害されていた為、詳細は不明だ。頭部以外を負傷していたとしても、組織はグチャグチャになっており、解剖しても大した事は判らない。同行していた護送車の要員も全員死亡している」
「警察や民間の街頭監視カメラに映像は無かったんですか?」
「すでに香港警察に映像の確保を依頼済みだ。ミリセント少尉とヘルムート大尉は香港警察の本庁へ行って映像を受け取って来てくれ。グルリット中佐とヴェールマン中尉は、検屍官とは別の視点から死体の状況を確認してくれ。『鎧』の損傷状況は調査中だが、明日までには報告がまとまるまるようだ」
「で、上海で俺達が接触したジャミラ・ニュートンの言う通り、何者かが『鋼の愛国者』を一箇所に集めて一網打尽にするつもりだったら、どうするんですか?何者かの手にわざと乗りますか?それとも……」
「その判断をするにも情報が足りない。まずは情報を集めよう」
「ジャミラ以外に、最近、香港近辺で動きの有ったテロリストの情報は有りますか?」
「未確認情報だが、ここ2~3週間で、アイルランド解放軍のウィリアム・マクギャバンと黒桜隊の河野康夫、義烈団の朴 裕天の目撃情報が有ったらしい」
「どう言う事ですか?我々から見りゃ、どいつもテロリストとは言え、確執が有る連中が、仲良く一箇所に集合ですか?」
「そっちの方は私が調べよう。では、解散」
「了解しやした」
「悪しき者達は我らが手で癒す‼」
「悪しき者達は我らが手で癒す‼」
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「……だから、これ、やる必要有るの?」
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