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Lesson1
しおりを挟む「ちょ、ちょ!なに脱いでるんですか?!」
「何って、するんだよ~」
「し、しませんよ?」
「…なんで」
「そういうのは、愛し愛されてするものです」
「愛してなくても勃つし。愛されなくても入る」
なんだ、そのドヤ顔。
言っても通じないので、思いきり蹴る。
グニャリ。
意外と、柔らかいのね。
「三嶋さん、股間蹴るの、反則…。痛すぎて、死ぬ。不能になったら責任取ってよ」
「…ふん!」
器用に外されたシャツのボタンを、素早く留めて乱れた髪も整え、座り直す。
「…いつも、こうなんですか?」
「こうって?」
痛みがひいたのか、彼は胡坐をかいて座る。
「こんな、適当にホテルに連れ込んで、一晩限りで寝ちゃうのかってことです」
「…そうだね」
「なんか100人斬りって噂、聞きましたけど」
「さすがに100人までいってないよ~。あ、いってるかな?ゴメン、いってるかも」
ワナワナ震える私。
「好きじゃない女性と、しちゃダメです!」
「だって、『好き』がワカンナイんだもん。じゃあさ、三嶋さんが教えてよ、俺に」
そう言って、彼はそれはもう、妖しく微笑む。
「へ?」
「へって。色気ないなあ、三嶋さん」
「27年も生きてきて、誰も好きになったこと、無いってことですか?」
「う~ん。そうだね」
前に先輩の玲奈さんが、この人のこと『アンドロイドみたい』って言ってたっけ。なんか、正にって感じで。
「は、初恋もナシ??」
「…無いんだろうねえ」
ヒ、ヒトゴトっぽいのは何故なのかな?
手持ち無沙汰なのか、私のシャツのボタンをまた外そうとするので、素早くピシャリと叩く。
「じゃあ、ファーストキスの相手とかは?」
「兄貴の彼女~」
「へ?」
「っていうか俺の兄貴、ほんと女癖悪くて。それに怒った彼女が、当てつけで中一の俺に筆おろししたんだよね。あ、分かる?『筆おろし』ってさあ、セック…」
その口を軽く手の甲で叩く。
「残念ながら知っているので、説明不要」
「そっか。博識だね、三嶋さん」
な、殴りたい。しかし、相手は一応、目上の男性。堪えて、私はギュッと拳を握る。
「もともと、ウチの父親からして女にだらしないんだ。バツ3だけど、結婚してても平気で家に浮気相手を連れ込むような男でさ~。兄貴もそれに、感化されちゃって」
アナタも感化されてるようですけど。
「気持ちイイって噂に聞いたけど、そんなでもなかったんだよなあ。初セック…」
再び、その口を手の甲で叩く。
「その単語、なんだか恥ずかしいので、控えて」
「はは。いいよ。でさぁ。俺がそういうオーラ出してるのか、次から次へと、女が寄ってきて。勝手に裸になって、『さあどうぞ』と脚を開くんだもん。だんだん、俺も抵抗なくなってさあ」
「確かに、モテそうな顔してますもんね」
「ありがと~。でも、こんなモテ方でいいのかなあ。向こうは勝手に『付き合ってる』と思ってたみたいなんだけど、俺的には、全然だよ~」
27才にもなって『好き』を知らないって。小学生以下だよ、アンタ。
「あのね、桐生さん。『好き』なんて、人に教えてもらうモノじゃないんです。自然とそうなるモノなんだから」
なんだか宇宙人と話しているような気さえしてきた。
「え~っ。じゃあ、三嶋さんは?」
「何がです」
「誰かを好きになったこと、あるの?」
「そりゃもう、ありますとも」
「じゃあ、俺をそうさせてよ。三嶋さんを好きにさせてみて~」
「………」
こうして、私こと三島有香と桐生さんとの
長い闘いが始まったのである。
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