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騒動のあと

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「ふんっ、バカみたい!そうやっていつまでもお友だちゴッコを楽しんでいればいいわよッ!」
 
 そんな捨て台詞を残して、紗英は久志と共にこの場を去った。
 
 その後ろ姿を眺めながら男前のノッチが鼻息も荒く『おととい来な』と叫び、傍らではキョウちゃんとムーさんが大笑いしている。
 
 勝ち負けの問題では無いのだろうけど、取り敢えず一段落ついたという感じがする。紗英にはあんなことを言ったけど、下村教授への報告は明日でも問題無いだろう。私だけではなく祖父も同行するというので、あまり出しゃばらずに上手く立ち回らなければ…などと考えていると、あんなに感動的な言葉をくれたアッちゃんが今度は私を責め始めた。
 
「奈月ィ…。言いたくないけど、アンタ本当に男を見る目が無いよねえ。久志、この話し合いで最初から最後まで空気だったじゃない。ここで奈月に謝っておけば少しは心証が良くなって、自分への処遇も軽くなるかもしれないのにね。
 
 そういう機転すら利かないって、どうよ?っていうか、紗英みたいな女に騙される時点でさ、もうダメ男の烙印が押されたようなものなんだけど。いやあ、アレは無いわ。ほんとバカだわ」
 
 その後も久志は皆んなからバカバカ言われ続け、賑やかな晩餐は夜遅くまで続いた…。
 
 
 

 数か月後。
 
 紗英と久志からの謝罪文が構内に配布されると、真相を知りたがるヤジ馬たちが2人にだけでは無く、私にも群がった。
 
 その結果、紗英と久志は自主退学を決めたらしく大学には来なくなり、そうなると矛先は私に一点集中してしまう。中には、文盲なのか都合の良い部分だけを切り取って理解し、私が性に対して奔放だと思い込み、ストレートに『俺にもヤラせてくれよ』などと下品な誘いをしてくる輩まで登場する始末。
 
 大学ではアッちゃんたちがなるべく一緒にいてくれるから良いのだが、稀に自宅近くで待ち伏せするような人までいて、1人で出歩くことも難しくなってしまう。
 
「えっ、風邪ひいた?大丈夫なの、アッちゃん」
「ゴホッ、平気。熱も37度まで下がったし、今日一日寝てれば治ると思うんだ。でも絵画展の方は無理かなあ。ごめんね、最終日なのに…」
 
 それはデパートで開催されている、私の大好きなイラストレーターの絵画展で1か月前から楽しみにしていたのだが。アッちゃんと2人で行く予定でチケットも彼女に預けてあったから、こうなると断念するしか無い。
 
「後でお見舞いに行くね。何か欲しい物ある?」
「ううん、気持ちだけ受け取っておく~」
 
 気にしないでと言ったのに、どうやら私の声色からガッカリしていることを敏感に察知したのだろう。アッちゃんが突然こんな提案をし出す。
 
「そうだ!お兄ちゃんが今日は1日ヒマだとか言ってたし、私の代わりにお兄ちゃんと行って来ればいいじゃない!ね、そうしてそうして!」
 
 
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