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私の気持ち
しおりを挟む笑いが止まらない。
だって、こんなの無理だよ。
心の奥の方から湧き出す、
とてつもない喜び。
あああああああッ、好きいいいッ!!
すんごくすんごく、好きいいいッ!!
だけど悲しいことに心とカラダは直結していないらしく、口から出たのは自分でもガッカリするほどショボい言葉だった。
「えと、あの、私は内藤さんの方が、好き」
「…あ、ありがと」
なんだよコレッ?!
人生において最高潮とも言える場面のはずが、むしろ清々しいほどギクシャクしてるんですけどッ。
思ったほど成果を得られなかったことにより、内藤さんは不自然なまでにモジモジし。私は私で次の言葉を懸命に模索していた。
世界で一番愛しています。
内藤さん以上に好きな人はいません。
アナタは私の未来を明るく照らす光です。
ああ、どれもこれも陳腐だ。私の気持ちは定型文なんかじゃ言い表せない。どうすればこの想いを伝えられるのだろうか?そう考えたら、勝手に体が動き出す。
「えっ?か、香奈??」
「うーっ、ほんとに好きなのにィ…」
だって、もうこの方法しか無い気がして。
「何してるんだよ、ちょっ、待てって」
「待たないッ」
ずっと私は『性』というものを敬遠していた。それに関わる全てのことを、衝動的で俗物的で安っぽいものだと決めつけ、それから離れれば離れるほど崇高な人間になれるのだと思い込み。そして、それが持つ本来の目的をキレイサッパリ忘れていたのである。
この人の赤ちゃんを産みたい。
もし自分の身体の中に新しい命を宿すのなら、死ぬほど好きなこの人の分身を宿したい。うん、これこそ究極の愛ではないか!
「あのっ、内藤さんの赤ちゃんが欲しいのでっ、嫌じゃなければ子種をくださいッ」
因みに私はいま内藤さんを床に押し倒し、馬乗りになったまま服を脱いでいる。
「は?」
間の抜けた声を発したかと思うと、内藤さんは自分の両手で顔を覆い隠しながら肩を震わせて笑い始めた。
「内藤さん、やっぱり嫌ですか?」
「うう…、そう来たかあ…。いったい何だよ、お前は本当に…」
「ごめんなさい」
「ほら、すぐそうやって適当に謝る!」
「えと…、そうです、悪いと思ってません」
「あのさ、あの堅物の香奈のお父さんをやっと懐柔して交際を認めて貰ったばかりなんだぞ?それを結婚…いや、それどころか結婚の申込もしていない状態で、妊娠なんかしたら大騒ぎだ。もしかして、絶縁される可能性だってあるぞ?」
「はい、仰る通りでございます」
「でもな、人には勢いというものがあって」
おやおや??
「いきおい」
「既に結婚する意志は固めているし、香奈との赤ちゃんなんて絶対に可愛いよな!」
あれあれ??
「私もそう思う!」
「もう結婚しちまおうか?婚約中なら、子作りしても許される気がしないか?」
ニコッと内藤さんは笑って自ら服を脱ぎ始める。
「いいの?」
「うん。香奈、俺と結婚してください」
「はい!喜んで」
「じゃあ、誓いの…」
キスをと言い切る前に、私は唇を合わせていた。
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