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この差はいったい何なのか
しおりを挟む「…わ、分かりますっ。実は私も航平さんと付き合う前に幼馴染からフラれてて。あ、この洋服、どうも有難うございましたッ。お陰で最高のイブが過ごせたんですよ。ぐふふ」
う、ううむ。これは人選ミスだったかな。
そのまま1人で夜を過ごすのが嫌だった私は、緋奈ちゃんを呼び出したのだが。なんかもう、全身から溢れ出るピンクオーラに酔いそうだ。
「スミレさん、何事もタイミングですよ。停滞しているのであれば、どんなことでもいい、ほんの少し動いてみましょうよ。バタフライエフェクトって知ってますか?動けばどんどん事態が変わっていくんです。そしてきっと望むゴールに辿り着きますよ」
こやつ、小娘のクセに上手いコトを言いやがる。
そうだな、認めよう。
確かに停滞していた。
外堀を埋めれば、いつか貴臣も諦めると思い。嫌がる彼をウチの親に挨拶させ、無理矢理ブライダルフェアにも連れて行った。しかし、頑なだった彼の態度は更に硬化し、そのまま事態はビクともせずに1年が経過。
それ以降、彼の前で“結婚”の二文字はNGワードとなってしまい。ではデキ婚を目指してみようかとも思ったが、その行為自体がとんとご無沙汰で。エロい雰囲気を作ろうとボディラインが強調された服を着ていたら、周囲から露出狂だと噂される始末。
仕方なくイブに賭けてみたところ、フレンチレストランのウエイティングバーで酒を飲み過ぎた貴臣は、その後ホテルで熟睡。私は枕を濡らしながら朝を迎えた。
「きゃはは。もうスミレさんったら愉快~」
「ふんっ。幸せなイブを過ごした緋奈ちゃんに私の気持ちなんか分からないわよっ」
彼に大事にされまくっている緋奈ちゃんと、
彼から邪険にされまくっている私。
この差はいったい何なのか。
そんな壮大なテーマで悩んでいると、テーブルの上に乗せてあったスマホが震えた。…もちろん、緋奈ちゃんのものがである。
「あ、航平さんだ。やだもう、ウチのマンションに向かってるって。スミレさんと食事するって伝えてあったのに」
「はいはい。もう帰っていいよ~」
申し訳なさそうに頭を下げ、緋奈ちゃんは足早に去っていく。この虚しさはいったい、何なのだろうか。
ああ、そうだ。
いつだって私は自分で選んできた。
今、こうなっているのも、
1つ1つそう望んだからだ。
…なのに無性に切ない。
なりたい自分になったはずなのに、どうしてこんなに寂しいのだろうか。間違っていたと言うのならば、いったいどこからだ?
ブルルル…。
今度は私のスマホが震えた。
ふ、藤井め。
抜群のタイミングで電話してきやがる。
「もしもし」
「あ、スミレ?今から会わないか」
こんな夜に、2人だけだったら躊躇したのだが、訊けばクライアントである大手飲食企業の新店お披露目パーティーだとかで。それならばと快諾し、すぐにタクシーで向かったところ、
そこで事件が起きたのである。
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