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8.マミは戸惑う

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 ゴクリと喉を鳴らし、私は松原さんに向かって頷いた。仰向け状態のままだったので、あまりスムーズに顎を動かすことが出来なかったが、それでも意思は伝わったみたいだ。

「よし、分かった」
「ご指導のほど、宜しくお願い致します」

 肩の力を抜けと言わんばかりに、松原さんは優雅に微笑む。その顔をマジマジと見つめながら私は、意図的に脱力した。しかし、瞼だけは力を入れて開けておく。まずはキスから始まり、徐々に胸へ。揉まれたり舐められたリと暫く奉仕は続き、最終的に下半身の方へと松原さんは移動して行く。

「あ、あのっ、まさかそこを舐めたりしませんよね?」
「んー、どうかなあ」

 そう言いながらショーツを難なく脱がせた松原さんは、膝立ちをして私に言う。

「ここ、自分で開いて見せてよ」
「はっ、はあ?!」

 この人が指差している『ここ』とは、俗に言う秘部のことだ。

「えっ、もしかして、恥ずかしい?」
「む、むむむ、無理です。そんなことをしたら死んでしまいますっ」

 両手で隠しながらイヤイヤと激しく首を左右に振る私を、松原さんは嘲笑った。

「うーん、いい感じだなあ」
「なっ、何がですか?!」

 先程までは貴公子然としていたのに、今ではまるで悪魔みたいだ。

「男ってさあ、嫌がるのを無理矢理するのが大好きなワケよ。あんまり慣れてるのは萎えるし、処女でもさ、なんか虐めてるみたいで心苦しいの。だからね、経験が少なくてウブな反応を見せるキミみたいな女が丁度いいんだなあ。さあ、早く広げよっか」
「うっ、お、鬼ですかッ」

 両脚を閉じたいのに、松原さんに邪魔されてそれが叶わない。とうとう私の手は掴まれ、脚の付け根辺りに移動させられたかと思うと再び鬼は言った。

「やらないとお仕置きだぞ」
「へっ?あっ、やだ、ダメ」

 いきなりの衝撃。ただ指を入れられただけなのに、思わず身を捩ってしまう。

「あー、指が抜けちゃったじゃないか。大人しく言うことを聞けないなんて、悪い子だなあ」
「いえ、あの、余りにも久々過ぎてビックリしちゃったんです、異物感が凄くて」

 何だか感情が見えない。松原さんは怖いくらいに淡々と段階を踏んでいく。

「まあ、追々ってことで。今日は初回だからさ、取り敢えずウォーミングアップしていこっか」
「きゃあ、やっぱり舐めるんじゃないですかッ」

「いちいち煩いなあ。指でイカせてあげることも出来るけど、舌の方が手っ取り早いんだよね。というかさ、まずは俺に慣れてよ。恥じらいを美徳だと思っているんだろうけど、俺から言わせて貰えばクソ面倒臭いだけだから。一緒に気持ちいいことしましょうって言ってんのに、一方的に心を閉ざすなよ」
「あのう…、でも、さっき無理矢理するのが好きだと仰ってませんでしたか」

「無理矢理とは言っても、ガチで抵抗されるんじゃなくて『イヤよイヤよも好きのうち』的な焦らしテクとして展開して欲しいワケ」
「そ、そんなの意味が分かりませんっ」

 枕を私のお尻の下に敷きながら、松原さんはワザとらしく溜め息を吐いた。

「まあ、いっか。今日は俺の実力をお披露目するということで。あ、でも全部は見せられないぞ。サワリだけな、サワリ」
「えと、ハイ、了解です」

 なんなの、このゲスっぷり。

 これ、本当にほんとおおおにッ、松原さんなんだろうか?日頃抱いているイメージと余りにも違い過ぎて、なんだかもう人間不信に陥ってしまいそう。

 
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